【幕間劇】奇跡使いと言霊使いが一緒に収穫祭を過ごしたら

 祈りの言葉は、宗教を問わずお決まりの言葉を大地にささげられる。
『母なる大地の恵みに感謝を。今年も健やかに生きられたことに感謝を。あたたかな贄に感謝を。いただきます』
 そこで、ガイとケフィがクラッカーを鳴らした。
「さあ、食べよう!」
 大きなゴルシチョンボは甘めに味付けされていたが、食わず嫌いのイオナとニナは手をつけようとしなかった。
「コラーゲンがたっぷりでお肌にいいのよ」
「まだ若いから結構でーす!」
 ニナは早くもワインで酔いが回っているようだ。ミルドレッドの忠告に軽口をたたいた。
「ネビラクツバ美味しい。こんな短時間でよく味が染みたわね」
 テンパランスは大好物の野菜の煮込みを上手に仕上げた技術に感心した。
「いやあ、実は時短技があるんだよ。電機オーブンで火を通している間に他の料理をやっつけるとあっという間なんだ」
 ガイが自慢気に説明する。
「ハーモサンダ・ギー、このままじゃ食べにくいよね、切り分けようか」
 ハーモサンドという四つ足の小動物の丸焼き”ハーモサンダ・ギー”を、アルシャインはナイフで切り分けた。
「お手伝いしますよ。みんな、取り皿とって!」
 ケフィが積極的に手伝うと、隣に座っているベルが黙々と皿を渡し、取り分けられた皿を配る。
 ニコは夢中で食事にかじりついている。食べているときは静かなニコだ。
「いいんでしょうか……」
「うん?」
 ベルがふと、ケフィにこぼした。
「私みたいな人が、こんな団らんに参加してしまって……」
 ケフィはふっと微笑むと、
「何言ってるんですか。みんなが生きているのは、ベルさんの力のおかげです。堂々と召し上がってください」
 と励ました。たまらずベルの頬から一筋、光が零れ落ちる。
「おいおい、ベルちゃん、なんだよ、なんで泣いてるんだ?ケフィにいじめられたのか?」
 ガイが慌ててナプキンを差し出した。
「違います。なんか、みんな仲良くしてるのが、嬉しくて。そこに私も混ぜてもらえて……私……!」
 一同は思わず黙り込んだ。思えば、いがみ合ってばかりで、ちっとも仲良くなかった。それが今日は手を取り合って、同じ食卓を囲んでいる。少し前には考えられなかったことだ。
「そうね、ベル。あなたが陰から見つめていた私たちの関係、あなたのおかげでどれだけ愚かだったか気づけたのよ。ありがとう、ベル」
 ミルドレッドはそういうと、椅子から立ち上がり、涙を流すベルの頭を優しくなでた。
 
 収穫祭の夜は静かに更けていく。
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