第二章 奇跡使い対言霊使い

「で、あんたたちは減点1で、そいつらの組は退場で、あんたたちは3位通過だったというわけね」
「まったくいい迷惑だわ。完全にとばっちりよ」
 試合後、会場そばの小料理屋に居合わせたテンパランス達とミルドレッド達は、ライバル同士ということも忘れ同じテーブルを囲んでいた。
「まあ、貴女の日頃の行いが招いたことだから、仕方ないっちゃあ仕方ないのかもね。いい気味だわ」
「屈辱だわ……。あんなことがなければ私たちは1位通過間違いなかったのに」
 ミルドレッド達はさすがの1位通過だった。減点がなければテンパランス達は2位には喰いこめたかも知れなかったのだが。
「災難でしたね。お怪我はありませんか?あ、奇跡使いだからこういう心配はいらないのか……」
「ケフィは人の怪我の心配ばっかりよね!本当に言霊使いなのかしら」
 エラとニナが笑う。ケフィは照れ臭そうに頭を掻いた。
「ベルは相変わらず今回も何もしなかったけどね」
 エラが冷たい目でベルを一瞥する。ベルは誰とも視線を合わせず、黙々と料理を食べることに集中していた。
「ま、まあ、今回もベルさんが出るまでもなく皆さんが強かったってことで、いいじゃないですか。ベルさんは切り札ですよ。ねー、ベルさん?ねえ、ミルドレッド様?」
 ケフィが険悪な空気を和やかにしようとしたが、ベルは相変わらず無視を決め込み、ミルドレッドは急に水を向けられて当惑した。
「え?ああ、そ、そうね……」
 ミルドレッドは一つ咳払いをすると、
「ベル、次は本戦よ。貴女も見てるだけじゃ済まないのだから、今度こそちゃんとやって頂戴ね」
 と、ベルに注意する。ベルは、
「頑張ります……」
 と、蚊の鳴くような声で応えた。
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