第二章 奇跡使い対言霊使い

 本戦会場のスタジアムが開場され、出場者はぞろぞろと場内へと入っていった。
 会場上空にはテレビ局のヘリコプターが飛び、人々はテレビやラジオにかじりついて、世紀の一戦を見守った。
 観客でどよめくスタジアムに入っていくと、テンパランス達はただならぬ空気を感じた。
 何か、黒い空気の歪みのような黒い靄が渦巻いている。
 そこへアナウンスが入った。
「いよいよ本戦開始です!決勝戦のモンスターは、穢れの古霊イムンドゥス!太古の昔に斃れ、古霊となった邪竜です!果たして何名の能力者が生き残るでしょうか!?」
 観客の歓声が一層高まると同時に、スタジアムの広大な敷地いっぱいに漆黒の竜が現れた。
「穢れの古霊、イムンドゥス……!前回の眷族とはクラスが違うわ。これは古霊よ!」
 さすがのテンパランスも恐ろしさに体が硬直した。彼女だけではない。会場中の能力者たちを覆ったのは、絶望の二文字しかなかった。
「古霊を実体化させて召喚するなんて、どんな召喚士がいるのよ!冗談じゃないわ!」
 ミルドレッドは古霊を攻撃できる古霊を必死でリストアップした。しかし、古霊を攻撃したこと自体が無いので、効くかどうかは博打でしかない。
「ベル!あんた解ってんでしょうね!」
 エラがベルを一瞥すると、ベルは
「解ってます!私も戦います!」
と、俯いたまま声を荒げた。
(私がやらないとここにいる全員が死ぬ……。でも、いいの?私、言霊を使っていいの?やるしかない。だけど……!)
 ぶるぶる震えるベルの手を、ケフィがそっと握った。
「あなたは無理しないで。回復の言霊を使ってくれるだけでいいから。やれることをしよう?ね?」
 ベルは驚いてケフィを凝視した。
「ケフィさん……」
 ケフィがもう一度にこっと微笑むと、ベルはパッと手を振り払い、また俯き、強がりを言った。
「言われなくても、私にだってできます。私がやらないと、負けますから」
 再び会場にアナウンスが流れた。
「なお、今回は能力者を直接殺すことは禁止ですが、能力者を妨害することは可能となっております!果たして誰が生き残るでしょうか!?」
 会場にどよめきが起こった。
「妨害できるのか……」
 ジャッジメントはニヤリと口角を上げた。
「それは面白そうですわ」
 クリスチーナは人混みの向こうのミルドレッドに狙いを定めた。
 すると、古霊イムンドゥスは灼熱の炎を吐いた!
 能力者たちは各々防御壁を展開してそれを防ぐ。
 試合開始だ。
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