夫婦喧嘩と感情の涙
百「…ユキ……」
千「そんなことで悩んでたのか。それが原因で歌えなかったのか?」
百「だって…」
千の次に入ってきたのは、楽と龍
楽「百さん、違います。千さんは節目のコンサートだったから相方さんに来てほしかっただけなんだ」
龍「ちゃんと百さんのことを、本物のパートナーだと思ってます。そうですよね、千さん」
千「まぁ、そうね」
千らしい返答だな…
楽「そうねって…。ビシッと言ってあげたらいいじゃないですか。おまえの他に変わりはいないとか。おまえだけが永遠に、俺のパートナーだぜ、とか」
「…それは千には無理かもなぁ」
ていうか楽だから言えるんじゃ?
千「ハクヤの言うとおりだよ、楽くん。抱かれたい男No.1の子と違って、僕は恥ずかしがり屋なんだよ」
楽「俺だってシャイっすよ!」
天&龍「「それはない」」
「…だろうね」
百「無理しなくたっていいよ。ユキは優しいから、オレを見捨てられないだけなんだ」
千「そんなことないって」
百「本当は前の相方とやりたいんでしょ?」
千「………。そんなことな…」
百「ほら!間があった!!」
…確かに、ちょっと間があったな
千「違う違う。くしゃみが出そうだっただけ」
百「そうやっていつも誤魔化す!オレは知ってるんだからな!夜な夜な昔のアルバムめくってること!」
千「親友が行方不明になったんだ。少しくらい、感傷に浸らせてくれよ」
百「お酒が入ると、いつも相方の昔話ばっかりするし!」
千「ごめんごめん」
百「たまにぼそっと、あいつは出来るのにな、とか言ったりするでしょ!!」
千「言ってないよ」
百「言いました!」
千「じゃあ、謝るけどさ」
百「いいよ、謝らなくたって!ユキは昔の相方に未練があるんでしょ!そうでしょ!!」
千「まぁね。ないって言ったら嘘になるけど」
百「あるんじゃんか!そんなの浮気と同じじゃんか!もう実家に帰らせていただきます!!」
千「よせよ、母さん。子供たちの前で…」
…なんだこの夫婦喧嘩は
もっと真剣な話だった気がするんだけど、いつの間に夫婦漫才になった…
一「誰が子供たちですか」
思わず一織が突っ込む
そりゃ言いたくなるわな
龍「なんのケンカをしてるんだ?」
「…ほんとにね」
陸「でも、百さんの気持ち分かります。尊敬してた相手と比べられたら、ショックですよ」
楽「そうかぁ?俺は百さんがちょっと女々しいと思うぜ」
天「比べられても、自分が負けてると思わなければ平気でしょ?」
百「なにこの人生勝ち組の後輩たち…。怖いよ、陸…。オレは陸みたいな子が大好きだよ…」
陸「そうだよ。天にぃにはわかんないよ!天にぃが何でも出来る分、オレが一番だったこと一度も」
天「は?」
陸「……っ」
天「ボクが自分の時間を全部割いて、あんなに面倒見てあげたのに、今さらそんなこと言うの?天にぃ大好きとか言いながら、内心では鬱陶しがってたってわけ?ちょっと二重人格すぎるんじゃない?」
楽「おまえには言われたくないと思うぞ」
陸「感謝する気持ちとは別に、面白くないこともあったんだよ!一織もなんかフォローしてって!」
突然ふられた一織
一「私はどちらかといえば、八乙女さんや九条さんに近い意見ですけど、あなたに反論すればいいですか?」
陸「ああ、そうだった…くそっ!ここに三月がいれば、分かってもらえるのに…!」
一「なら、言わせてもらいますけど、親身になって世話を焼いているのに、文句を言われる側の気持ちが分かります?」
天「それ」
千「本当にそれ」
陸「文句じゃないじゃん!」
百「気持ちが分かんないでしょって嘆きだよ!」
千「なら、どうすればいい。あいつのアルバムめくった分、おまえのアルバムもめくればいいのか?」
百「ルーチンワークみたいに愛されたって嬉しくないよ!ユキは全然分かってない!」
天「分かってないのはそっちでしょ。病弱なかわいい弟が少しでも楽しいようにって、献身的に面倒見てたら…突然目の前に現れて、追い抜いてやるぜ!って言われた人の気持ち、考えたことある?」
陸「そっ…」
天「ふふ。まさに、鳩が豆鉄砲だよね」
…天、それはそれで同情しちゃうかもだな
っていうか、なんかRe:valeとは関係ないケンカが始まってるんだけど、どうしたらいいの?
楽「あらためて聞くと、おまえかわいそうだな」
天「そうでしょう?優しくして」
楽「よしよし」
陸「てっ…天にぃが理由も話さないで、家を出てったりするからだろ!!だから、わけがわかんなくて…」
天「ほらね。ボクが悪いんだって。どうして弟っていつもこうなんだろ」
陸「悪いなんて言ってないじゃん!」
天「ボクのせいなんでしょ」
陸「…っ、天にぃずるいよ!口では天にぃにかなわないのわかってて、いつも口ゲンカしてきてさ!」
天「揉めるたびに、ブラックホワイトを開催するわけにはいかないでしょ」
はぁ…あー!ったく、もう!!
「陸!天!いい加減、兄弟喧嘩は止めろ!」
龍「そうですよ!千さんと百さんも仲直りして」
よし、よく言った龍!
もうそろそろ我慢の限界よ?オレ
「千。Re:valeの相方は百から替えるつもりはないんでしょ?」
千「ないよ」
龍「じゃあ、もう安心だ。心配はなくなりました。そうですよね、百さん」
百「そうだけど…」
千「……僕が不安にさせてたせいで、君は歌えなかったの?」
百「…わかんないけど」
千「歌ってよ、モモ。心から反省してる。君の歌が聞きたい」
百「ユキ…」
千「楽くん、なんだっけ。さっきの台詞」
さっきの台詞?
楽「世界が終わる日まで、俺のパートナーは永遠に宇宙で1人だけだ」
千「…恥ずかしさ上がってない?」
…うん、さっきより壮大になってるね
楽「別に普通だろ?」
天&龍「「普通ではない」」
また声揃えて言われてるよ
千「世界が終わる日まで、僕のパートナーは永遠に宇宙で1人だけだ」
百「…本当に?」
千「ああ。スタジオに戻ろう。歌えそう?」
百「…うんっ」
…だけど、この日も百は歌えなかった
「…百、言ってたな。千は自分より相方のほうが大事なんだって。もしかして、その気持ちが、邪魔してるのかもしれない…」
(…万理さんに会ったら、吹っ切れるのかな…)