第三章 ケフィ対奇跡使いと言霊使い

 翌日、ケフィは荷物をまとめ、アルシャインの車に積み込んだ。
「お世話になりました。ありがとうございました」
「達者でね、ケフィ。まあ、近所だからまたどこかで会えると思うけど。気をつけてね」
 イオナがケフィを気遣う。イオナは買い物でミルドレッドの屋敷の近くのスーパーに立ち寄ることが多い。またいつか会えるはずだ。
「はい。ありがとうございます、イオナさん。お世話になりました」
「ケフィ、ミルドレッドさんのところで何か困ったことがあったらいつでもうちを頼ってくれ。力になれるようにいつでも待ってるから」
「ありがとうございます、アルシャインさん」
 アルシャインはケフィと固く握手を交わした。
「ニコ……」
「……」
 ニコは相変わらず複雑な顔をして口をきこうとしない。本当はニコも悪いことをしたと思っているのだ。しかし、去りゆく者に無理に情けをかける必要性が分からない。
「……元気でね」
 ケフィはぎこちなく微笑みかけた。
「あのミルドレッドのことだから、あなたも辛い修行に身を置いていることでしょうけど、頑張ってね。あいつのことが嫌なら早く独立なさい。元気で」
 テンパランスはケフィと握手する手に力を込めた。
「テンパランス様。大丈夫です。結構楽しいですよ。またどこかでお会いしましょう。お世話になりました」
 アルシャインはケフィを助手席に乗せ、車を発進させた。
 ミルドレッドの屋敷に着くと、ケフィは玄関先ですべての荷物を下ろし、その場でアルシャインに別れを告げた。
 アルシャインの車が小さくなって見えなくなると、ケフィは荷物を抱え、ミルドレッドの屋敷のノッカーを叩いた。
「ミルドレッド様、ただいま帰りました。またよろしくお願いします!」
 すると、どかどかと騒がしく足音を響かせ、ガイが玄関から飛び出してきた。
「ケフィ!!おかえりー!!丁度良かったぜ!!お前の帰りを待ってたんだ!!」
「どうかしたんですか?」
「どうもこうもねーよ、最悪だ。病み上がりにわり―けど、お前しかこの状況を救えねー!!」
 頭に疑問符を浮かべながらケフィが屋敷に入ると、そこには壮絶な惨状が広がっていた。
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