第四章 奇跡使いと言霊使いの恋

 日を改めて、二人はメディア各社に電報を打った。婚約の報告だ。
 テンパランス程の著名人ともなると、メディアが黙っていない。二人は先手を打って、正式に報告した。
 翌日、二人は会見場を押さえて記者会見をセッティングした。国内外のメディアが記者会見に殺到した。
「式はいつ頃のご予定ですか?」
「来年2月ごろを予定しております」
「お二人のなれそめは?」
「僕が5年前テンパランス様のもとに入門したのが始まりです」
「今まで禁忌を犯したことは?」
「回答を差し控えさせていただきます」
「プロポーズの言葉は?」
 下世話な質問が雨のように降ってくる。だが、二人には何も怖いものはなかった。終始晴れやかな顔で堂々と幸せを報告する。
 その潔さに世論は二人の幸せを祝福した。
 奇跡使いの常識を破った女奇跡使いテンパランスは、奇跡使いの常識を破って奇跡使いと結ばれた。
 この奇跡はきっと未来を変えていくだろう。会見が終わると、ミルドレッドとガイが花束を持って二人を待っていた。
「祝福してくれるの、ミルドレッド?」
「一足先を越されたわね。でも、私もすぐに追いかけるから」
「すぐに?」
 テンパランスはミルドレッドの隣でウィンクするガイを見て察した。ああ、きっと彼女は。
「悔しいから、明日あたしたちも会見するわ」
 ミルドレッドはこの期に及んでも、まだテンパランスとは最大のライバルだ。
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