第拾弐話
義「………」
「もう…そんな悲しい顔しない!離れ離れで任務なんて今までと変わらないでしょ?」
そう
お互いに別々の任務が入ったのだ
義「…だが心配だ。白夜に何かあったらと」
「大丈夫だよ。オレは鬼だから人間の時より強いし、そう簡単には死なないから。それに、もしオレが暴走しても、カラスがすぐに報告する手筈になってるし」
義「…そうじゃない。たとえ傷がすぐに治るとしても、痛みは感じるだろう」
「それは…まぁ」
義「俺はそんな白夜を見るのが辛い。俺が白夜のそばにいれば白夜に辛い思いはさせない」
オレはそっと義勇を抱き締めた
「…ありがとう、義勇。でもね、前にも言ったけど、オレたちは…柱だからさ。別々の場所に行くほうがたくさんの人を助けられる。分かるよね?」
義「……」
義勇がぎゅっと抱きしめ返す
義「…死ぬな。それだけ約束してほしい」
「…うん、死なないよ。オレの願いは、人間に戻って
、おじいさんになって寿命が尽きるその時まで義勇と同じ時間を共にすることだからね」
義「…そうだな、俺も同じだ」
見つめ合い、口付けを交わす
「それじゃ、行ってくるね。義勇のほうこそ気を付けて」
義「ああ」
オレと義勇はそれぞれの任務場所へと向かった
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任務を終え、炭治郎たちの様子が気になっていたオレは蝶屋敷へと足を向けた
「炭治郎ー、いるー?」
炭「あ、白夜さん!」
「元気そうだね」
炭「はい!怪我も治ってきて、この通り元気です!」
「良かった良かった。そういや善逸と伊之助は?」
炭「二人は俺より怪我が早く治って、もう任務に行ってます!」
「そうなんだ。元気なら良かったよ。あれ、この鍔…」
ベッドの横に置いてある机の上に、見覚えのある鍔があった
炭「あ、これ。実は俺、日の呼吸について知りたくて煉獄さんの屋敷に行ったんです。資料は読めませんでしたが、煉獄さんから、『戦えない代わりに、自身の志を共に連れていってほしい』と鍔を託されたんです」
「そっか。杏寿郎が…」
あいつらしいなぁ
「杏寿郎の分まで、オレたちは戦わなきゃね」
炭「はい!」
良かった
炭治郎が元気そうで
「…そういや、日の呼吸って言ってたよね」
炭「はい。え?白夜さん、何か知ってるんですか!?」
「いや、別に詳しいわけじゃないけど…昔ね、光の呼吸の型を作るために、色んな呼吸を教わりに行ってたことがあったんだ」
炭「そうなんですか!」
「うん。その時に杏寿郎の家に行って、炎の呼吸も教わったんだけど、たまたま『歴代炎柱の書』の話を聞いて」
炭「…!!その本、見せてもらったんですが、ズタズタになってて読めなかったんです!」
「そうなの?オレは実際に見せてもらったわけじゃないから分からないけど、当時炎の呼吸を教わったのが杏寿郎の父親の槇寿郎さんで。確かあの時…日の呼吸ははじまりの呼吸だって言ってたかな」
炭「はじまりの、呼吸…」
「そうそう、それと炭治郎の着けてる耳飾り。それも日の呼吸を使っていた剣士が着けていたと書いてあったって」
炭「耳飾り…」
「今皆が使っている呼吸は全て、はじまりの呼吸…つまり日の呼吸からの派生らしい。炭治郎は日の呼吸の剣士の子孫なのかな?」
炭「…いえ、おそらくそれはないと思います。うちにはちゃんと家系図がありましたし、その家系図にそんな内容は一切ありませんでした」
「…そっか。じゃあもしかしたら、炭治郎の祖先の人が日の呼吸の剣士と知り合いで、日の呼吸を教えてもらったかして、ヒノカミ神楽として伝承していったのかもしれないね」
炭「なるほど…」
「日の呼吸について聞いたのはそれぐらいで、詳しくは知らないんだ。力になれなくてごめんね」
炭「いえ!十分です!ありがとうございます、白夜さん」
「どういたしまして」
炭「こうして白夜さんとお話していると、白夜さんが鬼だなんて信じられないです。どう見ても普通の人にしか見えません…」
「そっか、それなら良かった。鬼々しいと皆を怖がらせちゃうからね」
炭治郎との話を終え、オレは再び任務へ向かう
太陽の下でも歩けるのが助かる
こうして昼間のうちに移動できるから
先生からもらったこの面も、とても役に立っている
「…記憶も戻ったし、また先生に会いたいな」
記憶のないオレに優しくしてくれた先生
ちゃんとお礼を言いたい
「…っと、考え事してたらすっかり日が暮れたな」
だが無事に目的地には着きそうだ
「しまった…最近任務続きで甘味補給するの忘れてた…」
任務が終わってもすぐに炭治郎のところに行ってたから、補給するの忘れてた
「…まぁ大丈夫か。ちゃっちゃと倒して帰れば」
そう思っていた時だった
突然空からものすごい力が降ってくる
「っ…!!!これは……っ」
鬼の気配
しかも、そこら辺にいる鬼とは全く違う
猗「…やぁ。ようやく会えた」
「…お前は、上弦の参か…」
(…なんでこんな時に。頼む…持ちこたえて)