第三章 ケフィ対奇跡使いと言霊使い
「こんな状態じゃトイレにも行けないわ。こんなところ辞めてやろうかと思っていたのに」
閉じ込められたことがわかると、便意をどうするかがまず問題になってくる。食べなくてもしばらくは生きられるが、出もの腫れ物は止められない。
「言霊は使えるのかしら。光の古霊ルクスよ、この部屋の地下に流れる水脈を探し給え」
すると、小さな光の妖精が現れ、部屋の隅を指し示して消えた。
「なるほど。ならばこうするしかないわね。破壊の古霊は確か封印されたと聞いたから……原初の光の源・爆発の古霊ボムブよ、この地下の水脈まで大地を穿て!」
ベルは耳を塞いで爆発に備える。3,2,1とカウントすると、鋭い轟音を立てて部屋の隅の床に穴が開いた。
「しばらくはここで用を足すしかないわね。言霊がすべて封印されたわけでは無くて助かったわ」
その轟音を、部屋の中でベルが暴れていると勘違いした三人は、未だ恐怖に慄いていた。
「荒れてるみたいね、ベル」
「言霊を完全に封印はできなかったんですか?」
「言霊を完全に封じる方法は、喋られなくなることだけよ。すべての古霊を封じることは不可能だわ。奇跡じゃあるまいし」
水浸しのダイニングルームから外へ水を掻き出しながら、三人はベルの様子を伺っていた。大きな爆発が一回起こった後は、特に目立った物音はしないようだが。そこへ、物置から糸鋸を引っ張り出してきたガイが現れた。
「糸鋸でいいのか、ミルドレッド?ベルちゃんの部屋のドアのどこに穴をあけるんだよ」
「床から10cmくらい穴をあけて。お皿とカップが通ればいいわ」
「なんでまたこんなことになってるんだよ」
「それは、かくかくしかじか……」
糸鋸でドアに穴を開けながら、ガイがベルを宥める。ガイはいつもこの女の園の潤滑油だ。ガイの飄々 とした性格が無ければ、嫉妬渦巻く女だらけのこの道場をうまく回すことはできない。その点うまく使えるので、ミルドレッドはガイを重宝していた。
「ベルちゃん……こんなことになるまで、なんで相談してくれなかったんだよ。俺は悲しいぜ。こんなことやりたくねーよ。なあ、ベルちゃん」
「ガイさんには関係ありませんから」
ベルはガイに申し訳ないと思いながら、今更素直になれず、冷たい態度を貫いた。
「関係大有りだぜ。俺はこの道場のマネジメントやってんだからよ。仲良くしてくれよ、ケフィが帰ってきたら泣くぞ」
「……本当に帰ってくるんでしょうか?」
「おうよ、帰ってくるぜ。たまに様子見に行ってるんだ。もうすぐ帰ってくるよ。だいぶ元気になったみたいなんだ」
ベルは黙り込んだ。ケフィにだけはこんな見苦しい有様を見せたくなかった。この道場が更地になるほど吹き飛ばせたら、気持ちよく解散できただろうか。
閉じ込められたことがわかると、便意をどうするかがまず問題になってくる。食べなくてもしばらくは生きられるが、出もの腫れ物は止められない。
「言霊は使えるのかしら。光の古霊ルクスよ、この部屋の地下に流れる水脈を探し給え」
すると、小さな光の妖精が現れ、部屋の隅を指し示して消えた。
「なるほど。ならばこうするしかないわね。破壊の古霊は確か封印されたと聞いたから……原初の光の源・爆発の古霊ボムブよ、この地下の水脈まで大地を穿て!」
ベルは耳を塞いで爆発に備える。3,2,1とカウントすると、鋭い轟音を立てて部屋の隅の床に穴が開いた。
「しばらくはここで用を足すしかないわね。言霊がすべて封印されたわけでは無くて助かったわ」
その轟音を、部屋の中でベルが暴れていると勘違いした三人は、未だ恐怖に慄いていた。
「荒れてるみたいね、ベル」
「言霊を完全に封印はできなかったんですか?」
「言霊を完全に封じる方法は、喋られなくなることだけよ。すべての古霊を封じることは不可能だわ。奇跡じゃあるまいし」
水浸しのダイニングルームから外へ水を掻き出しながら、三人はベルの様子を伺っていた。大きな爆発が一回起こった後は、特に目立った物音はしないようだが。そこへ、物置から糸鋸を引っ張り出してきたガイが現れた。
「糸鋸でいいのか、ミルドレッド?ベルちゃんの部屋のドアのどこに穴をあけるんだよ」
「床から10cmくらい穴をあけて。お皿とカップが通ればいいわ」
「なんでまたこんなことになってるんだよ」
「それは、かくかくしかじか……」
糸鋸でドアに穴を開けながら、ガイがベルを宥める。ガイはいつもこの女の園の潤滑油だ。ガイの
「ベルちゃん……こんなことになるまで、なんで相談してくれなかったんだよ。俺は悲しいぜ。こんなことやりたくねーよ。なあ、ベルちゃん」
「ガイさんには関係ありませんから」
ベルはガイに申し訳ないと思いながら、今更素直になれず、冷たい態度を貫いた。
「関係大有りだぜ。俺はこの道場のマネジメントやってんだからよ。仲良くしてくれよ、ケフィが帰ってきたら泣くぞ」
「……本当に帰ってくるんでしょうか?」
「おうよ、帰ってくるぜ。たまに様子見に行ってるんだ。もうすぐ帰ってくるよ。だいぶ元気になったみたいなんだ」
ベルは黙り込んだ。ケフィにだけはこんな見苦しい有様を見せたくなかった。この道場が更地になるほど吹き飛ばせたら、気持ちよく解散できただろうか。