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第玖話


結局あのあと、休める場所もなく、オレは住所の場所へ向かっていた


「ん。鱗滝さんのくれた甘味、めちゃうまだ…」


生菓子は長くもたないから、腐らないうちに食べないとな



「…!」


まだ遠くだが、鬼殺隊の服を来た者が数名歩いてくる


ヤバい…
隠れても鬼の気配でバレるかもしれない
いやでも一応隠れないと


オレはそっと身を隠す



不安をよそに、隊士たちはオレの気配に気付くこともなく通りすぎていった


「…まだ新米隊士ってところか?」


でも危なかった
柱クラスの隊士だったら確実にばれていた


「…どうせだし、ここで少し休むか」


隠れたところが、ちょうど誰もいない小屋だった



「…そういや、あの痣の少年。えと、炭治郎だったな。それと杏寿郎。猪頭の少年。どうなったかな。無事生きてるといいんだけど」


確認のしようもないから余計に気になる


「…鬼殺隊の本部に行ったら、また会えるのかな」


でも、やっぱり不安だ
殺されないにしても、ずっと閉じ込められたりするのではないか
こうやって自由に外を歩けないのではないか

そんな思いがかけめぐり、なかなか踏ん切りがつかない

そして白夜は、何度も見た、鱗滝さんからもらった住所の紙を眺める


「……どんな人なんだろ。オレの味方になってくれる人って」

想像もつかない
けど、不思議と会うのは怖いと思わない


「…早く会ってみたいな」




オレは少し休んだあと、また足を進めた





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「…この辺りのはずなんだけど」

ようやく目的地に近付いた


「あ、あのお屋敷かな」


屋敷の前まで来て、オレは足を止めた


「……不思議だ。初めて来たのに、懐かしいような感覚。なんだか、心があったかくなるような」



そうして、しばらくそのお屋敷を眺めているときだった




遠くから一人の青年が歩いてきた


その青年はオレに気付いた瞬間、驚いたように足を止めた

そして


義「…っ、白夜…?白夜、なのか…!?」



オレの名前を言った


「…あなたは」



その瞬間、青年が走り出したかと思えば


「…っ!!」



オレをぎゅっと強く抱き締めた

目に、涙をためて、



義「…っ、白夜…ずっと、ずっとお前に会いたかったっ…!」


「……!」



オレはこの瞬間、分かってしまった


鱗滝さんが言っていた人物は、この人だということを



「…あれ、おかしいな」

義「…白夜?」

「…どうしてか、オレまで涙が出てくる」


知らない青年のはずなのに

初対面で抱き締められているというのに





義「…突然、すまない。記憶が無いんだったな」

「…うん。だけど、君はオレのこと知ってるんだよな」

義「…あぁ。お前のことなら、たくさん知っている」

「え、えっと…そろそろ離してもらえると助かるんだけど…」

義「…!す、すまない。気持ちが先走った…」


な、なんだろ
よく分からないけど、めちゃくちゃドキドキした…!
心臓がばくばくしてた!!


義「…白夜?」

「な、なんでもない」

義「そうか。ずっとここで立ち話もなんだから、家に入れ」

「…お邪魔します」











(広い屋敷だな…恐らくこの青年、柱クラスの隊士だ)
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