第八話 飛び込み

 電車の運賃を電子マネーで支払い、エルディはホームに立った。小さな駅なので、この駅に停車する電車は3本に1本しかない。2本は通過列車で、確実に殺してくれるだろう。
 エルディはホームから線路に飛び降り、線路に寝転がった。すると、
 「何やってんだあんた!死ぬ気か!」
 と、初老の男性が線路に飛び降り、エルディの腕を引き上げた。
 「もうお金がないんです。死なせてください」
 「馬鹿か!そんなことぐらいで死ぬな!駅員さん!駅員さん電車止めて!」
 駅員は慌てて停車信号を送り、通過予定の電車を2駅手前で停車させた。エルディの命は男性に救われてしまった。
 男性に担ぎ上げられ、ホームに引き上げられたエルディは、ホームで電車を待っていた人々に殴る蹴るの暴行を受けた。
 「何電車止めてんだ!急いでんだぞこっちは!」
 「人の迷惑考えろ!お前のせいで遅刻したら金請求するからな!」
 「こんなところで死のうとしないでくれる?迷惑なんだけど!」
 「そんなに死にたいなら死ぬほどぶん殴らせろ!」
 駅員が仲裁に入り、人々が離れると、エルディは痣だらけ傷だらけでその場に倒れた。
 「また死ねなかったよマイスウィートハート……カフィン……。これからどうやって生きたらいいんだああ~~~~」
 エルディはその場に転がりながら気が済むまで泣いたという。
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