第三章 ケフィ対奇跡使いと言霊使い
私は、古霊道発祥の地に生まれた、生まれながらに言霊使いの巫女を宿命づけられた家系の娘なの。だから家には古霊について書かれた書物は豊富にあったし、太古に失われた言語で会話もできるほど、真の言霊について教わって育ったわ。
私たちの隠れ里では、今でも秘密の会話は真の言霊でやり取りする習わしだった。
そして、7歳の時、外の世界の教養を学ぶために村から離れた小学校に入った。私は言霊を使ってみんなを驚かせて遊ぶ、ちょっと嫌な奴だった。外の世界の子は何も知らない、力の使えない馬鹿な奴らだと思っていたの。
そんな私は次第にみんなから敬遠されていったわ。当然ね。陰湿ないじめも起きた。だから、言霊でいじめっ子を殺したわ。14歳の時よ。その時は清々していたし、罪の意識もなかったけど、それを問題視した大人達に言霊の乱用を禁じられたの。
それが原因で、私はミルドレッド様のこの道場に修業のために入門させられたのよ。
でも、私は全然反省していなかった。人を言霊一つで殺せる私は選ばれた人間だと思っていたの。
私より先に、この道場にはエラが入門していた。エラはとにかく勉強熱心だったから、私は何でもエラに教えてあげた。エラと私は最初こそとても親しくしていたのよ。今は吐き気がするけど。
でも、エラはある日、私の教えた言霊で人を殺した。その翌日、嬉々として私に報告してきたわ。「あなたのおかげで憎い人を殺せた。私に汚い手で触れる奴らは皆殺しだ」とね。
エラはそれだけで満足しなかった。「もっと強い言霊を教えろ、もっと、もっと」と、私の力を当てにしてきたわ。
それを見たら、何故だか、すごく嫌な気持ちになった。自分の醜い部分を外側から見た気分というのかしら。私が「これ以上強い言霊なんてないわ」と断ると、エラは食い下がった。「もっといろんな言霊を教えて。貴女さえいれば最強の言霊使いになれる。私たちで天下を取りましょう」と。
エラは自分の欲の為に私を利用しようとして付きまとってきた。エラには幻滅したわ。私はエラのようになりたくないと、力に慢心していた過去の私を恥じた。
そこからよ。エラにはもう何も教えたくない。私が言霊を使うところを見せなければ、エラは私に興味を失くすだろうと思って、言霊を使うのを止めたのは。
やろうと思えばエラやニナを殺すぐらい、わけなかった。でも、エラは私が見たこともない言霊を使うのを期待していた。私に言霊を使わせたがった。私の言霊を、人を不幸にするために利用しようとした。
だから力を使いたくなかったの!でも、こんなことになってしまった。私の本質は醜悪な人殺しの言霊使いのままよ!抱え込んだ業は、憎しみとなって、こんなに大きな力にまで増幅させてしまった!私は力が強すぎるから!私を止めて!できるものなら暴走するこの力を止めてみなさいよ!ケフィ!
ベルはいつの間にか泣いていた。今までのことが走馬灯のように脳裏をよぎり、自己嫌悪と絶望と後悔と憎しみが、ベルの感情を掻き乱した。こんなはずじゃなかったのに。上手くやろうとしたのに。結果的に最悪の事態を招いた。もう自分には破滅しかないと。
ベルはケフィに軽蔑されただろうなと思った。こんな最悪な根性悪の女は、エラやニナ以下だろうと、もう自分を始末するに足る理由はできただろうなと、思った。
「……わかりました。もう、いいかな、ニヒリウム?僕があなたを止めてみせます」
ケフィは、静かにベルに歩み寄った。
「どうするつもり?殴るの?言霊で勝てないから、暴力に訴えるというのね?やってみなさいよ、そうしたらヴィンディクタエがあなたに……!」
私たちの隠れ里では、今でも秘密の会話は真の言霊でやり取りする習わしだった。
そして、7歳の時、外の世界の教養を学ぶために村から離れた小学校に入った。私は言霊を使ってみんなを驚かせて遊ぶ、ちょっと嫌な奴だった。外の世界の子は何も知らない、力の使えない馬鹿な奴らだと思っていたの。
そんな私は次第にみんなから敬遠されていったわ。当然ね。陰湿ないじめも起きた。だから、言霊でいじめっ子を殺したわ。14歳の時よ。その時は清々していたし、罪の意識もなかったけど、それを問題視した大人達に言霊の乱用を禁じられたの。
それが原因で、私はミルドレッド様のこの道場に修業のために入門させられたのよ。
でも、私は全然反省していなかった。人を言霊一つで殺せる私は選ばれた人間だと思っていたの。
私より先に、この道場にはエラが入門していた。エラはとにかく勉強熱心だったから、私は何でもエラに教えてあげた。エラと私は最初こそとても親しくしていたのよ。今は吐き気がするけど。
でも、エラはある日、私の教えた言霊で人を殺した。その翌日、嬉々として私に報告してきたわ。「あなたのおかげで憎い人を殺せた。私に汚い手で触れる奴らは皆殺しだ」とね。
エラはそれだけで満足しなかった。「もっと強い言霊を教えろ、もっと、もっと」と、私の力を当てにしてきたわ。
それを見たら、何故だか、すごく嫌な気持ちになった。自分の醜い部分を外側から見た気分というのかしら。私が「これ以上強い言霊なんてないわ」と断ると、エラは食い下がった。「もっといろんな言霊を教えて。貴女さえいれば最強の言霊使いになれる。私たちで天下を取りましょう」と。
エラは自分の欲の為に私を利用しようとして付きまとってきた。エラには幻滅したわ。私はエラのようになりたくないと、力に慢心していた過去の私を恥じた。
そこからよ。エラにはもう何も教えたくない。私が言霊を使うところを見せなければ、エラは私に興味を失くすだろうと思って、言霊を使うのを止めたのは。
やろうと思えばエラやニナを殺すぐらい、わけなかった。でも、エラは私が見たこともない言霊を使うのを期待していた。私に言霊を使わせたがった。私の言霊を、人を不幸にするために利用しようとした。
だから力を使いたくなかったの!でも、こんなことになってしまった。私の本質は醜悪な人殺しの言霊使いのままよ!抱え込んだ業は、憎しみとなって、こんなに大きな力にまで増幅させてしまった!私は力が強すぎるから!私を止めて!できるものなら暴走するこの力を止めてみなさいよ!ケフィ!
ベルはいつの間にか泣いていた。今までのことが走馬灯のように脳裏をよぎり、自己嫌悪と絶望と後悔と憎しみが、ベルの感情を掻き乱した。こんなはずじゃなかったのに。上手くやろうとしたのに。結果的に最悪の事態を招いた。もう自分には破滅しかないと。
ベルはケフィに軽蔑されただろうなと思った。こんな最悪な根性悪の女は、エラやニナ以下だろうと、もう自分を始末するに足る理由はできただろうなと、思った。
「……わかりました。もう、いいかな、ニヒリウム?僕があなたを止めてみせます」
ケフィは、静かにベルに歩み寄った。
「どうするつもり?殴るの?言霊で勝てないから、暴力に訴えるというのね?やってみなさいよ、そうしたらヴィンディクタエがあなたに……!」