暴露
「…IDOLiSH7。最近調子悪いな…SNSで一織ファンと陸ファンがケンカしてるし、MCで頑張ってる三月のことを映りすぎだって悪く言うファンもいるみたいだし」
オレはソロだから、グループ内のファンの争いっていうのがなかったけど
百が前に言ってた
アイドルを苦しめるのは、いつだって『好き』の感情だって
きっと今が、その壁にぶつかってる時なんだろうな…
そして一番気になるのは、ゼロアリーナのこけら落としを知らせるポスターに落書きされているこの文字
「…Get back my song。僕の歌を取り戻せ、か…」
恐らくこれは、先日Re:valeがゼロアリーナでゼロの曲をカバーすることを発表したことが関係しているんだろう
「…大丈夫かな。百、千」
そして、Re:valeとIDOLiSH7と共演する音楽番組の収録日がやってきた
「とりあえず、IDOLiSH7の様子見てくるか」
最近は忙しくて顔合わせてないからな
コンコン
「君たち、入るよー」
壮「ハクヤさん…!」
環「ハッくん!」
うわ…何この重苦しい空気は
壮「あの…見ての通り、ちょっと…悪い空気と言いますか…」
環「いおりんとりっくん、ケンカしてっし、みっきーとナギっち元気ないし、ヤマさんは省エネ中だし」
「は?大和はなんだって?」
省エネしとる場合か!!
「良かった。メッゾ組はいつも通りみたいだね」
壮「はい。環くん、最近よく褒められるんです。それが嬉しくて」
「そっか。えらいな、環!」
環「えへへ」
はぁ…どうしたもんかね
「陸、元気出して。ファンの皆が皆、陸がセンターじゃないほうがいいって思ってるわけじゃない。陸のことが大好きなファンは、君のことを待ってるんじゃないかな。だから、その子たちまで否定しないで。っていうより、君のセンター復帰を望んでるのは、案外一番近くにいるやつかもよ?」
陸「え…?」
一「ちょっ…!ハクヤさん!?」
「ふふ。まぁがんばれ、陸の一番のファン君」
オレは一織にしか聞こえないように呟いた
「三月。この子たちのファンに嫌われたくないっていう気持ちは分かる。でも、じゃあ三月のファンは?三月が遠慮しながらMCして、元気のない三月を見た三月のファンはどう思うかな」
三「…それは」
「いつも通りの明るい三月が好きっていうファンがいることを忘れないで。色々辛いかもしれないけどさ。それで三月の個性潰しちゃうのは、もっと悲しいことだとオレは思うな」
三「………」
「えー、色々えらそうなこと言ってごめんね、みんな。でも君たちが苦しんでるのを、放ってはおけないっていうか。まぁ、そういうことで、今日の収録頑張ろうね。それじゃまた」
オレは楽屋を出た
「…はぁ。ほんと、オレえらそうに何言ってんだろ。お節介すぎたかな…」
一人悶々としていたら
百「…はぁ」
Re:valeの楽屋前の扉で、うずくまる百がいた
「…百?」
百「…あ、ハク…!」
百と目が合った
オレは百の隣へ
「…どうしたの?珍しいね、百がうずくまってるなんて」
百「そうかな?」
「うん。いつも明るいから。でも、無理してるなーって思う時がたまにある」
百「やっぱり繕ってても、ハクにはバレちゃうなー。モモちゃん失敗失敗。えへへ」
今も、無理に笑おうとしてる
「百。何かあった?千関係?」
百「……ユキさ、まだ元相方のこと、探してるんだ。その電話してるの、聞いちゃって」
「…うん」
百「ユキが言ってたんだ。五周年コンサートまでに探しだしてほしいって。それってさ、もうすぐオレは期限切れってことなんだ…」
「…確か、百が千にRe:valeを一緒にやってほしいって頼んだ時、元相方とやってた五年間でいいからって言ったんだっけ」
百「…うん。それでユキはOKしてくれたんだけど。もうすぐその五年だから」
「…百、千は百とのRe:valeを大切にしてる。そう簡単に百のこと手放すわけないよ」
百「でも…」
「……百」
(百のこんな辛そうな顔、見たくない…)