第二章 奇跡使い対言霊使い

 数日後、ガイは新聞社から手に入れた情報を伝えにミルドレッドの屋敷にやってきた。
「裏が取れたぜ。マジだ。この国は、国家規模でマジで奇跡使いと言霊使いを戦わせるつもりらしい」
「ふふ~ん、いいじゃない。やってやろうじゃないの。あのくそブス、ギッタンギッタンにやっつけてやるわ」
 エラとニナが歓声をあげて飛び上がる一方で、ケフィだけが震えていた。
「やめましょうよこんな危ないこと……」
 その翌日、ガイが裏どり依頼をした新聞社が朝刊でこのニュースを取り上げた。するとたちまち情報は拡散し、他の新聞社、民放のテレビ局が挙ってこのニュースを報じた。
 世論は真っ二つに割れた。信心深い人々は皆奇跡使いか言霊使いの力に与かって生活しているのだ。お世話になっている能力者がこんな茶番で無駄死にしては困る。一方、争い事が好きな者たちは、いい見物だとこのイベントを歓迎した。
 テレビでやっていいことではない。いやいや、いい見物だ、もっとやれ。世間はこのニュースで持ちきりだった。
 さんざん民間でこの情報が沸いた頃にようやく国営放送はこのニュースを大々的に公開した。
 内容はこうだ。

・第一次予選、第二次予選、決勝と、三試合あり、いずれも各事務所対抗で戦う。人数が多い事務所は5~6人ごとのチームを作る。
・いずれの試合も、番組が用意したモンスターと戦い、勝ち残ったチームが次の試合に進む。
・優勝賞金は金塊百個。上位入賞チームは国の研究機関で能力研究に専念することができる。

「国営放送は、あくまでも人の殺し合いじゃなくて、モンスター討伐の見世物にするつもりなんですね」
「どちらにせよ死人が出るのは避けられないわね」
 テンパランス達はテレビの内容にあきれた様子を見せた。
「でも、殺し合いじゃなかっただけでもよかったですね。もしかしたらケフィに会えるかもしれませんよ。ケフィ、元気してるかしら」
「ケフィ?」
 イオナの言葉に、知らない人物の名が出たことに、ニコが反応した。
「ああ、前にこの事務所にいた、元テンパランス様の弟子よ。ニコ、貴方と同い年のはずだわ」
 ニコはいまいちよくわからない様子だったが、テンパランスとアルシャインはケフィを懐かしんだ。
「そうだね、きっとケフィも出るはずだね。元気にしてるかなあ」
「ケフィには会えるでしょうね。あの女なら、こう言いう悪趣味なイベント絶対出るはずだから」
 テンパランスの機嫌が悪くなったことに、アルシャインとイオナは、「しまった!」と顔を見合わせた。
 しかしイオナは、ふと、どうしてテンパランスとミルドレッドの仲が悪いのか、疑問に思った。
「あの、ずっと気になってたんですけど、どうしてテンパランス様とミルドレッドさんがいつも敵対しているのか、訊いてもいいですか?」
 イオナがおずおずとテンパランスの顔色を窺いながら訊くと、テンパランスは、「ああ」と、意外にもあまり気にしていない風で話し出した。
「そういえばまだ誰にも話したことがなかったわね。いいわ、教えてあげる。ちょっと長い話だけど」
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