第捌話
その後、白夜という鬼の存在が、すぐにお館様や柱たちに伝えられた
もちろん柱たちが集まるのは、治療中の煉獄のもとである
天「白夜に会ったって、まじなのか!?」
杏「…あぁ」
し「煉獄さんのお話によれば、致命傷で死ぬはずだった傷を白夜さんが塞ぎ、命を救われたと」
杏寿郎は頷く
実「それは本当に白夜だったのかよ」
杏「間違いない」
小芭「なぜそう言い切れる?」
杏「…まずその出で立ち。特徴的な銀髪。その髪は前と違って結んではいなかったが。服装も変わりなく隊服といつもの羽織を着ていた」
小芭「姿形ならいくらでも真似できる」
杏「決定的な根拠は他にある。それは、白夜が所持していた光輝く刀を持っていたこと。そして、その刀で光の呼吸を使ったということだ」
し「なるほど。確かに、光の呼吸を使えるのは、白夜さんしかいないですから」
実「…そうか。なら、白夜は鬼になり、生きているってこったな」
杏「狐の面をしていて、顔は確認できなかったが、あれは間違いなく白夜だった」
その言葉を聞いて、今まで無言だった1人が反応した
義「…!狐の、面…」
し「冨岡さん?何か心当たりがおありなのですか?」
義「…最終選別の前、先生から必ず狐の面をもらうという習慣があった。恐らくその面は、その時にもらったものだ」
無「…つまり、白夜さんで間違いないってこと?」
義「…あぁ」
蜜「白夜さん…師匠を助けてくれたってことは、ここに戻ってきてくれるかもしれないんじゃない!?」
杏寿郎は呟く
杏「…本部に来ないかと誘ったのだが、拘束されて自由に行動できなくなる、と言って断られてしまった」
天「なんだそりゃ。普通殺されるから嫌だ、だろ。やっぱり白夜は鬼になっても白夜だな」
し「でも裏を返せば、拘束などせず、自由に行動できれば、本部に来てもいいということですよね?」
しのぶの発言に、皆が固まる
行「なるほど確かにその通りだ」
蜜「そっか!しのぶちゃん頭いい!」
実「…だが、それは白夜がまだ人を喰ってなければの話だ」
杏「白夜と会った時点では、人は喰ってないようだった。鼻の利く竈門少年にも聞いたが、やはり人を喰った匂いは全くしなかったそうだ」
義「白夜は人を喰ったりしない」
実「そうかよ。ならさっさと見つけて連れ帰らねぇといけねぇよなぁ」
し「拘束しないことと、自由に行動していい。ということをお館様に許可していただけるように、話をしておきます。もし次、この中の誰かが白夜さんと接触した場合、拘束をしない。とちゃんとお話をして、連れ帰るようお願いしますね」
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義「……白夜(…早く白夜に会いたい。姿を見たい。たとえ、俺のことを忘れていたとしても)」
し「…冨岡さん。白夜さんのことを考えてたんですか?」
義「…あぁ」
し「…白夜さん、鬼になっても理性を失わず、煉獄さんのことも助けた。すごいことです」
義「…そうだな」
し「煉獄さんの話によれば、前の柔らかい話し方とは少し違っていて、男らしい話し方になっていたそうです。記憶を失うと、話し方が変わってしまうのかもしれませんね」
義「話し方が変わっても、白夜は白夜だ」
し「…はい、そうですね。私も、そう思います」
義「…早く探しださなければ。きっと1人で心細い思いをしているに違いない」
し「…冨岡さんは本当に白夜さんのことが好きなんですね」
義「…当然だ」
義勇の言葉に笑顔を浮かべるしのぶ
し「気になっていたんですが、以前から白夜さんと特別仲がいいみたいですけど、どういう関係なんです?」
義「…白夜とは同門だ」
し「それは知ってますよ。そういうことではなくですね。例えば…恋仲、とか」
例えばですよ?と念押ししたしのぶだが
義「…そういうことか。なら答えは、今胡蝶がいった通りだ」
し「…え?恋仲ってことですか!?」
義「そうだが、何か問題でもあるのか」
し「い、いえ!もしかして…とは思っていましたが、本当に恋仲だったとは…。正直驚きました。でも、そうですね。冨岡さんのことを理解できるのは、白夜さんしかいませんし、いいと思いますよ。白夜さんが冨岡さんのものだと思うと、少し悔しいですが」
義「…悔しい?」
し「気にしないでください。今のは、白夜さんのことを好いている全員を代表して言った言葉なので」
義「…そうか」
義(白夜は今どこで何をしているのだろうか…)