第二章 奇跡使い対言霊使い

 しかし。
「ごふっ!」
 ケフィは激しく吐血した。
「すごく気持ち悪い……頭がくらくらする……」
 その一言に、テンパランスはハッとした。
「そうだわ、私は命を戻しただけ。きっとケフィの体はイムンドゥスの毒で汚染されてる!アルシャイン、浄化して!」
 アルシャインはその命令に即座に反応した。
「光の神!酒の神!命の神!」
 ケフィの体の傷は徐々にふさがっていったが、顔色は一向に良くならない。
「しばらくかかりそうです。奇跡の小瓶の解毒剤も使ってみましょう」
 アルシャインは腰のポーチからピンク色の奇跡の小瓶を取り出すと、ケフィの口に注いだ。
「ミルドレッド、しばらくこの子、家で預かってもいいかしら?解毒にはしばらくかかりそうだわ」
「ええ、もちろん。彼を頼んだわ、テンパランス!」
 と、そこへジャッジメントが、彼の弟子・ポールを連れて現れた。
「禁を犯したな、テンパランス」
「いいえ、奇跡を起こしただけです」
 テンパランスはジャッジメントを睨み返した。
 アルシャインがテンパランスを庇うように、彼女の肩を抱く。
「裁きの神に裁かれたその傷跡が何よりの証拠だ。これは重大なルール違反だ。どこで覚えた?」
「常識として知っていたまでです」
 反抗的な弟子の態度に苛立ちを覚えたジャッジメントは、審判を呼んだ。
「審判!ここに禁を犯して奇跡使用不可になったものがいるぞ!つまみ出せ!」
 審判はイムンドゥスと怪物の戦いの火の粉をよけながら駆け寄ってきた。
「何をしたんですか?」
「蘇生だ」
 審判はルールブックをペラペラとめくると、違反項目に蘇生がないかチェックした。
「違反には当たりません。いや、むしろそんな奇跡が起こせるならポイントですね」
「な、なにー?!現に奇跡が使えなくなっているのだぞ?!」
「いえ、奇跡で生き返らせたのならポイントです。奇跡ですよね?」
「上の者を呼べ!抗議する!!」
 ジャッジメントはテンパランスを陥れようとした行為が逆にポイントを与えることになってしまったことに憤慨した。審判はめんどくさい人に捕まった……と、主審の元へジャッジメントを連れて行った。
 ポールはテンパランスの肩を抱くアルシャインに目を止めると、「そういうのも違反なんじゃないですか?」と指摘した。
『?』
 テンパランスとアルシャインが無自覚なので、ポールは一言「爆ぜろ!」と吐き捨て、ジャッジメントを追いかけた。
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