【番外】奇跡使いと言霊使いの収穫祭
「よーし!ハーモサンダ・ギーが焼きあがったぞ!運んでくれ!そしたら準備完了だ!エラ、飲み物注いで回ってくれ!」
「はーい!ニナ、イオナ、料理運んで!」
「はい!」
さて、収穫祭の準備は整った。銘々(めいめい)が席に着き、両手を組んで瞼を伏せた。祈りの言葉は、宗教を問わずお決まりの言葉を大地にささげられる。
『母なる大地の恵みに感謝を。今年も健やかに生きられたことに感謝を。あたたかな贄に感謝を。いただきます』
そこで、ガイとケフィがクラッカーを鳴らした。
「さあ、食べましょう!」
ミルドレッドがワインの注がれたグラスを掲げて乾杯の音頭を取る。
『乾杯!』
グラスの飲み物に一口付けたら、お待ちかねのご馳走だ。ニコがムギーの唐揚げ【モロワ】を手づかみで食べ始めた。サクサクの衣には炒り豆のクランチが纏われていて、油を吸って香ばしい香りが口中に広がる。嚙めば噛むほど肉汁が溢れ出し、淡白な味ながら癖になる食感の肉だ。ムギーの唐揚げがなぜモロワと呼ばれるようになったかは諸説あり、詳しいことは分かっていない。しかし、家庭料理のオードブルに欠かせない一品であることは間違いない。
「ニコちゃん、フォーク、フォークは?」
エラがニコにフォークを使うよう促すと、ニコは思い出したようにフォークを手に取り、ニコッと笑って見せた。どうも先ほどつまみ食いをしたときの癖が抜けておらず、手で食べていいのだと勘違いしたらしい。おっちょこちょいなところを見せてしまったと、ニコなりに照れたようだ。
「今日のネビラクツバはイオナが作ったのよね。さーて、ガイみたいに美味しくできた?」
ミルドレッドが【ネビラクツバ】という複数の野菜を煮込んだ煮物を口に運ぶと、「あら、よくできてるじゃない!」と歓声を上げた。
「エヘヘ自信無いですー!」などと保険をかけたイオナだったが、予想外の好評を得て、憧れのガイにも「こりゃ美味い!」と褒められたので、まんざらでもなさそうだ。
苦みの強いゴロという根菜もアクが抜け、あまじょっぱい味が染みてとろとろに煮込まれている。フワという根菜などはホクホクに仕上がって甘味と香りを放っているし、タロリという葉物野菜はスープを充分に吸い込んでクタクタに煮込まれている。スープはジギロという小魚で出汁を取り、塩と砂糖と香草で味付けされ、複雑で深みのある味わいに仕上げられている。このスープの味付けがネビラクツバの肝になっているのだ。
「はーい!ニナ、イオナ、料理運んで!」
「はい!」
さて、収穫祭の準備は整った。銘々(めいめい)が席に着き、両手を組んで瞼を伏せた。祈りの言葉は、宗教を問わずお決まりの言葉を大地にささげられる。
『母なる大地の恵みに感謝を。今年も健やかに生きられたことに感謝を。あたたかな贄に感謝を。いただきます』
そこで、ガイとケフィがクラッカーを鳴らした。
「さあ、食べましょう!」
ミルドレッドがワインの注がれたグラスを掲げて乾杯の音頭を取る。
『乾杯!』
グラスの飲み物に一口付けたら、お待ちかねのご馳走だ。ニコがムギーの唐揚げ【モロワ】を手づかみで食べ始めた。サクサクの衣には炒り豆のクランチが纏われていて、油を吸って香ばしい香りが口中に広がる。嚙めば噛むほど肉汁が溢れ出し、淡白な味ながら癖になる食感の肉だ。ムギーの唐揚げがなぜモロワと呼ばれるようになったかは諸説あり、詳しいことは分かっていない。しかし、家庭料理のオードブルに欠かせない一品であることは間違いない。
「ニコちゃん、フォーク、フォークは?」
エラがニコにフォークを使うよう促すと、ニコは思い出したようにフォークを手に取り、ニコッと笑って見せた。どうも先ほどつまみ食いをしたときの癖が抜けておらず、手で食べていいのだと勘違いしたらしい。おっちょこちょいなところを見せてしまったと、ニコなりに照れたようだ。
「今日のネビラクツバはイオナが作ったのよね。さーて、ガイみたいに美味しくできた?」
ミルドレッドが【ネビラクツバ】という複数の野菜を煮込んだ煮物を口に運ぶと、「あら、よくできてるじゃない!」と歓声を上げた。
「エヘヘ自信無いですー!」などと保険をかけたイオナだったが、予想外の好評を得て、憧れのガイにも「こりゃ美味い!」と褒められたので、まんざらでもなさそうだ。
苦みの強いゴロという根菜もアクが抜け、あまじょっぱい味が染みてとろとろに煮込まれている。フワという根菜などはホクホクに仕上がって甘味と香りを放っているし、タロリという葉物野菜はスープを充分に吸い込んでクタクタに煮込まれている。スープはジギロという小魚で出汁を取り、塩と砂糖と香草で味付けされ、複雑で深みのある味わいに仕上げられている。このスープの味付けがネビラクツバの肝になっているのだ。