第拾弐話
外に出ると、義勇が一歩も動かず待っていた
「義勇、遅くなってごめん。待ちくたびれたでしょ。どこかで休む?」
義「いや、平気だ。それより、話は終わったのか?」
「うん」
義「そうか。なら、次は白夜の屋敷に行かないか?」
「え?オレの、屋敷?」
義「白夜の帰りを待ってるやつがいる」
それを聞いて思い浮かんだのは、オレの唯一の家族
「…琥珀」
義「あぁ。妹には白夜のことを伝えてある。鬼にされている可能性が高いと」
「…そう」
義「それでも白夜の妹は、白夜が帰ってくるのを待っている」
え…?
鬼になってしまったオレのことを、それでも待ってるっていうの…?
「…全く、兄妹ってのは不思議だなぁ。何年も会ってなかったのに突然現れたかと思えばオレのことを心配してくれてるなんて」
義「…それが、兄妹というものだ」
…そっか
義勇にはお姉さん、蔦子さんがいたもんね
「…教えてくれて、ありがとう義勇。一緒に着いてきてくれる?」
義「あぁ」
当然のように頷いてくれる義勇に、オレはとてつもなく嬉しくなり、自然に義勇の手を握った
義「…!白夜…?」
「…義勇と、手を繋ぎたくなって。嫌だったら離すけど」
義「嫌なわけがない。俺はむしろずっとこうしていたいくらいだ」
「…うん、オレも」
二人はそのまま手を繋ぎながら、屋敷へと向かった
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そして、自分の屋敷の前に到着
「……なんか、ものすごく緊張する」
義「大丈夫だ。お前の妹は、きっと受け入れてくれるはずだ」
「…たとえどんな結果だったとしても、オレは琥珀を責めはしないよ。琥珀は何も悪くないから」
義「…白夜」
ふう…と深呼吸をして、オレは扉を開けた
その音が聞こえたのか、1人の走ってくる足音が響く
琥珀「お兄ちゃん…っ!!」
「…っ!琥珀…!」
琥珀は白夜を見るなり、飛び付いた
琥珀「良かった…!生きてて良かったぁ…っ!!」
琥珀の目に大粒の涙が溢れていた
「…心配かけてごめんね、琥珀」
琥珀「お兄ちゃんが無事なら、それでいいのっ…お兄ちゃんがいなくなったら、私ひとりぼっちになっちゃうから…」
「…そっか。琥珀、とりあえず中で話そう。義勇もいるし」
琥珀「あ…水柱様…!お兄ちゃんを連れ帰ってくれて、ありがとうございます…っ」
義「礼などいらない。当然のことだ」
義勇…
そして中に入ったオレたち
「琥珀。実はオレ、鬼になったんだ」
そう言って面を外す
琥珀「…うん。水柱様から聞いてたから、覚悟はしてたよ。だからそんなに驚いてない」
「そっか。オレはこれから鬼殺隊の任務をこなしながら、人間に戻る方法を探そうと思う。だから、今以上にここには戻ってこられない」
琥珀「……そっか」
「ごめんね、琥珀」
琥珀「ううん!いいの。お兄ちゃんが生きててくれれば」
「…うん、それはオレも同じだよ」
琥珀「えへへ」
「琥珀。光の呼吸についてだけど、修行はつけてあげられない。その代わり、どんな型があるのかを教えるから、自分なりに模索して作り上げてほしい」
琥珀「…分かったよ、お兄ちゃん。私なりの呼吸でいいんだよね」
「うん。琥珀だけの光の呼吸を使えるようになればいい」
こうしてオレは、光の呼吸の型を教えた
簡単に説明しただけだが、琥珀ならきっとできるはずだ
「以上が光の呼吸だ。普通の呼吸よりかなり体力がいる。今以上に体力をつけて、少しずつできるようになればいいから」
琥珀「うん。私頑張る!だから、お兄ちゃんも人間に戻れる方法を探してね」
「うん、ありがとう」
こうしてオレは琥珀に挨拶をし、屋敷を後にした
義「…もう少し一緒にいなくて良かったのか?」
「うん。ずっといたら、離れがたくなるし」
義「そうか」
「…義勇、ありがとね。一緒に来てくれて。正直少し怖かったから。どんな反応されるのか」
義「俺は何もしてない。気にするな」
「義勇らしいなぁ」
(わっ!か、寛三郎!?またオレの頭に…)
寛三郎(任務ジャ義勇……)
(…いや、だからオレは義勇じゃないです)
寛三郎(…義勇ノ匂イガシタ…)
義(……。寛三郎、俺はここだ。その頭は白夜だ)