第陸話
「えっと、任務の場所はこの辺りなんだけど」
義「…まだ夜になるには早いな」
そう
オレと義勇は二人で任務へ向かったのだが、まだ夜にならないうちに着いたのだ
「それにしても、けっこう盛んな町だね、ここ」
義「そうだな」
「とりあえず何か食べる場所を探しながら、情報収集しようか」
義「あぁ、分かった」
…義勇、なんか嬉しそう?
じっと義勇の顔を見つめていると
義「なんだ白夜。俺の顔に何か付いているか?」
「あ、いやいや、綺麗なお顔しか付いてないです」
義「…で、なんだ」
「いやぁ、義勇がさ、心なしか嬉しそうな感じがして」
義「…そうか。そうだな、実際俺は浮かれているのかもしれない」
「え?」
義「鬼殺隊に入ってから、初めて白夜と二人の任務だ」
あ、なるほど、そういうことか
「そっか、義勇はオレと二人で任務できるから、嬉しいんだね」
義「……」
あ、目をそらされた
でも頬は少し赤くなってるので、恐らく照れだね
「ふふ、そっかそっか。確かに二人っきりの任務は初めてだもんね。柱が二人で任務とか、十二鬼月が相手じゃないとほぼ組ませてもらえないし」
義「あぁ。だからお館様には感謝しなくては」
「そうだね」
こうして二人は食事処を探しながら、町の人に声をかける
「すみません。つかぬことをお聞きしますが、最近何か変わったことはありませんでしたか?たとえば、行方不明の方がいたりとか」
町人「どうしてそれを…。あんた一体…」
「あ、あぁ、突然すみません。最近この町で妙なことが起こるらしいとの噂で、調査しに来ているんです。それで詳しいお話をお聞きしたくて」
一般人に、鬼殺隊だなんだと本当のことを言っても信じる人はそういない
鬼の存在すら、信じている人があまりいないのだ
なので、こうしていつもオレは鬼殺隊のことを隠して情報収集をしている
たまに、鬼狩りをする集団がある。みたいな噂を聞いたことがある、と話す一般人もいるけど、本当にいるのかどうかと半信半疑な者がほとんどだ
町人「実は数日前から、立て続けに町の人がいなくなる事件が多発していて…。それも決まって夜の間なんです。なので夜は外出しないようにしているんですが」
「それでも、いなくなる人が絶えないと」
町人「はい…。」
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
オレは、隣にいたはずの義勇がいつの間にか離れた場所にポツンと立っていたので、そこまで足を進めた
その時
「…っ!」
…これは、鬼の気配
しかも、気配は一つだけではない
まだ昼間であるため、出てくる様子はないけど
町の人たちの様子をどこからか伺っているかのような
「義勇、おまたせ」
義「…あぁ」
「…鬼がいる。それも一つや二つの気配じゃない。もっとたくさんの鬼の気配」
義「……」
どうやら義勇も感じたようだ
「どこにいるのかがはっきりしない。こういう時、炭治郎や善逸みたいに鼻や耳がよければ場所が特定できそうなのに」
義「問題ない。人を食うのは夜だ。それまでは鬼も動かないだろう」
「…まぁ、そうなんだけど」
…もしかしてお館様
この任務場所に鬼が複数いるかもしれないと思って義勇も一緒に行かせることにしたのかな
オレ一人でも問題はないんだけど、義勇がいてくれたらオレが楽できるのは確かだ
義「白夜、あそこに食事処を見つけた」
「あ、ほんとだ。それじゃあひとまずご飯でも食べて休憩しようか」
お腹空いたし
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「それにしても複数の鬼の気配…。基本鬼は群れないけど、那田蜘蛛山みたいな例もあるし、気を抜かないようにしないとね」
義「あぁ。白夜は俺が守る」
…今そういう話してた?
会話が噛み合ってないんだけど
「…ま、いっか」
義「白夜」
「んー?」
顔を向けると、突然目の前に義勇の顔が
そして気付いた時にはすでに口付けをされていた
「…っ!」
義「…すまない。どうしてもしたくなった」
「ば、ばかっ!こんな人が多い場所で!!」
義「誰も見てない」
「いや、誰かは見てるわ」
冷静だなぁ、オレ
「義勇。君はもっと我慢ということを覚えなさい」
義「…善処はする」
「いや、絶対我慢して」
義(好きな気持ちを我慢しろと言うのか)
(そんなこと言ってないでしょ?場所を考えてってこと)
義(…誰もいなければいいんだな)
(…なんか、怖い)