第四章 奇跡使いと言霊使いの恋
街の片隅の古いアパートの一室で、ミルドレッドは書類を捌き、電卓をはじいていた。事務所の経営の帳尻合わせと、新社屋の建築に関する各種手続きなどなど。
先日のベルの暴走事件はケフィの活躍によって解決した。ヴィンディクタエの蓄えた業はケフィのニヒリウムの力によって消滅し、一件は落着したのだが、代わりに屋敷が跡形もなく吹き飛んでしまった。金銭は銀行に預けているため被害は最小限に抑えられたが、別棟の祠以外家財道具も壁も床もライフラインもすべて吹き飛んで更地になってしまった。生活が困難になったミルドレッド達は二手に分かれて事務所再建のために仕事を始めなくてはならなくなった。
まずミルドレッドとガイは近隣で一番安く借りられる小さなアパートに引っ越し、事務作業と仕事の依頼の受付を行う。ケフィ達はアレキサンドライトに頼み込んで彼女の道場に住まわせてもらうことになった。基本的な生活のルールはアレキサンドライトの指導に従い、ミルドレッドが受けた依頼をガイが弟子たちに伝え、出動する。彼女たちはそんな不自由な生活を強いられることになってしまった。
ガイがスーパーで買った食材の袋を携えてアパートに帰ってきた。
「ただいま。ミルドレッド、何か変わったことはあったか?」
「一件依頼が入ったわ。急ぎじゃないから、明日あの子たちに書類持って行って」
「分かった。まあ、とりあえず適当に夕飯作るぜ」
狭いダイニングキッチンで、狭いテーブルを囲み、粗末な食事をとる。こんな生活は独立当初以来だ。あのころと違うのは、今はガイという頼りになる男がいることぐらいか。
「あの業者だめね。壁紙の指定は追加料金とかいうのよ。お風呂のタイルもダサいのしか基本料金で使えないし、指定したらかなり吹っ掛けてきて。他にいい業者知らない?あたしが言霊使いだからって足元見てるのよ。ふざけてるわ」
ガイは何度目かわからないミルドレッドの愚痴に少々うんざりしていた。無理もないのはわかるが、それにしてももう少し明るい話題は無いものか。ミルドレッドはこのアパートで暮らし始めてからずっと眉間にしわを寄せている。生活の一切をガイが支えているが、それにしても四六時中苛立つミルドレッドの相手をするのは神経が磨り減る。
「ミルドレッド、疲れてないか?お前さん、もうずっと仕事と手続きと契約の話ばかりだ。もっと楽しい話題はないのかよ」
「疲れてるわよ!!!!楽しいことなんかある?あるなら持ってきて!」
また今日も気まずいまま二人は寝床に就く。色気のある行為はもうずっとご無沙汰だ。
(まいったなあ。さすがの俺も気が滅入ってきた。いつまでこの暮らしは続くんだよ)
先日のベルの暴走事件はケフィの活躍によって解決した。ヴィンディクタエの蓄えた業はケフィのニヒリウムの力によって消滅し、一件は落着したのだが、代わりに屋敷が跡形もなく吹き飛んでしまった。金銭は銀行に預けているため被害は最小限に抑えられたが、別棟の祠以外家財道具も壁も床もライフラインもすべて吹き飛んで更地になってしまった。生活が困難になったミルドレッド達は二手に分かれて事務所再建のために仕事を始めなくてはならなくなった。
まずミルドレッドとガイは近隣で一番安く借りられる小さなアパートに引っ越し、事務作業と仕事の依頼の受付を行う。ケフィ達はアレキサンドライトに頼み込んで彼女の道場に住まわせてもらうことになった。基本的な生活のルールはアレキサンドライトの指導に従い、ミルドレッドが受けた依頼をガイが弟子たちに伝え、出動する。彼女たちはそんな不自由な生活を強いられることになってしまった。
ガイがスーパーで買った食材の袋を携えてアパートに帰ってきた。
「ただいま。ミルドレッド、何か変わったことはあったか?」
「一件依頼が入ったわ。急ぎじゃないから、明日あの子たちに書類持って行って」
「分かった。まあ、とりあえず適当に夕飯作るぜ」
狭いダイニングキッチンで、狭いテーブルを囲み、粗末な食事をとる。こんな生活は独立当初以来だ。あのころと違うのは、今はガイという頼りになる男がいることぐらいか。
「あの業者だめね。壁紙の指定は追加料金とかいうのよ。お風呂のタイルもダサいのしか基本料金で使えないし、指定したらかなり吹っ掛けてきて。他にいい業者知らない?あたしが言霊使いだからって足元見てるのよ。ふざけてるわ」
ガイは何度目かわからないミルドレッドの愚痴に少々うんざりしていた。無理もないのはわかるが、それにしてももう少し明るい話題は無いものか。ミルドレッドはこのアパートで暮らし始めてからずっと眉間にしわを寄せている。生活の一切をガイが支えているが、それにしても四六時中苛立つミルドレッドの相手をするのは神経が磨り減る。
「ミルドレッド、疲れてないか?お前さん、もうずっと仕事と手続きと契約の話ばかりだ。もっと楽しい話題はないのかよ」
「疲れてるわよ!!!!楽しいことなんかある?あるなら持ってきて!」
また今日も気まずいまま二人は寝床に就く。色気のある行為はもうずっとご無沙汰だ。
(まいったなあ。さすがの俺も気が滅入ってきた。いつまでこの暮らしは続くんだよ)