第壱話
そして少年は目を覚ます
そばには口に竹をくわえられ、眠っている妹
妹が生きていたことに、少年は涙を流した
義「起きたか」
突然の義勇の声に驚いた少年は、とっさに妹を抱き抱える
義「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人を訪ねろ。冨岡義勇に言われて来たと言え。今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹を太陽の下に連れ出すなよ」
それだけ言って、義勇は一瞬にして去っていった
少年は妹を連れて自分の家へと戻った
そこでは、知らない青年が自分の家族を埋葬していた
服装は、冨岡義勇の来ていた隊服と同じ
炭(…なんて、綺麗な人なんだろう。そして、ものすごく強い人の匂いがする)
「あ、そこの少年。手伝って。人手が多いに越したことはないから」
炭「あ…あの、どうして…」
「…可哀想だろ、このままは」
炭「…!ありがとう、ございます」
「君の家族なんでしょ?ほら早く」
炭「は、はい!」
オレと少年で、殺された母親と子供たちを埋めた
炭「あの…本当にありがとうございました」
「どういたしまして。ところで君たち、名前は?」
炭「俺は竈門炭治郎です。こっちは妹の禰豆子」
「そうか。炭治郎に、鬼の禰豆子だな」
炭「…っ!」
「そう身構えるな。オレは冨岡義勇と同じ鬼殺隊だけど、禰豆子は殺さない」
炭「…もしかして、見ていたんですか?かすかに、あなたの匂いがしたような気がして」
…匂いでオレがいたと分かった?
「…へぇ、すごい嗅覚だな。その通りだよ。オレは白夜。よろしく」
炭「よろしくお願いします、白夜さん」
「炭治郎はこれから鱗滝さんのところへ行くんだろ?」
炭「どうしてそれを…」
「義勇と話したんだよ。炭治郎が気を失ってる間にね」
炭「な、なるほど…!あ、あの…不躾ですみません!白夜さんは、その…男の人…ですよね?」
「…あぁ、あはは、そうだよ。オレは男。よく分かったね。みんなオレのこと女だと勘違いするのに」
炭「匂いで…!もし鼻が効かなかったら、俺も白夜さんのこと、女の人だと思っていたかと」
「そっか、匂いかぁ。なるほどねー」
匂いでそこまで分かるのか
なら、感情もバレそうだ
「とりあえず山を降りるか。そこからは先に鱗滝さんのところへ行かせてもらうよ。炭治郎たちは自分のペースでおいで」
炭「分かりました」
そしてオレは竈門兄妹とともに山を降りる
「早いとこ、禰豆子を日が差さない場所に隠さないとね。それと、日中も出歩けるように禰豆子を運ぶかごみたいなものがあれば…」
炭「それならなんとか探してみます!」
「そっか。まぁ炭治郎って手先器用そうだし、大丈夫だよね」
炭「頑張ります…!」
「ふふ。あ、麓まで来たみたいだ。それじゃあオレは先に行ってるから。またあとでね」
炭「は、はい!」
すると、白夜は一瞬でその場から消えた
炭「え…?早すぎない…?」
あまりの早さに炭治郎は呆気にとられていたらしい
炭(俺が歩く早さが、白夜さんにとってはかなり遅かったんだな…)