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百の声と期限切れ


陸「…本物のRe:valeじゃないって、どういうことですか?」

百「そのまま、言葉の通りだよ。十年来の幼馴染みたいに…夫婦みたいに振る舞ってるけど…本当はそんなんじゃない。オレはユキの…。ユキさんのファンだったんだ」

陸「…ファン?」

百「…ユキはインディーズの頃、別の人と組んで、Re:valeをやってたんだよ」

陸「…別の人?」


…それが万理さんなんだよね
万理さんのことも考えて、誰にも言ってないけど


百「うん。二人で曲を作って、二人で歌って、二人で全部やってた。すごい格好良かった!男性アイドルは女性ファンが多いけど、オレみたいに男にも人気があってさ。オレは二人に憧れて、いつも二人を追いかけてた。二人が、Re:valeが大好きだったんだ」


百…ほんとに、二人のこと大好きなんだ
不謹慎だけど、ちょっと羨ましいなって思ってしまった


百「ああ、いつメジャーデビューするんだろう。早く日本中がRe:valeを知ればいいのに。そんなこと、ずっと思ってた」

一「…なぜRe:valeは今の形になったんですか?その人と千さんが揉めたんですか?」

百「違うよ。二人は仲良しだった。お互いのことを尊敬しあって、認め合ってた。そんな矢先、有名なプロデューサーがRe:valeに声をかけたんだ」


天「…有名なプロデューサー」

…?
天は心当たりがあるのかな?


百「うん。名前は忘れちゃったけど、ゼロのマネージメントをしてた人だって」

陸「ゼロの!?すごい人じゃないですか!」

百「そうなんだ。だけど、方向性の違いから二人は話を断ってたらしいんだ。もっと、自分たちらしくやれる事務所を見つけて、そこからデビューする予定だった。だけど…デビュー直前にユキさんの相方がステージで事故にあったんだ」


陸「事故…」


百「オレもそのステージは見てた。頑丈そうな照明が、突然ユキさんの真上に落ちてきたんだ。咄嗟に相方が庇って…。気付いた時には相方が顔を押さえてステージに蹲ってた」


聞くのは二回目だけど…
…つらい、な……やっぱ


百「ライブは中止…相方さんは助かったけど、顔にひどい傷が残ったんだって」

一「照明の落下なんて、ありえることなんですか?人為的な事故だったんじゃないですか?」


…だよね
オレも、もしかしたらそうなんじゃないかって思ってしまった


百「そういう話もあった。Re:valeの人気を妬んでやったとか。そんなことがあって、決まっていた事務所から、デビューの話はなくなったんだ。でも…例の有名なプロデューサーが、こんな話を持ち掛けたんだ」


自分とこに来れば、相方の傷も、綺麗に治す
手術代も出してやる、か…

甘い誘惑だな…


百「相方の顔の傷に、責任を感じていたユキさんは、1、2もなく提案に飛び付いた」


陸「でも、方向性の違う相手だったんでしょう?」


百「そうなんだ。ユキさんの相方はそのことを心配したんだろうな。『ユキらしく、Re:valeらしく、歌える場所を探して欲しい』って書き置きを残して消えちゃったんだって」

陸「そんな…」


万理さん…
ほんとに千のこともRe:valeのことも、大切だったんだな


百「あの時期のユキさん、本当に落ち込んじゃってさ。見てられなかった。必死に相方を探しても全然見つからなくって。ユキさんは引退を考えてた。オレは人から、ユキさんが音楽を止めるって話を聞いて、いてもたってもいられなくって…。ユキさんにお願いしたんだ。
ーーオレを仮の相方にしてください。
相方が見つかるまでの間だけでいい。相方と活動していた五年間だけでもいい。オレと組んでください。お願いだから、ユキさんに、歌を止めてほしくないんです」


陸「百さん…」

「百…」


百「はは…。もー、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになりながら頭下げてさ。自分でもひくわって感じ。でもユキはジェントルだろ?最初は『あいつ以外、考えられない』って、困ってたんだけど。一ヶ月通いつめた朝、いいよって言ってくれたんだ。あの日から夢を見てるみたいだった。
憧れてたユキと一緒に歌って、友達みたいに悩みをわけあって、たくさんの賞をもらって。でも、この幸せはオレのものじゃない。今のRe:valeは本物じゃない」


天「そんなことはありません。今のRe:valeのファンは、あなと、千さんのファンだ。今のRe:valeはあなたが、あなたと千さんが掴んだ夢でしょう」


そうだよ
ここまで頑張ってきたのは、百と千なんだ


百「はは…。オレもそう思ってた。Re:valeはユキとオレだって。だけど、ユキは相方をまだ探してる。5周年記念までに見つけて欲しいって電話してるのを聞いたんだ。5年間一緒にやらせてって、オレはユキにお願いした。…ねぇ、わかるでしょ?5周年記念で、オレは期限切れなんだよ。少なくとも、ユキはそう思ってる」



その時、ガチャっと扉が開き、入ってきたのは




千「思ってない」






(…千。もう、遅いよまったく…)
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