【幕間劇】奇跡使いと言霊使いが一緒に収穫祭を過ごしたら

 11月29日。奇跡使いが身を捧げる精霊神教も、言霊使いが身を捧げる古霊道も、等しく大地の収穫に感謝する祝日がある。”収穫祭”だ。
 宗教は違えど、大地の恵みは等しく全生命にもたらされる。それを一緒に感謝する唯一の祝日のため、接客業以外は仕事を休み、各々パーティーを催して過ごすのだ。
 様々な波乱を乗り越えたテンパランス達は、ミルドレッド達を屋敷に招いてともにパーティーをすることになった。
 ミルドレッドの屋敷は破壊されて以来まだ修復工事が終わっていない。そこで、隙間風に耐える彼らを屋敷に招いたのだ。
 テンパランスの屋敷も先日の揉め事で一部破損しているが、居住スペースには影響しない。
 ニコ、イオナ、ケフィ、ベルは部屋を飾り付ける紙細工を朝から仕込んでいた。お花紙で花を作り、折り紙を切って繋げて折り紙チェーンを作る。星型に切った色画用紙や、野菜や花の形に切った色紙で飾り立てるのは、一見無駄なようでいて、全て神々や古霊たちをもてなすために重要な作業だ。
 テンパランス、アルシャイン、エラ、ニナは、屋敷中を徹底的に掃除し、パーティーに備える。
 台所が狭いので、料理担当はガイとミルドレッドが担当することになった。
 実はこのメンバーで一番料理の腕がいいのはガイだ。ガイがメインで腕を振るい、ミルドレッドはその補佐しか出る幕が無い。
 ガイはミルドレッドを車に乗せ、朝から買い出しに出かけた。
「あなたたちには迷惑かけたから、材料費はあたしたちが持つわ」
 ミルドレッドが珍しく殊勝なことを言う。驚いたのはテンパランスだ。
「いいの?この人数よ?大丈夫なの?」
「あたしたちには賞金があるからね。あなたたち、受け取らなかったでしょ」
「なんだか悪いわね」
 こんなところで醜く金の問題でもみ合っても仕方がないと、テンパランスはおとなしく厚意に甘えることにした。
 部屋の掃除が片付いたころ、飾りつけ班も作品が出来上がったようだ。
「テンパランス様、どうやって飾り付けますか?脚立要りますよね?」
「そうね。私とアルシャインが高いところをやるから、あなたたちは見た目のバランスで指示して」
「ニコなら高いところも届きそうだけど……」
 イオナが提案するが、アルシャインは不安を感じた。
「えー……。ニコにできるかなあ?ニコ、この星にセロテープをつけて、そこに貼ってくれるかい?」
 するとまずニコはテープカッターで手を切りながらテープを千切り、テープの場所や力加減を考慮せず力任せに星を壁に叩きつけた。叩きつけられた星はひらりと床に舞う。
「無理だね。難しすぎるね。いいよ、僕たちでやるから」
「ニコー、手、切っちゃったの?気をつけてよーもう」
 イオナは奇跡の小瓶の液体を彼の傷口に塗った。ニコには少し加減が難しい案件だったようだ。
「感覚的にここかな?」
「ちょっとこっち長すぎる?もっと右?」
 アルシャインとテンパランスが折り紙チェーンを天井から張り巡らせる頃、ガイたちの料理が次々と仕上がってきた。
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