第玖話
義(…煉獄が言っていた通り、人間を喰っている気配もない。やはり白夜は白夜なんだな)
家に入れてもらって、オレと青年は正座で向き合っている
というか、めちゃくちゃ見つめられてる…
義「…白夜、顔を見せてほしい」
「…!」
忘れてた
ずっと面してたら失礼だし、外そう
義「…!お前のその目…」
「あぁ…これ。無惨が勝手にオレを上弦の零にしてさ」
義「…そうか」
「あ、そうだ。実は手紙を君に渡してくれって言われてて…」
オレは手紙を彼に渡す
義「…先生?白夜、お前ここに来る前、先生のところにいたのか」
「え、先生って、鱗滝さんのこと?」
義「そうだ」
「うん。数日お世話になってた」
色々聞きたいのは山々だが、義勇はとりあえず手紙を読むことにした
『義勇。白夜のことについて、ワシが知りえたことをお前に話す。白夜がなぜワシのところに来たのか。
どうやら記憶自体が戻ったわけではなく、なんとなく懐かしい場所を感覚的に探したようだ。
ワシのことも覚えていなかった。
だが白夜の中にはまだ人間の理性が残っているということ。希望はまだあるとワシは思う。
本当なら、白夜がワシのところに来た時にお前に知らせなくてはならないのだが、白夜にも時間が必要だと判断し、お前には伝えなかった。
白夜が自分からお前のところに行くまで待つことにした。
ここからは、白夜のことについてだ。
白夜は他の鬼とは全く違う。
知っているとは思うが、白夜は人を喰わない鬼だ。
人を喰うことに嫌悪している。
次に、白夜は太陽を克服している。
原因は恐らく白夜が光の呼吸の剣士であり、修行の際、太陽の光を浴び続けたことで抗体ができたのではないかと考えられる。
最後に白夜の飢餓状態についてだが、普通の鬼は飢餓状態になると人間を喰うが、白夜は甘味が食べたくなるらしい。
白夜にたくさん甘味を持たせたが、すぐに無くなるだろう。
義勇、お前なら白夜の好みも知っているだろうから、今度からはお前が用意してやれ。
長くなったが、義勇。白夜はまだ鬼殺隊としてやっていけるとワシは思う。
どうするかは義勇、お前次第だ。
ワシからの頼みはひとつ。
どうか、白夜を守ってやってほしい。
できるのはお前だけだ。
白夜を頼んだ、義勇。
鱗滝 左近次』
義「………」
「…えと、」
義「…お前のことについては理解した」
「お、おう…」
義「白夜、お前は俺が守る」
「…!」
なんだろ…
前にも同じようなことを言われたような気がする
「…ふふ」
義「…白夜?」
「ああ、ごめん。なんかさ、前にも言われたことがあるような気がして」
義「…!」
「そうだ。オレからもいいかな」
ずっと聞きたかったんだけど
「名前を教えてほしい」
義「…そうか。お前とは長い付き合いだから、忘れていた。俺の名は、冨岡義勇だ」
「冨岡…義勇か。えと、義勇?でいいのかな」
義「好きに呼ぶといい」
「ありがとう」
義「…白夜、他に行くところがないのであれば、ここにいるといい」
「いいのか…?」
義「むしろそうして欲しい。それと、白夜が俺と共にいることをお館様には報告を入れたい」
「…お館様って、鬼殺隊の一番偉い人?」
義「あぁ。報告したからといって、お前を捕らえに来たりはしない。あの方は白夜を案じておられる、とても優しい方だ。白夜が嫌がるようなことは決してしない。だから、俺を信じてくれ」
「………」
不思議だな
さっき会ったばかりなのに、こんなにも心を許せるなんて
「分かった、報告していいよ。オレは義勇を信じる」
義「…白夜」
こうして義勇は報告書をまとめ、本部へと送った
「あのさ。オレと義勇って、どんな関係だったんだ?」
義「……同門だ」
「同門?あ、そういや鱗滝さんのこと、先生って言ってたもんな。そっか、そういうことかぁ」
義「…それだけではないが」
「え?」
義「なんでもない。白夜、先生からもらった甘味はどのくらい残ってる?」
「もうないけど」
義「………」
無表情で黙られるとどうしていいか分からん
義「…面を着けろ。出かける」
「え?」
仕度を始める義勇
義「行くぞ」
そう言ってオレは手を引っ張られた
オレの手を掴んだまま、外に出ようとして立ち止まる義勇
「…?どうかしたのか?」
義「…いや、本当に大丈夫なのかと」
え?
何が?
義「…消えたり、しないかと。白夜と会った時は雲っていたし…」
「…もしかして太陽の日のこと?大丈夫だ。日中何度も外に出てたけど、この通り消えてない」
義「…なら、いいんだが」
義勇は不安げな顔をしながらも、ゆっくり外に出る
「ほら、消えてないだろ?」
義「…良かった」
「………」
それにしても、いくら同門だからと言って、これほど心配してくれるものなのだろうか
義勇は恐らく何かをオレに隠している
オレと義勇は、同門以外にも何かあるような…
なんていうのかな
義勇がオレに向ける視線が、愛おしいものを見るような、そんな感じなんだよな
義「白夜」
「ん?」
義「…念のため、お前が消えてしまわないように、このまま手を繋いでいてもいいか」
「え…あ、うん。いいけど」
ほら、こういうところも
オレのことをとても大切に扱ってくれている
「…義勇」
義「なんだ」
「オレは鬼だ。なのに義勇はどうしてそんな優しくしてくれるんだ?」
義「…お前が鬼かどうかなど関係ない。お前が白夜だからだ」
「…!」
また心臓がばくばくしてる
なんだろ、この気持ちは
顔が熱い…
オレ今すごい変な顔してる気がする
「面着けてて良かった…」
義(…どうかしたか)
(いや、なんでもない…)