第二章 奇跡使い対言霊使い
或る日、テンパランスのもとに、「奇跡使い対言霊使いナンバーワン決定戦」の参加募集の封書が届いた。未だ嘗てこんな内容の案内書が届いたことはない。内容を確かめてみると、国営のテレビ局が主催するものだという。頭の悪そうな民放のテレビ局ならやりそうなことだが、国営放送がこんなことをやりだすとは、正気の沙汰とは思えなかった。一体奇跡使いと言霊使いを戦わせてどうするつもりなのだろう。
「どうしようかしら」
テンパランスが考えていると、テンパランスの部屋を掃除していたイオナが話しかけてきた。
「どうかしたんですか?」
「いえね、こんな案内が届いたの。何かの詐欺かしら。それとも本気で…?」
イオナが案内に一通り目を通すと、意外な返答が返ってきた。
「わあ、面白そうじゃないですか!ブルギス国一を決める戦いですか!?すごく楽しそうですね!」
テンパランスは白い目をして呆れた。
「ボクシングやプロレスじゃあるまいし、奇跡と言霊をぶつけ合ったら、間違いなく死人が出るわよ。危険すぎるわ」
「それもそうですよね…言霊も奇跡も、人の命を奪う力はありますからね。怖い……」
国の金を使って人の殺し合いをテレビで見せるなんて、国営放送の上層部は何を考えているのだろう。この世界のテレビとは、モノクロでアナログでローテクな時代であるのだが、いくらモノクロといえど、人が死ぬ瞬間を好んで見たがる視聴者などいるだろうか。
「国営放送は何かアナウンスしているのかしら。テレビ付けてみましょう」
テンパランスとイオナが居間に移動してテレビをつけると、国営放送はクソ真面目なニュースしかやっていなかった。待てど暮らせど例の件はアナウンスされない。
そこへ、奇跡の小瓶作りをしていたアルシャインとニコが休憩しにやってきた。
「テンパランス様。珍しいですね、こんな時間にテレビをご覧になるなんて。何か気になるニュースでもありましたか?」
「ああ、貴方達。いえね、こんな案内が届いて……」
テンパランスは案内状を二人に見せた。
「こ、国営放送の企画なんですかこれ?正気の沙汰とは思えませんね」
「でしょう?そして、賞金がまた馬鹿げてるの」
「賞金、金塊百個!!??」
一方その頃、ミルドレッドの屋敷にも同じ案内状が届いた。ミルドレッドの弟子たちは賞金に飛びついた。
「やりましょうミルドレッド様!!ミルドレッド様は世界最強の言霊使いですし、ケフィという優秀な弟子も加わったウチなら絶対優勝ですよ!!」
ニナが鼻息も荒くミルドレッドに強く推した。エラは口元に不敵な笑みを浮かべた。
「いい力試しになりそうね。ま、楽勝よね」
一方ミルドレッドは冷静だった。
「怪しいわね。詐欺かなんかじゃない?ちょっと国営放送のテレビ付けてみましょうよ」
ミルドレッドもまたテレビをチェックした。しかし、一向にテレビはこの関係の話をしない。
ケフィとベルは言霊で人が死ぬことに恐怖心を抱いている。こんな大会などやったら死人が続出するだろうことは簡単に予想がついた。
「絶対危ないですよ、これ。抗議しましょうよ。こんなことやっちゃいけない」
ケフィがミルドレッドに進言すると、ミルドレッドは電話をかけた。
「ああ、ガイ?今大丈夫?あのね、新聞社に掛け合って裏どりしてほしいの。うん、なんか怪しい案内が届いて。詳しいことはこっち来て。見せるから。うん、お願い」
一体ガイは何者なのだろう。ケフィはてっきりミルドレッドがテレビ局に電話するものと思っていたのに、ガイにそんな電話をしたことで、ガイに対して一層疑念が湧いた。
「もし本当だったらどうするんですか?」
ケフィの問いに、ミルドレッドは、
「本当だったら、やるわよ、勿論。うちなら優勝できるわ」
と、あっけらかんに答えた後、憎々しげな眼付きで窓の外を睨みつけた。
「それに、奇跡使いと遣り合えるなら、あのブスをコテンパンにやっつける口実になるしね」
「どうしようかしら」
テンパランスが考えていると、テンパランスの部屋を掃除していたイオナが話しかけてきた。
「どうかしたんですか?」
「いえね、こんな案内が届いたの。何かの詐欺かしら。それとも本気で…?」
イオナが案内に一通り目を通すと、意外な返答が返ってきた。
「わあ、面白そうじゃないですか!ブルギス国一を決める戦いですか!?すごく楽しそうですね!」
テンパランスは白い目をして呆れた。
「ボクシングやプロレスじゃあるまいし、奇跡と言霊をぶつけ合ったら、間違いなく死人が出るわよ。危険すぎるわ」
「それもそうですよね…言霊も奇跡も、人の命を奪う力はありますからね。怖い……」
国の金を使って人の殺し合いをテレビで見せるなんて、国営放送の上層部は何を考えているのだろう。この世界のテレビとは、モノクロでアナログでローテクな時代であるのだが、いくらモノクロといえど、人が死ぬ瞬間を好んで見たがる視聴者などいるだろうか。
「国営放送は何かアナウンスしているのかしら。テレビ付けてみましょう」
テンパランスとイオナが居間に移動してテレビをつけると、国営放送はクソ真面目なニュースしかやっていなかった。待てど暮らせど例の件はアナウンスされない。
そこへ、奇跡の小瓶作りをしていたアルシャインとニコが休憩しにやってきた。
「テンパランス様。珍しいですね、こんな時間にテレビをご覧になるなんて。何か気になるニュースでもありましたか?」
「ああ、貴方達。いえね、こんな案内が届いて……」
テンパランスは案内状を二人に見せた。
「こ、国営放送の企画なんですかこれ?正気の沙汰とは思えませんね」
「でしょう?そして、賞金がまた馬鹿げてるの」
「賞金、金塊百個!!??」
一方その頃、ミルドレッドの屋敷にも同じ案内状が届いた。ミルドレッドの弟子たちは賞金に飛びついた。
「やりましょうミルドレッド様!!ミルドレッド様は世界最強の言霊使いですし、ケフィという優秀な弟子も加わったウチなら絶対優勝ですよ!!」
ニナが鼻息も荒くミルドレッドに強く推した。エラは口元に不敵な笑みを浮かべた。
「いい力試しになりそうね。ま、楽勝よね」
一方ミルドレッドは冷静だった。
「怪しいわね。詐欺かなんかじゃない?ちょっと国営放送のテレビ付けてみましょうよ」
ミルドレッドもまたテレビをチェックした。しかし、一向にテレビはこの関係の話をしない。
ケフィとベルは言霊で人が死ぬことに恐怖心を抱いている。こんな大会などやったら死人が続出するだろうことは簡単に予想がついた。
「絶対危ないですよ、これ。抗議しましょうよ。こんなことやっちゃいけない」
ケフィがミルドレッドに進言すると、ミルドレッドは電話をかけた。
「ああ、ガイ?今大丈夫?あのね、新聞社に掛け合って裏どりしてほしいの。うん、なんか怪しい案内が届いて。詳しいことはこっち来て。見せるから。うん、お願い」
一体ガイは何者なのだろう。ケフィはてっきりミルドレッドがテレビ局に電話するものと思っていたのに、ガイにそんな電話をしたことで、ガイに対して一層疑念が湧いた。
「もし本当だったらどうするんですか?」
ケフィの問いに、ミルドレッドは、
「本当だったら、やるわよ、勿論。うちなら優勝できるわ」
と、あっけらかんに答えた後、憎々しげな眼付きで窓の外を睨みつけた。
「それに、奇跡使いと遣り合えるなら、あのブスをコテンパンにやっつける口実になるしね」