第拾壱話
産「みんな、白夜と色々話したいこともあるだろうけど、それは柱合会議が終わってからにしてね。実を言うと、白夜はもっと前に見つかっていたんだ」
実「なぜ知らせてもらえなかったのですかっ」
産「まだ白夜は記憶を失っていたからね。他の柱たちが来ると混乱してしまうかもしれなかったんだ」
小芭「ではその間、どこに」
「…ずっと、義勇と一緒にいたんだ。記憶のないオレが訪ねた場所が義勇の屋敷で」
それを聞いた瞬間、皆が義勇を見る
若干二名ほど睨み付けている者もいるが
実「…なんでてめぇなんだよ冨岡ァ」
小芭「そうだ、なぜ冨岡のところになど。俺の屋敷に来れば手厚く守ってやったというのに」
義「俺を選んだのは白夜だ。俺じゃない」
し「とか言って、ほんとは『白夜は俺のところへ来るに決まっている』とか思ってるのでは?」
義「悪いか」
し「いえ!すごい自信だなぁと思っただけです」
あれ、どうしよ…
オレのせいで義勇が責められてる……!
「み、みんな、義勇を責めないで。責めるなら、オレだけにして…」
行冥「誰も白夜を責めたりなどしない」
無「あの無惨から生きて戻ってきたことだけでもすごい」
蜜「そ、そうですよ!白夜さんはすごいです!」
杏「うむ!その通りだ!命まで助けてもらったしな」
あれ…?
義勇を責めないでって話をしてたのに、なぜか今はオレが慰められてるような…
産「皆落ち着いて。義勇と白夜が元から仲が良かったことは皆も知っているよね?なら白夜が義勇のところに行くのも同然のこと。だから義勇を袋叩きにするのは止めようね」
笑顔という名の圧力がお館様から伝わってくる
柱たちにも伝わったのか、一瞬で静かになった
産「私は白夜に、これまで通り鬼殺隊の大黒柱として働いてもらいたいと思っている。これに異議がある者はいるかな?」
きっとみんな、反対するに決まってる
そう、覚悟していたのに
柱たちは誰も、異議を唱えなかった
「…みんな、どうして……」
実「白夜がそこに存在しているだけで、鬼殺隊の士気が上がんだよォ…」
「…っ!」
し「大黒柱という存在はそう簡単には現れません。だからこそ白夜さんが辞めてしまえば、やる気を失ってしまう隊士が出てきます。白夜さんという強い存在がいてくれるからこそ、下の者たちは安心して戦えるのですよ」
「…鬼、でも?」
天「鬼っつっても、人を喰ってねぇんだろ?なら別にいいんじゃねぇか?」
杏「うむ!白夜、俺はお前に救われた。あの時の白夜は立派な鬼殺隊士であった!」
蜜「白夜さんが鬼殺隊辞めるなんて寂しい…!白夜さんとはもっともっと一緒にお話したいです!」
小芭「見たところ正気を保てているようだしな。大黒柱なら当然だろうが」
無「白夜さんのことは忘れたことない…」
行冥「白夜はこれまで鬼殺隊にたくさん尽くして、たくさんの人を助けてきた。みな、それを知っているからこそ、こうして白夜を信頼している」
「…っ、みんな……」
オレ、まだ鬼殺隊にいていいの…?
実「…冨岡、てめぇはどうなんだよォ」
確かに、義勇はほとんど何も意見を言っていない
皆が再び義勇に注目した
義「…わざわざ言うまでもない。白夜は大黒柱にふさわしい『人間』だ。白夜が鬼殺隊を辞めなければならない理由などどこにもない」
「…義勇……」
…ありがとう
産「…全員異議なし、だね。そういうわけだから白夜、これまで通り大黒柱としてよろしく頼むよ」
「…はいっ」
天「けど、白夜は鬼だ。日中に出歩けないなら、これまで通りの仕事をこなすのは難しくないか?移動はほぼ日中だしよ」
産「白夜」
「はい」
天元の疑問に、お館様がオレの名前を呼ぶ
オレは少しずつ、日が差している皆のいるところへ歩く
し「ちょっと白夜さん!?何してるんですかっ…!日に当たったら消えてしまいますよ!?」
杏「そうだぞ白夜!こちらに来るな!」
義勇以外の柱たちが慌てる中、オレの足は止まらない
「平気だよ。オレは、太陽を克服してるから」
日が差している皆の前まで行き、オレはそう言った
無(ほんとだ。白夜さん消えない)
し(一体どういうことなのでしょう…)
天(太陽を克服するとは、さすが白夜だぜ)
実(こいつは殺しても死ななそうだな)