第三章 ケフィ対奇跡使いと言霊使い
書斎で書類作成に打ち込んでいたテンパランスは、窓の外から何かが壊れるような奇妙な音を聞いた。金属製の大きなものが、ひしゃげてねじ切れるような、耳障りな音だ。
「何かしらこの音?」
同じく書斎でハンコを押す手伝いをしていたアルシャインは、首をかしげて耳を澄ます。
「何かありましたか?」
「聞こえない?何かが壊れるような音」
すると今度は樹がへし折れるような音と、バサッと枝が落ちるような音がした。
「工事でもしているのかしら?」
そんなことを考えていると、書斎にイオナとケフィがやってきた。
「テンパランス様、ここにニコが来ませんでしたか?」
「ニコ?来ていないけど、何かあったの?」
イオナとケフィが一瞬困ったように顔を見合わせる。やがてケフィが申し訳なさそうに言った。
「ニコが、僕とイオナのことが嫌いだって叫んでから、どこにもいなくなっちゃったんです。部屋にもいないし、道場にもいないし、部屋という部屋、探したんですが……」
「近くの公園にも行っていないようなんです。どうしましょう。あたしのせいだわ」
テンパランスとアルシャインは顔を見合せた。ニコが癇癪を起こしたらえらいことになる。
「イオナ、“私のせい”ってどういうこと?」
イオナは言いにくそうにぼそぼそと、これまでのことを話し出した。
「ニコがケフィのこと苦手そうにしてるから、仲良くしなさいって注意したんです。でも、ニコはそれが嫌だったみたいでますますケフィのことを無視するようになって……。そういうの良くないよって注意したら、今日ついに、“イオナもケフィも嫌いだ”って、走ってどこかに飛び出しちゃったんです」
ケフィもそれに続く。
「そこからはどこを探しても見つからなくて。しばらく一人にしてあげようと思ったんですが、本当にどこにもいないから、ちょっと心配になりまして……」
テンパランスは立ち上がった。
「彼を探しましょう。彼が暴れたら大変なことになるわ。私は少し気になることがあるから、あとから追いかける。みんなは心当たりの所をもう一度探して」
『はい!』
彼らはそれぞれニコがいそうな所へ駆け出した。
「万が一……万が一あそこに行かれてあれを起こされたら、たまったものじゃないわ。ニコにはきつく言い聞かせたけど、どこまで言いつけを守るかどうか……!」
テンパランスは禁断の倉庫に走った。
「何かしらこの音?」
同じく書斎でハンコを押す手伝いをしていたアルシャインは、首をかしげて耳を澄ます。
「何かありましたか?」
「聞こえない?何かが壊れるような音」
すると今度は樹がへし折れるような音と、バサッと枝が落ちるような音がした。
「工事でもしているのかしら?」
そんなことを考えていると、書斎にイオナとケフィがやってきた。
「テンパランス様、ここにニコが来ませんでしたか?」
「ニコ?来ていないけど、何かあったの?」
イオナとケフィが一瞬困ったように顔を見合わせる。やがてケフィが申し訳なさそうに言った。
「ニコが、僕とイオナのことが嫌いだって叫んでから、どこにもいなくなっちゃったんです。部屋にもいないし、道場にもいないし、部屋という部屋、探したんですが……」
「近くの公園にも行っていないようなんです。どうしましょう。あたしのせいだわ」
テンパランスとアルシャインは顔を見合せた。ニコが癇癪を起こしたらえらいことになる。
「イオナ、“私のせい”ってどういうこと?」
イオナは言いにくそうにぼそぼそと、これまでのことを話し出した。
「ニコがケフィのこと苦手そうにしてるから、仲良くしなさいって注意したんです。でも、ニコはそれが嫌だったみたいでますますケフィのことを無視するようになって……。そういうの良くないよって注意したら、今日ついに、“イオナもケフィも嫌いだ”って、走ってどこかに飛び出しちゃったんです」
ケフィもそれに続く。
「そこからはどこを探しても見つからなくて。しばらく一人にしてあげようと思ったんですが、本当にどこにもいないから、ちょっと心配になりまして……」
テンパランスは立ち上がった。
「彼を探しましょう。彼が暴れたら大変なことになるわ。私は少し気になることがあるから、あとから追いかける。みんなは心当たりの所をもう一度探して」
『はい!』
彼らはそれぞれニコがいそうな所へ駆け出した。
「万が一……万が一あそこに行かれてあれを起こされたら、たまったものじゃないわ。ニコにはきつく言い聞かせたけど、どこまで言いつけを守るかどうか……!」
テンパランスは禁断の倉庫に走った。