第捌話
その頃、白夜はというと
「……甘いものが食べたくてしょうがない」
そんな欲求にかられていた
「…もしかして、オレ独自の飢餓状態…?」
普通の鬼は、飢餓状態になると人間を喰いたい欲求にかられる
そして鬼は人以外は基本喰わない
もちろん人間のような食事も取らないのだが
「…甘いものが、食べたい」
甘くないものは全く食べたいとは思わないのだが
「…しょうがない。甘味処で買うか」
懐に財布が入っていて助かった
「…うん、おいしい。この桜餅、いけるな。こっちのみたらしもなかなかだ」
つくづくオレって変わってる鬼だな…
店員「お兄さん。良かったらこれ、試作品なんだけど、食べないかい?」
甘味処の店員さんが、美味しそうな甘味を持ってきてくれた
「え?いいんですか?代金は…」
店員「そんなのいらないよ。お兄さんが、あまりにも美味しそうに食べてくれるからね。良かったらどうだい?」
「いただきます。ありがとう」
この試作品も、とても美味しかった
またこの甘味処には来よう
そして、飢餓状態も収まり、オレはなんとなく覚えのある場所へ行くことにした
「…懐かしいような、そんな感じがする」
田んぼや畑が広がる、田舎風景
歩く先に一軒
ポツンと建つ家があった
「あの家…」
なんだろ
知ってるような、気がする
その家に近づいた時だった
突然、中から人が出てきた
それも、天狗の面をした老人
鱗滝「……おまえは、白夜、なのか…」
「…どうして、オレの名前を」
オレのことを知ってる…?
鱗滝「……白夜、やはり、鬼となってしまったのか…」
やはりって、どういうことだろう
実は冨岡義勇から、白夜が無理やり鬼にされてしまった可能性が高いと連絡を受けていたのだ
「…あなたは、オレのことを知ってるんですね」
鱗滝「…あぁ。白夜、ワシはお前の育手だ」
育手…?
つまりオレは、この人に色んなことを教わったということか?
「…ごめんなさい。人間の頃の記憶を忘れていて…あなたのことを思い出せないんです」
鬼ではあるが敵意がないと分かったのか、オレに近付きそっと抱き寄せた
「…?あの…」
鱗滝「…っ、白夜……すまない…っ、何もしてやれず、すまない…」
涙を流し、オレを抱き締めるこの人は、きっと人間の頃のオレをとても大切に育ててくれたに違いない
そう感じた
その後、この人、鱗滝左近次さんの家にお邪魔することになった
鱗滝「白夜。お前は何も覚えてないと言ったな。なぜここに来れた?」
「…確かにはっきり覚えてるわけじゃないんですが、なんとなく懐かしいと感じた場所がここで…」
鱗滝「…そうか。人も喰ってはいないようだな」
「はい。オレは鬼ですが、人を喰いたいとは思わないんです。恐らくオレは普通の鬼とは全く違うのだと思います」
鱗滝「…うむ。太陽の下にいたのを見た時は本当に驚いた。まさか太陽を克服しているとは」
「…なぜか、太陽の光が嫌だとは思わなくて。オレにも分からないんです」
すると鱗滝さんは、考えるしぐさをした
鱗滝「…恐らくだが、白夜、お前は光の呼吸を使うだろう」
「はい」
鱗滝「それが関係しているのかもしれん」
「それはいったい…」
鱗滝「…光の呼吸を会得するために、光を知ることから始めると言って、ずっと太陽の光を浴び続けていたことがあってな。もしかしたら、それで太陽の光の抗体ができているのかもしれん」
…なるほど
人間の頃のオレの行い、もとい修行で、太陽の光を克服できたということか
鱗滝「…白夜」
「はい」
鱗滝「ワシは、もしお前が人を喰っていたら、弟子の責任を取って腹を切る覚悟をしていた」
「えっ…!?」
腹を、切るって…
鱗滝「だが、お前は人を喰うこともなく、こうしてここにいることがワシは嬉しいんだ。お前がワシの弟子で良かったと心から思える」
「…っ!鱗滝さん……」
人間だったオレは、この人にこんなにも愛されていたんだ
「…あなたのことを思い出せたわけではないですが、人間だったころの白夜に恥じない鬼でいようと思います」
鱗滝「…あぁ」
面で顔は見えないけど、今、きっと鱗滝さんは笑っているような気がした
鱗滝「白夜。お前は鬼殺隊のこともあまり分かっていないだろう。今からお前が鬼殺隊にとってどんな存在なのかを話す」
「は、はい」
鱗滝「鬼殺隊には柱と呼ばれる最強の剣士9名が存在している。そして柱のさらに上の階級があってな。大黒柱という」
「大黒柱…」
鱗滝「鬼殺隊の中で一番強く、そして信頼されている者だけがなることができるのだが。白夜、お前がその大黒柱だ」
え……?
「えっと…オレが、大黒柱…!?」
鱗滝「そうだ。お前は皆から尊敬される立場にある」
「…だから、皆オレのことを知ってたのか…」
鱗滝「皆お前を探している」
「………」
でも…オレには記憶がない
大黒柱と言われても、どうすることもできない
鱗滝「白夜。お前は人を喰わず、理性を保ち、こうしてワシと話をすることができている。鬼殺隊に戻っても殺されはしないはずだ。むしろ、鬼殺隊としてまた役に立つこともできるかもしれない。本部に行く気はないか?」
「……でも」
正直不安しかない
「オレは鬼だから…」
鱗滝「…一人では心細いのかもしれないな」
え?
突然鱗滝さんは紙に何かを書き出す
鱗滝「白夜。この場所へ行ってみるといい。安心しろ、ここは本部ではない」
鱗滝さんの書いてくれた紙には住所が書かれていた
「えと…ここは?」
鱗滝「…白夜のことを一番に考えている、お前の味方が住んでいる場所だ」
オレの、味方……
「…鬼になっていても、味方でいてくれる人なのでしょうか」
鱗滝「…あぁ、必ず」
(オレを大事に思ってくれる鱗滝さんが、そうまでして言うんだ。行ってみる価値はあるかもしれない)
「……甘いものが食べたくてしょうがない」
そんな欲求にかられていた
「…もしかして、オレ独自の飢餓状態…?」
普通の鬼は、飢餓状態になると人間を喰いたい欲求にかられる
そして鬼は人以外は基本喰わない
もちろん人間のような食事も取らないのだが
「…甘いものが、食べたい」
甘くないものは全く食べたいとは思わないのだが
「…しょうがない。甘味処で買うか」
懐に財布が入っていて助かった
「…うん、おいしい。この桜餅、いけるな。こっちのみたらしもなかなかだ」
つくづくオレって変わってる鬼だな…
店員「お兄さん。良かったらこれ、試作品なんだけど、食べないかい?」
甘味処の店員さんが、美味しそうな甘味を持ってきてくれた
「え?いいんですか?代金は…」
店員「そんなのいらないよ。お兄さんが、あまりにも美味しそうに食べてくれるからね。良かったらどうだい?」
「いただきます。ありがとう」
この試作品も、とても美味しかった
またこの甘味処には来よう
そして、飢餓状態も収まり、オレはなんとなく覚えのある場所へ行くことにした
「…懐かしいような、そんな感じがする」
田んぼや畑が広がる、田舎風景
歩く先に一軒
ポツンと建つ家があった
「あの家…」
なんだろ
知ってるような、気がする
その家に近づいた時だった
突然、中から人が出てきた
それも、天狗の面をした老人
鱗滝「……おまえは、白夜、なのか…」
「…どうして、オレの名前を」
オレのことを知ってる…?
鱗滝「……白夜、やはり、鬼となってしまったのか…」
やはりって、どういうことだろう
実は冨岡義勇から、白夜が無理やり鬼にされてしまった可能性が高いと連絡を受けていたのだ
「…あなたは、オレのことを知ってるんですね」
鱗滝「…あぁ。白夜、ワシはお前の育手だ」
育手…?
つまりオレは、この人に色んなことを教わったということか?
「…ごめんなさい。人間の頃の記憶を忘れていて…あなたのことを思い出せないんです」
鬼ではあるが敵意がないと分かったのか、オレに近付きそっと抱き寄せた
「…?あの…」
鱗滝「…っ、白夜……すまない…っ、何もしてやれず、すまない…」
涙を流し、オレを抱き締めるこの人は、きっと人間の頃のオレをとても大切に育ててくれたに違いない
そう感じた
その後、この人、鱗滝左近次さんの家にお邪魔することになった
鱗滝「白夜。お前は何も覚えてないと言ったな。なぜここに来れた?」
「…確かにはっきり覚えてるわけじゃないんですが、なんとなく懐かしいと感じた場所がここで…」
鱗滝「…そうか。人も喰ってはいないようだな」
「はい。オレは鬼ですが、人を喰いたいとは思わないんです。恐らくオレは普通の鬼とは全く違うのだと思います」
鱗滝「…うむ。太陽の下にいたのを見た時は本当に驚いた。まさか太陽を克服しているとは」
「…なぜか、太陽の光が嫌だとは思わなくて。オレにも分からないんです」
すると鱗滝さんは、考えるしぐさをした
鱗滝「…恐らくだが、白夜、お前は光の呼吸を使うだろう」
「はい」
鱗滝「それが関係しているのかもしれん」
「それはいったい…」
鱗滝「…光の呼吸を会得するために、光を知ることから始めると言って、ずっと太陽の光を浴び続けていたことがあってな。もしかしたら、それで太陽の光の抗体ができているのかもしれん」
…なるほど
人間の頃のオレの行い、もとい修行で、太陽の光を克服できたということか
鱗滝「…白夜」
「はい」
鱗滝「ワシは、もしお前が人を喰っていたら、弟子の責任を取って腹を切る覚悟をしていた」
「えっ…!?」
腹を、切るって…
鱗滝「だが、お前は人を喰うこともなく、こうしてここにいることがワシは嬉しいんだ。お前がワシの弟子で良かったと心から思える」
「…っ!鱗滝さん……」
人間だったオレは、この人にこんなにも愛されていたんだ
「…あなたのことを思い出せたわけではないですが、人間だったころの白夜に恥じない鬼でいようと思います」
鱗滝「…あぁ」
面で顔は見えないけど、今、きっと鱗滝さんは笑っているような気がした
鱗滝「白夜。お前は鬼殺隊のこともあまり分かっていないだろう。今からお前が鬼殺隊にとってどんな存在なのかを話す」
「は、はい」
鱗滝「鬼殺隊には柱と呼ばれる最強の剣士9名が存在している。そして柱のさらに上の階級があってな。大黒柱という」
「大黒柱…」
鱗滝「鬼殺隊の中で一番強く、そして信頼されている者だけがなることができるのだが。白夜、お前がその大黒柱だ」
え……?
「えっと…オレが、大黒柱…!?」
鱗滝「そうだ。お前は皆から尊敬される立場にある」
「…だから、皆オレのことを知ってたのか…」
鱗滝「皆お前を探している」
「………」
でも…オレには記憶がない
大黒柱と言われても、どうすることもできない
鱗滝「白夜。お前は人を喰わず、理性を保ち、こうしてワシと話をすることができている。鬼殺隊に戻っても殺されはしないはずだ。むしろ、鬼殺隊としてまた役に立つこともできるかもしれない。本部に行く気はないか?」
「……でも」
正直不安しかない
「オレは鬼だから…」
鱗滝「…一人では心細いのかもしれないな」
え?
突然鱗滝さんは紙に何かを書き出す
鱗滝「白夜。この場所へ行ってみるといい。安心しろ、ここは本部ではない」
鱗滝さんの書いてくれた紙には住所が書かれていた
「えと…ここは?」
鱗滝「…白夜のことを一番に考えている、お前の味方が住んでいる場所だ」
オレの、味方……
「…鬼になっていても、味方でいてくれる人なのでしょうか」
鱗滝「…あぁ、必ず」
(オレを大事に思ってくれる鱗滝さんが、そうまでして言うんだ。行ってみる価値はあるかもしれない)