第四章 奇跡使いと言霊使いの恋
じっと己が手を見つめ、あの柔らかな感触を思い出す。
「綺麗な人だったな……」
奇跡使い対言霊使いナンバーワン決定戦の決勝戦で、かの有名な世界唯一の女奇跡使い・テンパランスに出会った。
奇跡使いジャッジメントの弟子・ポール・エスキースは、あの日から心を捕らえて離さないテンパランスのことを想い続けていた。
ポールは5人兄弟の5男。つまり、男だらけの兄弟の中育った。母は幼い頃に父と離婚し出ていった。父と5人の兄弟。男だらけの家庭で、中学は武道の専門教育を受けられる特殊な男子校だった。女性らしい女性と会話したのは小学校以来だ。
テンパランスから仄かに香った甘い匂いが忘れられない。女性というのは、あんなにいい匂いがするものなのか。
修業が終わり、自室であの時握ったあの手の感触を何度も反芻する。
細くて、すべすべしていて、ひんやりしていて、しっとりしていて、柔らかい。
「うっ……痛い、痛たたたたたた……」
ポールの股間の彼自身が窮屈だと悲鳴を上げる。固く膨張したそれは、彼自身の薄い皮を破かんばかりに下着の中で己が存在を主張する。
ポールはズボンも下着も脱ぎ捨て、それを開放した。しかし、熱をもってミシミシと痛む彼自身の憤りは収まらない。
「耐えなくちゃ……。罰が下る。罰が下ったら師匠はお許しにならない」
はあはあと荒く息をついて、興奮が収まるのを待つ。しかし、薄皮1枚で張り詰めたそれは敏感で。エプロンの衣擦れにも感じてしまう。
「駄目だ……。ああ、テンパランス様……!」
ポールは禁忌を犯す覚悟をし、そそり立つ己に手を伸ばした。
翌朝、ポールは左頬に切り傷をつけて食堂にやってきた。
「ポール、お前……」
「やっちゃったか……知らねえぞ」
兄弟子たちは彼が何をしたかすぐに察したようだ。大体夜中起こす禁は悪食か手淫かと相場が決まっている。
当然左頬の傷を見止めたジャッジメントは顔を紅潮させて恫喝した。
「ポール!お前何をした!」
「言いたくありません」
「言えないようなことをしたのか」
まだ若いポールの心に、ほんの少し反抗心が芽生えた。こんな若者が今まで禁らしい禁を犯さず生きてきたのだ。健康な青年にとって自然なことではないか。何が悪いというのか。ポールは小さく「抜きました」と口の中で言った。
「何?もう一度言ってみろ」
「……抜きました!」
バシッ!!
ジャッジメントは傷ついている左頬を思い切り引っ叩いた。衝撃で床に倒れ込むポール。
「いってえ……。何も傷の上から……」
「色欲は最も犯しやすい禁だといつも厳しく指導してきただろう!お前は大丈夫だと思っていたのに!」
「お前は大丈夫」という言葉にポールの心が刺激された。まるでこの僕が不能みたいな言い方だな。
「何も傷の上から殴ることないじゃないですか!!僕だってまだ若いんです!むしろ今まで戒律を守っていたことを褒められないんですか?!」
「お前には期待して目をかけていたのに、情けないと言っているのだ!」
テンパランスの優しそうな美しい顔が脳裏をちらつく。
「僕にだってそういう日があります!」
「綺麗な人だったな……」
奇跡使い対言霊使いナンバーワン決定戦の決勝戦で、かの有名な世界唯一の女奇跡使い・テンパランスに出会った。
奇跡使いジャッジメントの弟子・ポール・エスキースは、あの日から心を捕らえて離さないテンパランスのことを想い続けていた。
ポールは5人兄弟の5男。つまり、男だらけの兄弟の中育った。母は幼い頃に父と離婚し出ていった。父と5人の兄弟。男だらけの家庭で、中学は武道の専門教育を受けられる特殊な男子校だった。女性らしい女性と会話したのは小学校以来だ。
テンパランスから仄かに香った甘い匂いが忘れられない。女性というのは、あんなにいい匂いがするものなのか。
修業が終わり、自室であの時握ったあの手の感触を何度も反芻する。
細くて、すべすべしていて、ひんやりしていて、しっとりしていて、柔らかい。
「うっ……痛い、痛たたたたたた……」
ポールの股間の彼自身が窮屈だと悲鳴を上げる。固く膨張したそれは、彼自身の薄い皮を破かんばかりに下着の中で己が存在を主張する。
ポールはズボンも下着も脱ぎ捨て、それを開放した。しかし、熱をもってミシミシと痛む彼自身の憤りは収まらない。
「耐えなくちゃ……。罰が下る。罰が下ったら師匠はお許しにならない」
はあはあと荒く息をついて、興奮が収まるのを待つ。しかし、薄皮1枚で張り詰めたそれは敏感で。エプロンの衣擦れにも感じてしまう。
「駄目だ……。ああ、テンパランス様……!」
ポールは禁忌を犯す覚悟をし、そそり立つ己に手を伸ばした。
翌朝、ポールは左頬に切り傷をつけて食堂にやってきた。
「ポール、お前……」
「やっちゃったか……知らねえぞ」
兄弟子たちは彼が何をしたかすぐに察したようだ。大体夜中起こす禁は悪食か手淫かと相場が決まっている。
当然左頬の傷を見止めたジャッジメントは顔を紅潮させて恫喝した。
「ポール!お前何をした!」
「言いたくありません」
「言えないようなことをしたのか」
まだ若いポールの心に、ほんの少し反抗心が芽生えた。こんな若者が今まで禁らしい禁を犯さず生きてきたのだ。健康な青年にとって自然なことではないか。何が悪いというのか。ポールは小さく「抜きました」と口の中で言った。
「何?もう一度言ってみろ」
「……抜きました!」
バシッ!!
ジャッジメントは傷ついている左頬を思い切り引っ叩いた。衝撃で床に倒れ込むポール。
「いってえ……。何も傷の上から……」
「色欲は最も犯しやすい禁だといつも厳しく指導してきただろう!お前は大丈夫だと思っていたのに!」
「お前は大丈夫」という言葉にポールの心が刺激された。まるでこの僕が不能みたいな言い方だな。
「何も傷の上から殴ることないじゃないですか!!僕だってまだ若いんです!むしろ今まで戒律を守っていたことを褒められないんですか?!」
「お前には期待して目をかけていたのに、情けないと言っているのだ!」
テンパランスの優しそうな美しい顔が脳裏をちらつく。
「僕にだってそういう日があります!」