第二章 奇跡使い対言霊使い

 と、そこへ、ミルドレッド達が現れた。
「あらあら、たった三人で戦うの?負けちゃうんじゃない?」
 ミルドレッドの挑戦的な声に、テンパランス達が振り返ると、見慣れない長い黒髪の人物がいる。一瞬女性かと思ったが、よく見れば髪の伸びたケフィだ。
「テンパランス様、アルシャインさん、お久しぶりです!」
「ケフィ!久しぶり!元気だったかい?」
 アルシャインはケフィの元気な様子に喜んだ。お互いに簡単に近況を話し合う。
 ミルドレッドは大きな胸をテンパランスに押し付けて挑発してきた。
「ケフィはすごく優秀な子よ~?いい子紹介してくれてありがとうね、感謝だわ。これでウチの優勝は確実ね」
 テンパランスも負けずに肘でミルドレッドの胸を押し返す。
「あら、代わりにうちにはとびっきりの新人が入ったのよ。彼にかかっては楽勝ね」
「ふーん、あの子が新人?」
 テンパランスはニコに、名乗るように促した。
「僕、ニコです。よろしくお願いします」
 どこかぎこちなさを感じる自己紹介に、ミルドレッドは鼻で笑った。
「馬鹿っぽそうな子ねえ。ま、精々足掻きなさいな。私達はは次だから。じゃあね」
 アナウンスによると、第一試合が決したようである。二組目のミルドレッド達の出番だ。
「精々死なないことね。死んでくれたほうがありがたいけど」
 テンパランスも負けじと皮肉で送り出した。
「あの……ミルドレッド様。私は……?」
 ベルがおずおずとミルドレッドに指示を仰ぐと、ミルドレッドは、「貴女も戦いなさい」と命じた。
「え?私、言霊なんか使えませんよ?!」
「全く使えないわけじゃないでしょ?できないんじゃない、やるの。やりなさい」
 ベルは自信なさげに俯いた。そのウジウジした様子にイライラしたエラが、
「やろうと思えばできるんでしょう?!」
 と怒鳴ると、ベルは、「少しは……」と、また自信なさげに呟いた。ニナはベルが言霊を使ったところを見たことがない。
「ベルに何ができるっていうんですか?絶対足手まといですよ?」
 すると、ミルドレッドが、「ニナは黙ってなさい」と厳しく叱った。
「ベル、アディペムンドゥがどんな存在か知ってるでしょう?甘ったれてる場合じゃないのよ、貴女もやらないと私達が死ぬわ。後方支援でいいからやりなさい」
「はい……」
 ベルはまた弱々しく返事した。
5/26ページ
スキ