第四章 奇跡使いと言霊使いの恋
まるで夢のようだ。夢にまで見たテンパランスの道場での生活。ここの生活が気に入ったら正式にジャッジメントとはおさらばしてやる。
ポールは懸命に働き、その実力の高さをテンパランス達に示した。
「ニコとも仲良くやってくれるし、ポールが来てくれてよかったですね、テンパランス様」
「そうねえ。かなり仕事は楽になったわねえ」
しかし、ポールにとって邪魔だったのはアルシャインの存在だ。彼がいつでもテンパランスの影のように彼女に付き従う。テンパランスと二人で話しているときも、どこからともなく彼がやってきて、話に参加してしまう。一方で彼はいつだってテンパランスを独り占めするかのようにいつも一緒にいるのだ。
「邪魔だな……」
交通費分の仕事をこなした頃、ある朝食卓でジャッジメントのところに帰る話を振られたポールは、「少し考えさせてください」と、結論を保留した。
「帰れるものか。何とかしてこの道場に置いてもらわなければ」
ポールは、ダイニングキッチンにアルシャインを呼び出した。「相談がある」という口実だったが、ポールの心算では、アルシャインに自ら道場を去らせようというものだった。
「アルシャインさん。ズバリお聞きします。貴方とテンパランス様はどんな関係なんですか?」
「どんな関係?!」
アルシャインはぎくりとした。自分とテンパランスとの関係。それはただの師匠と弟子の関係……のはずだが。
「僕はテンパランス様の弟子だ。何番目の弟子か分からないけれど、5年以上は一緒にいるよ」
「本当にそれだけなんですか?一度も禁を犯したことはないんですか?」
アルシャインはまた痛いところを突かれた。一度も?そんな事誓えるわけがない。彼は確かにテンパランスに想いを寄せていて、ひそかに彼女に内緒で禁を犯して罰が下ったことは数知れない。だが、いつも悪食を犯した、酒を飲んだと嘘を重ねてきた。
「どういう……意味だい?」
「あなたを見ていると、まるでテンパランス様に魔手を伸ばそうとしているように見える。それは禁忌では?そんなことで彼女のもとで修業ができるんですか?彼女を支えることができるんですか?」
アルシャインは自然と厳しい目をしていた。なぜ彼にはこの本心が見抜かれているのか。わざわざポールがここに高い交通費をかけてやってきた理由も怪しいものだ。ひょっとして、魔手を伸ばそうとしているのはポールのほうではないのか?
「僕のことがそう見えるということは、君の方こそテンパランス様に魔手を伸ばそうとしているんじゃないのかい?僕は彼女に手を出したことはない。5年間一度も。しかし、彼女に手を出そうとする沢山の弟子からいつも彼女を守ってきた。君は、彼女に手を出さないと誓えるのか?」
「誓えますね。僕は今まで禁を犯したことが数えるほどしかない。色欲に溺れたこともない。僕はこの道場に来て、ここが気に入りました。ずっとここにいたいと思っている。でも、師匠に悪影響を加えようとする人は排除しなければ」
「僕はそういう人を何人も見てきた。そして彼らは結局破門された。君のような人ほど特にね」
「なら勝負しますか?僕と戦って、どちらがこの道場に必要な人間か、はっきりさせましょうか?」
アルシャインは、やっとポールの意図を汲み取った。戦いたかったのか。そして、アルシャインのことを疎ましく思って、排除しようと考えたのか。
「良いだろう。だが、そういうことなら僕は手加減するわけにはいかない。君が命を落とす可能性もあるだろう。だが、恨まないでくれ」
ポールは立ち上がった。
「そっちこそ、死んでから文句言わないでくださいね」
ポールは懸命に働き、その実力の高さをテンパランス達に示した。
「ニコとも仲良くやってくれるし、ポールが来てくれてよかったですね、テンパランス様」
「そうねえ。かなり仕事は楽になったわねえ」
しかし、ポールにとって邪魔だったのはアルシャインの存在だ。彼がいつでもテンパランスの影のように彼女に付き従う。テンパランスと二人で話しているときも、どこからともなく彼がやってきて、話に参加してしまう。一方で彼はいつだってテンパランスを独り占めするかのようにいつも一緒にいるのだ。
「邪魔だな……」
交通費分の仕事をこなした頃、ある朝食卓でジャッジメントのところに帰る話を振られたポールは、「少し考えさせてください」と、結論を保留した。
「帰れるものか。何とかしてこの道場に置いてもらわなければ」
ポールは、ダイニングキッチンにアルシャインを呼び出した。「相談がある」という口実だったが、ポールの心算では、アルシャインに自ら道場を去らせようというものだった。
「アルシャインさん。ズバリお聞きします。貴方とテンパランス様はどんな関係なんですか?」
「どんな関係?!」
アルシャインはぎくりとした。自分とテンパランスとの関係。それはただの師匠と弟子の関係……のはずだが。
「僕はテンパランス様の弟子だ。何番目の弟子か分からないけれど、5年以上は一緒にいるよ」
「本当にそれだけなんですか?一度も禁を犯したことはないんですか?」
アルシャインはまた痛いところを突かれた。一度も?そんな事誓えるわけがない。彼は確かにテンパランスに想いを寄せていて、ひそかに彼女に内緒で禁を犯して罰が下ったことは数知れない。だが、いつも悪食を犯した、酒を飲んだと嘘を重ねてきた。
「どういう……意味だい?」
「あなたを見ていると、まるでテンパランス様に魔手を伸ばそうとしているように見える。それは禁忌では?そんなことで彼女のもとで修業ができるんですか?彼女を支えることができるんですか?」
アルシャインは自然と厳しい目をしていた。なぜ彼にはこの本心が見抜かれているのか。わざわざポールがここに高い交通費をかけてやってきた理由も怪しいものだ。ひょっとして、魔手を伸ばそうとしているのはポールのほうではないのか?
「僕のことがそう見えるということは、君の方こそテンパランス様に魔手を伸ばそうとしているんじゃないのかい?僕は彼女に手を出したことはない。5年間一度も。しかし、彼女に手を出そうとする沢山の弟子からいつも彼女を守ってきた。君は、彼女に手を出さないと誓えるのか?」
「誓えますね。僕は今まで禁を犯したことが数えるほどしかない。色欲に溺れたこともない。僕はこの道場に来て、ここが気に入りました。ずっとここにいたいと思っている。でも、師匠に悪影響を加えようとする人は排除しなければ」
「僕はそういう人を何人も見てきた。そして彼らは結局破門された。君のような人ほど特にね」
「なら勝負しますか?僕と戦って、どちらがこの道場に必要な人間か、はっきりさせましょうか?」
アルシャインは、やっとポールの意図を汲み取った。戦いたかったのか。そして、アルシャインのことを疎ましく思って、排除しようと考えたのか。
「良いだろう。だが、そういうことなら僕は手加減するわけにはいかない。君が命を落とす可能性もあるだろう。だが、恨まないでくれ」
ポールは立ち上がった。
「そっちこそ、死んでから文句言わないでくださいね」