第五話 焼身
一方、火だるまになったエネットの目の前にもカフィンが現れた。
「貴様はこのまま死にたいのか?本当に後悔しないのだな?」
エネットは藻掻いていた。全身に広がる激痛と、呼吸困難から逃れられない。
「死にたくない、まだ死にたくない!」
「しかし、火をつけたのは貴様、死を願ったのも貴様だ。今更死からは逃れられない」
エネットはカフィンの前に跪いた。
「儂は、死を受け入れても構わん。だが、あの青年のことは助けてやってくれ。彼にはまだ未来がある」
カフィンはフッと優しい顔になり、「よく解っているじゃないか」と言った。
するとエネットの視界がスパークした。赤い光から白い閃光に変わり、世界がまぶしい白に覆われると、暗転して眼前に広がったのは宇宙であった。
「これは、生の爆発だ!!超新星爆発だ!!命が燃え尽きるには、まだエネルギーが残っている!この生はまだこの先も燃焼するパワーを残しているのだ!!」
エネットはそう悟ると、手探りでエルディの頭を掴み、そばにあった池に突き落とした。そして自身も最後の力を振り絞って、水の中に飛び込んだ。
二人が炎に包まれて水の中に飛び込むまで、時間にして10秒もかかっていなかっただろう。だが、二人には1000万年も宇宙を放浪したような、長い時間に思われた。
激しい水の音を怪しんだ家政婦が庭に出てくると、池に落ちている主人と見知らぬ青年の姿を見止めた。家政婦は慌てて携帯電話で救急車を呼ぶと、ほどなく救急車から担架が運ばれてきて、二人は病院へ運ばれた。
「作家のウィリアム・エネット氏が焼身自殺未遂で病院へと運ばれました。現在、容体は予断を許さない状態ですが、意識はあるとのことです。彼と一緒に自殺を企てた人物は、エルディ・スミス・フィルキイという名の20歳の青年で、警察は二人の容態の回復を待って、殺人未遂の罪で逮捕するとのことです」
報道各社はこぞって二人の自殺未遂について取り上げた。幸い二人は重傷ではあったが、命に別状はなかった。エルディとエネットを近い病室にしておくと、再び自殺する恐れがあるため、二人は別々の病院に運ばれ、集中治療室で治療された。エルディは、カフィンが結婚を受け入れたように思えたのに、なぜまだ生きているのか疑問で仕方がなかった。あの「そうか」にはどんな意味が込められていたのだろう。
二人の火傷が回復すると、二人は逮捕された。死の瞬間何かを悟ったエネットは、刑務所内で狂った様に執筆を開始したという。
「命の爆発だ!この命燃え尽きるまで、儂は執筆を止められぬのだ!!」
獄中から発行した彼の新刊は、彼の自殺未遂のニュースも後押しして、大ベストセラーになったという。
「貴様はこのまま死にたいのか?本当に後悔しないのだな?」
エネットは藻掻いていた。全身に広がる激痛と、呼吸困難から逃れられない。
「死にたくない、まだ死にたくない!」
「しかし、火をつけたのは貴様、死を願ったのも貴様だ。今更死からは逃れられない」
エネットはカフィンの前に跪いた。
「儂は、死を受け入れても構わん。だが、あの青年のことは助けてやってくれ。彼にはまだ未来がある」
カフィンはフッと優しい顔になり、「よく解っているじゃないか」と言った。
するとエネットの視界がスパークした。赤い光から白い閃光に変わり、世界がまぶしい白に覆われると、暗転して眼前に広がったのは宇宙であった。
「これは、生の爆発だ!!超新星爆発だ!!命が燃え尽きるには、まだエネルギーが残っている!この生はまだこの先も燃焼するパワーを残しているのだ!!」
エネットはそう悟ると、手探りでエルディの頭を掴み、そばにあった池に突き落とした。そして自身も最後の力を振り絞って、水の中に飛び込んだ。
二人が炎に包まれて水の中に飛び込むまで、時間にして10秒もかかっていなかっただろう。だが、二人には1000万年も宇宙を放浪したような、長い時間に思われた。
激しい水の音を怪しんだ家政婦が庭に出てくると、池に落ちている主人と見知らぬ青年の姿を見止めた。家政婦は慌てて携帯電話で救急車を呼ぶと、ほどなく救急車から担架が運ばれてきて、二人は病院へ運ばれた。
「作家のウィリアム・エネット氏が焼身自殺未遂で病院へと運ばれました。現在、容体は予断を許さない状態ですが、意識はあるとのことです。彼と一緒に自殺を企てた人物は、エルディ・スミス・フィルキイという名の20歳の青年で、警察は二人の容態の回復を待って、殺人未遂の罪で逮捕するとのことです」
報道各社はこぞって二人の自殺未遂について取り上げた。幸い二人は重傷ではあったが、命に別状はなかった。エルディとエネットを近い病室にしておくと、再び自殺する恐れがあるため、二人は別々の病院に運ばれ、集中治療室で治療された。エルディは、カフィンが結婚を受け入れたように思えたのに、なぜまだ生きているのか疑問で仕方がなかった。あの「そうか」にはどんな意味が込められていたのだろう。
二人の火傷が回復すると、二人は逮捕された。死の瞬間何かを悟ったエネットは、刑務所内で狂った様に執筆を開始したという。
「命の爆発だ!この命燃え尽きるまで、儂は執筆を止められぬのだ!!」
獄中から発行した彼の新刊は、彼の自殺未遂のニュースも後押しして、大ベストセラーになったという。