第三章 ケフィ対奇跡使いと言霊使い
ガタガタとテーブルの上の物が震えだす。割れた窓から冷たい風が吹き込んでくる。焦げ臭いにおいが漂ってきて……そして、一斉にすべての物が暴れ始めた。
「やった!封印が破けた!」
封印の効力が薄まり、ドアの鍵が開くようになったのを確認すると、ベルは自室のドアを開け、封印の魔方陣の張り紙を破いた。
途端にまた屋敷中が混沌に襲われる。蛇口から水が噴き出し、燃えやすい物は燃え始め、割れたガラス窓から突風が吹きつけ、家具が宙を舞う。
驚いたのはガイだ。まさかここまでベルの言霊の力が強いとは想像もしなかった。ガイにとってベルは、地味でおとなしくて優しい少女というイメージしかなかったのに。
「ミルドレッド!これか、復讐の言霊って!」
「くっ、いったいどうやって封印を解いたのよ……。ベルがそんなに頭の回る子だとは思わなかったわ。何か言霊を使ったのかしら、私も知らないような言霊を……」
ミルドレッドは人生で初めて誰かに劣等感を痛感させられた。それも、自分の弟子に。こんな屈辱はあるだろうか。師匠である彼女より、ベルのほうが何倍も上手で、その知識量は逆立ちしても叶わない。
「情けをかけたのが仇になりましたね。徹底的に封印すればよかったものを。使ったのは言霊ではありませんよ」
いつの間にか部屋の入口にベルが立っていた。すうっと自分の米神を指差し、
「頭を使ったんです」
と、不敵に微笑んだ。
四人は震え上がった。復讐の古霊ヴィンディクタエの力が解放されたこの状況では言霊が使えないうえに、人知を超えた言霊の知識を持つベルが解き放たれた。ベルが一歩踏み出す。四人は一歩下がる。にじり寄るベル、摺り足で後退する四人。
と、そこに、車のエンジン音が近づいてきた。割れた窓から人の声がする。あれは……。
「ミルドレッド様、ただいま帰りました。またよろしくお願いします!」
『ケフィ!!!!』
ガイはバタバタと駆け出した。ヴィンディクタエの攻撃をかわせるのはガイしかいない。飛び交う家具の間を縫って、玄関から飛び出し、ケフィを出迎える。
「ケフィ!!おかえりー!!丁度良かったぜ!!お前の帰りを待ってたんだ!!」
「どうかしたんですか?」
「どうもこうもねーよ、最悪だ。病み上がりにわり―けど、お前しかこの状況を救えねー!!」
頭に疑問符を浮かべながらケフィとガイが屋敷に踏み入ると、早速花瓶が飛んできて玄関の外に落下し、ガチャンと割れた。
「これは、一体どうしたんです?」
「ベルちゃんが復讐の言霊を唱えたんだ。今までいじめられた分を清算するまで、この言霊は消えないらしい。人の住める環境じゃねえぜ。しかもこの言霊はミルドレッド達三人を追いかけるから、どこにも逃げられねーし、言霊も跳ね返されるらしい」
「お手上げだ」とガイは肩を竦めてみせた。
「ベルさんがやったんですか?あの優しいベルさんが……。でも……、そうか。そんな辛い思いをしてきたんですね」
ケフィは何度も目撃したことがある。ベルがいじめられて傷ついているところを。しかし、これでは屋敷が無くなってしまう。
「大丈夫です、ガイさん。僕ならこの言霊を止められると思います」
「やった!封印が破けた!」
封印の効力が薄まり、ドアの鍵が開くようになったのを確認すると、ベルは自室のドアを開け、封印の魔方陣の張り紙を破いた。
途端にまた屋敷中が混沌に襲われる。蛇口から水が噴き出し、燃えやすい物は燃え始め、割れたガラス窓から突風が吹きつけ、家具が宙を舞う。
驚いたのはガイだ。まさかここまでベルの言霊の力が強いとは想像もしなかった。ガイにとってベルは、地味でおとなしくて優しい少女というイメージしかなかったのに。
「ミルドレッド!これか、復讐の言霊って!」
「くっ、いったいどうやって封印を解いたのよ……。ベルがそんなに頭の回る子だとは思わなかったわ。何か言霊を使ったのかしら、私も知らないような言霊を……」
ミルドレッドは人生で初めて誰かに劣等感を痛感させられた。それも、自分の弟子に。こんな屈辱はあるだろうか。師匠である彼女より、ベルのほうが何倍も上手で、その知識量は逆立ちしても叶わない。
「情けをかけたのが仇になりましたね。徹底的に封印すればよかったものを。使ったのは言霊ではありませんよ」
いつの間にか部屋の入口にベルが立っていた。すうっと自分の米神を指差し、
「頭を使ったんです」
と、不敵に微笑んだ。
四人は震え上がった。復讐の古霊ヴィンディクタエの力が解放されたこの状況では言霊が使えないうえに、人知を超えた言霊の知識を持つベルが解き放たれた。ベルが一歩踏み出す。四人は一歩下がる。にじり寄るベル、摺り足で後退する四人。
と、そこに、車のエンジン音が近づいてきた。割れた窓から人の声がする。あれは……。
「ミルドレッド様、ただいま帰りました。またよろしくお願いします!」
『ケフィ!!!!』
ガイはバタバタと駆け出した。ヴィンディクタエの攻撃をかわせるのはガイしかいない。飛び交う家具の間を縫って、玄関から飛び出し、ケフィを出迎える。
「ケフィ!!おかえりー!!丁度良かったぜ!!お前の帰りを待ってたんだ!!」
「どうかしたんですか?」
「どうもこうもねーよ、最悪だ。病み上がりにわり―けど、お前しかこの状況を救えねー!!」
頭に疑問符を浮かべながらケフィとガイが屋敷に踏み入ると、早速花瓶が飛んできて玄関の外に落下し、ガチャンと割れた。
「これは、一体どうしたんです?」
「ベルちゃんが復讐の言霊を唱えたんだ。今までいじめられた分を清算するまで、この言霊は消えないらしい。人の住める環境じゃねえぜ。しかもこの言霊はミルドレッド達三人を追いかけるから、どこにも逃げられねーし、言霊も跳ね返されるらしい」
「お手上げだ」とガイは肩を竦めてみせた。
「ベルさんがやったんですか?あの優しいベルさんが……。でも……、そうか。そんな辛い思いをしてきたんですね」
ケフィは何度も目撃したことがある。ベルがいじめられて傷ついているところを。しかし、これでは屋敷が無くなってしまう。
「大丈夫です、ガイさん。僕ならこの言霊を止められると思います」