第漆話


カラスの報告はすぐに伝わり、お館様の命により緊急の柱合会議が開かれることになったのだった


産屋敷「皆、突然呼び出してしまって、申し訳ないね。皆集まれたようで良かった」


実「お館様、まだ白夜が来ていないようですが」

義「……」


産屋敷「…今回集まってもらったのは、白夜のことについてなんだ。言葉を濁しても仕方ないから、単刀直入に言わせてもらうね。白夜が、上弦以上の鬼に連れていかれた可能性が高い」


その言葉に、柱たちが息を飲んだ


実「それは、ほぼ確定なのでしょうか」

産屋敷「…白夜のカラスからの報告は、突然白夜が消えた。というものだったけど、その消え方は以前白夜が鬼舞辻に捕まった状況に酷似していたそうでね。皆も知っての通り、白夜は強い。弱い鬼に、白夜がそう簡単に捕まる可能性は低いと考えている」


伊「…確かに、白夜が弱い鬼に捕まるはずはない」


他の柱たちも頷く


産屋敷「そして、今から皆に問いかけたいことは一つ。白夜がもし鬼にされてしまったら」


柱『……っ!!』


産屋敷「…鬼として討つか、もしくは生け捕りにしてここに連れ帰るか。という選択だ」


義「…っ」


産屋敷「その前に、白夜から手紙を預かっている」


ご息女の1人が、その手紙を取り出す


「それでは、一部抜粋して読ませていただきます。


『もしオレが鬼になってしまったらその時はオレをどうするかは皆で決めてほしい。皆がどういう判断をしても、オレは誰も恨まない。むしろ迷惑をかけてしまって申し訳ないと思っている。鬼になってしまったら、オレ自身、どうなるか全く分からない。だから殺すも生かすも皆次第だ。本当にごめん。
それから、義勇。お前には特に辛い思いをさせてしまってごめんね。義勇と出会えたこと、過ごした時間は、とても幸せだった。ありがとう』

以上です」



義「……っ、はく、や…」


全員が義勇を見ていた



産屋敷「…というように、白夜は皆に決めてほしいとのことだから、どうするかは皆に決めてもらいたい」



その時だった


義「…みなに頼みがある!」


義勇は他の柱に向かって頭を下げた


し「冨岡さん…?」

小芭「…なんのつもりだ冨岡」



義「白夜を、どうか、白夜を殺さないでほしい…っ!頼むっ!」



いつも無表情で、何を考えているのか分からない。そんな冨岡義勇が、必死に叫び、頭を下げる姿に、全員驚きを隠せなかった


そんな沈黙を破ったのは



実「…俺たちを舐めてるのか?冨岡ァ」


義「……」


実「白夜を生け捕りにするくらい、わけねぇんだよ!」


義「…!!不死川……」


実「白夜には生きててもらわねぇと困んだよォ。あいつと話してねぇこと、まだこっちにだってあんだからな」


し「…そうですね。私にもあります。それに、白夜さんにはまだ私たち柱をまとめるという仕事が残ってますし」

天「そうだな!白夜は派手に面白いやつだからなぁ、殺しちまうにはもったいない存在だ」

杏「うむ!白夜とはまだ一緒に飯を食べながら話したいことがたくさんある!死なれては困る!!」

蜜「わ、私だって!白夜さんと美味しい甘味屋さんに行く約束、果たしてないもの!」

小芭「…白夜は、信用できる男だ」

無「白夜さんは、殺したくない」

行「白夜はみなに優しく、そして強い。殺さないで済むのなら、それが一番いいことだ」




義「…みんな……すまない、ありがとう…」




産屋敷「…良かった。皆がそう言ってくれるのを、私は待っていた。決まりだね。白夜を見つけ次第、ここに連れ帰ること。いいね」



柱『…御意!』






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天「白夜のこと、下の奴らには言わなくていいのか?遭遇する可能性もあるだろ」

実「下の奴らに言ったところで、白夜に敵うはずがねぇ。鬼になりゃ白夜は人間の時よりはるかに強くなる」

し「確かにそうですね…私たち柱が全員でかかっても白夜さんを生け捕りに出来るかどうか、正直怪しいですし」

小芭「強い鬼と認識すれば、逃げることくらいはできるだろう」

天「なるほどな。じゃあ言わなくても問題ないか」





義「…1人、言わなくてはいけない人物がいる」

し「どなたですか?冨岡さん」


義「…白夜の妹だ」



義勇の衝撃発言に、柱が驚きを隠せない


し「ちょっと待ってください。確か白夜さんの妹さんは幼いころ亡くなったとお聞きしましたよ!?」


蜜「私も白夜さんから聞いたよ!?」


義「…つい最近、生きていたことが分かった。そして、その妹は鬼殺隊に入り、今は白夜の継子だ」


し「そんなことが…でも、せっかく再会できたというのに、実の兄が鬼になったかもしれないなんて…さすがに言いにくいですね…」


義「…俺が伝える。」


し「…冨岡さん。私も、一緒に行きましょうか?」


義「いや…これは、俺が伝えるべきだと思う」


し「…そうですか、分かりました」






こうして義勇は、白夜の妹のもとへ向かった




義(…白夜の屋敷、居てくれたらいいんだが)


義勇は白夜の屋敷の扉を叩いた



琥珀「はーい!!って、あれ、水柱様!?」


屋敷から白夜の妹、琥珀が出てきた


義「…琥珀、お前に大事な話がある」

琥珀「…それは、お兄ちゃ…、光柱様がなかなか帰ってこないことと、関係ありますか…」

義「…あぁ」



何かを察した琥珀は、義勇を中へ入れた




義「…心して、聞いてほしい」

琥珀「…はい」

義「…お前の兄は、鬼になってしまう可能性が高い」


琥珀「…っ!?お、鬼って…」

義「もちろん、白夜が望んだことではない。むりやり鬼にされてしまうかもしれないということだ」

琥珀「そんな……」


義「俺は必ず、白夜を見つけ出す」


琥珀「………っ、水柱様……お兄ちゃんは、ここに、帰ってきますよね…っ?」


琥珀は目に涙をためて言った




義「……あぁ、必ず」



琥珀「…水柱様、どうか兄を、助けてください…っ!!」











義(…当然だ。俺は必ず白夜、お前を…)
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