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第拾壱話


お風呂から上がり、寝床につく

オレは鬼だが、寝ることも可能だ
他の鬼がどうなのかは分からないが



もちろん布団はぴったりくっついている



「…苦労かけてごめんね、義勇。辛かった…よね。記憶のないオレと一緒にいるの」

義「苦労だと思ったことは一度もない。俺はどんな白夜でも一緒にいられるだけで嬉しい」

「義勇…」


相変わらず優しいな



「…オレ、お館様のところに行こうと思う。ちゃんと話をしたいし。柱の皆にも。さすがに柱は辞めないといけなくなるよね」

義「何故だ。白夜は柱でいるべき存在だ。むしろ柱を辞めるべきなのは俺のほうだ」

「だって、オレは鬼だよ?鬼が柱って、下のものに示しがつかないでしょ?それと、義勇は立派な柱だよ。いつもそうやって悲観してるけど、水柱は義勇じゃなきゃ務まらないとオレは思う」


義「……」


…なんか、暗い雰囲気になってしまった

明るい話題…話題…




「あ、そうだ。義勇、この前行ったオレ行き付けの甘味屋にまた一緒に来てくれるかな?」

義「…構わないが。もう甘味が無くなったのか?」

「…いや、まだあるけど。ちょっとね」



あの時は甘味屋のおばちゃんにちゃんと言えなかったからね





すると突然、義勇がオレの頬を撫でた


「…どうしたの?」


義「…いや、白夜の記憶が戻ったというのに、白夜はまだ鬼なのかと…この瞳に記されているものが憎くて堪らない」


オレの目には『上弦 零』と書かれている
それが紛れもない鬼の印であることが、義勇にとっては憎くて堪らないのである



「…義勇、オレ、人間に戻る方法を探そうと思う。このままじゃいつか義勇が歳を取って寿命が尽きてしまっても、オレは歳も変わらない、一人生き続けなくちゃいけない。それは…オレが辛いんだよ…」


義「…!」



「オレはね…義勇と一緒に歳を取って、一緒の時間を過ごして、一緒に死にたい…。それならお互い寂しくないから」


義「…白夜…、そうだな…俺も同じ気持ちだ」


「…義勇、絶対に、先に死なないで。オレを、一人にしないで…」



溢れる涙を、義勇はそっと拭ってくれた




義「…白夜、覚えているか。前に俺が言ったことを」


「…?」



義「白夜はあの時、『もしオレが鬼になってしまったら…』と言った。そして俺は『白夜を人間に戻す方法を探す』と答えた」



「…っ!」



そうだ
確かにあの時、義勇はそう言った



義「…そういうことだ。俺にできることならなんでもする」


「…ありがとう、義勇」





自然と手を繋ぎ、オレたちは眠りについた






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「遅くなっちゃった…おばちゃんまだいるかな?」


義勇がお館様に手紙を書いたり、二人で色んな話に花を咲かせたり、とりあえずいつの間にか時間が経ってしまい、甘味屋に行くのが日が暮れてからになってしまった



「ほら義勇、もっと走って!瞬間移動、得意でしょ?」

義「…いや、あれは瞬間移動ではない。消えたように見えるだけであってだな…」

「はいはい、分かったから早く!お店閉まっちゃうよ」


なんでこういう時に限って義勇は動きがゆっくりなの!?






「……義勇」

義「…あぁ」



お店に近づくにつれ、嫌な気配が漂ってくる




「急ぐよ」

義「承知した」



仕事モードになれば、義勇はかなりの速さを出すことができる


先ほどの速さの比ではないほど、足を早める





そして、お店が見えてきた時だ


『きゃあー!!!!』


おばちゃんの悲鳴が聞こえた



「…光の呼吸 壱ノ型 一刀光線」




ものすごい速さの光線が鬼の頸を斬った

ちなみに一刀光線は、雷の呼吸の壱ノ型を参考にして考えた型である



『…あ、あなたは……白夜、さん…?』


「おばちゃん大丈夫!?…怪我してるの!?」


おばちゃんの身体に切り傷があり、そこから血が流れていた


義「…出血がひどいな。このままでは助からないかもしれない」

「問題ないよ。おばちゃん、すぐに治してあげるからね」



そしてオレは、構える



「光の呼吸 陸ノ型 優光の包容」



淡く優しい光がおばちゃんに降り注ぐ



「おばちゃん、これでもう大丈夫だよ」


『…ありがとね、白夜さん。あなたは命の恩人だよ』

「いつも美味しいお菓子を食べさせてもらってるからね。当然だよ」

『白夜さん。前に白夜さんが、鬼狩りの仕事をしてるって聞いた時、私は冗談かと思ってたんだよ。でも、こうして助けてもらっちまったら、信じるしかないね。冗談だと思ってた自分が恥ずかしいよ。白夜さんは命懸けの仕事をしてるってのに』


「…ううん、いいんだよ。普通は信じられないような話だからね」


『そうだ!良かったらうちの店の甘味、持ってっておくれ!』

「え!?いや、あの…今日は違う用事で…」

『白夜さんは命の恩人だよ!?ホントならこんなもんじゃ足りないくらいなのに』

「あ、ありがとう…」



手にいっぱいの甘味
ありがとね、おばちゃん



「おばちゃん、この前はちゃんと言えなかったんだけど」

『なんだい?』


「…おばちゃんが言ってた通り、この人がオレの大好きな人なんだ。名前は冨岡義勇っていうの」


おばちゃんが義勇を見た


『やっぱりそうかい。冨岡さん、白夜さんのこと、よろしく頼むね。白夜さん、小さい頃から苦労してるみたいだから、今度こそ幸せにしてあげておくれよ』


「お、おばちゃんっ…!」



恥ずかしい…っ!



義「言われずとも、そうするつもりだ」



『おやおや、なら安心だねぇ!白夜さん、今日は本当にありがとう。またいつでも来ておくれ。助けてもらったお礼にいっぱいご馳走させてもらうからね!』


「うん、また来るね!」




オレは義勇と手を繋ぎ、屋敷へと戻る






(おばちゃんが生きてて良かった…)
義(そうだな。むしろあの時間に行って正解だった)
(そうだね)
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