【番外】奇跡使いと言霊使いの収穫祭
この世界は、神と呼ばれる精霊と、古霊と呼ばれる高次の霊体によって流転している。
そう説いた先人たちは、それぞれ精霊神教、古霊道という宗教を開いた。
精霊神教を開いた者たちは神々の力を借りて「奇跡」と呼ばれる魔法を起こし、病める人々を救い、暗闇を明るく照らした。
古霊道を開いた者たちは、言霊の力に依って古霊の力を引き出し、人々の欲を満たし、争いを制した。
この世界はそんな奇跡と言霊を操る者たちが活躍する世界であった。
奇跡使いも言霊使いも宗教法人の聖職者であるため、肉や酒などは口にすることができない。菜食主義を貫き、己を律し節制して生活する身である。そんな能力者たちが唯一肉や酒などを口にしていい祝日がある。毎年十一月二十九日に訪れる「収穫祭」である。宗教は違えど、大地の恵みは等しく全生命にもたらされる。それを一緒に感謝する特別な日のため、接客業以外は仕事を休み、各々パーティーを催して過ごすのだ。
世界で唯一の女性奇跡使いテンパランスは、今年も言霊使いミルドレッドの事務所の一同を招いて収穫祭を過ごさないかと声をかけた。
ところが、今年はミルドレッド側がテンパランス達を招きたいと返答してきた。曰く、「新しくなった広くて綺麗な事務所にみんなを招きたい」とのことだった。
テンパランスたちは「去年はこちらが招いたから、今年はお世話になろうかしら」と、その招待を受け入れることにした。
奇跡使いテンパランスは、かつて言霊使いとして修業していたころにミルドレッドからひどいいじめを受け、奇跡使いとして覚醒したときにコテンパンに報復した過去がある。その恨みからお互いライバルとして火花を散らしてきた犬猿の仲だったのだが、数々の苦難を共に乗り越え、今ではすっかり親友である。事務所同士も仲が良く、お互い困ったときは支え合って生活している。収穫祭当日、テンパランスは配達用ワゴン車に食材や脚立、飾りつけの細工などを積み込み、四人そろってワゴン車に乗り込んだ。
「今年もガイさんの料理が食べられるなんて楽しみですね」
テンパランスの弟子で夫のアルシャインは、ミルドレッドの夫・ガイの料理を思い出し、生唾を飲み込んだ。
「ガイさんの料理美味しかったですよねー!やっぱり男の人の料理って力があるしセンスがあるから真似できないな」
住み込みメイドのイオナは毎日テンパランスたちの食事や家事の面倒の一切をこなしているが、それでもガイの料理センスには敵わないと痛感してしまう。
「しゅーかくさーい!しゅーかくさーい!」
そう説いた先人たちは、それぞれ精霊神教、古霊道という宗教を開いた。
精霊神教を開いた者たちは神々の力を借りて「奇跡」と呼ばれる魔法を起こし、病める人々を救い、暗闇を明るく照らした。
古霊道を開いた者たちは、言霊の力に依って古霊の力を引き出し、人々の欲を満たし、争いを制した。
この世界はそんな奇跡と言霊を操る者たちが活躍する世界であった。
奇跡使いも言霊使いも宗教法人の聖職者であるため、肉や酒などは口にすることができない。菜食主義を貫き、己を律し節制して生活する身である。そんな能力者たちが唯一肉や酒などを口にしていい祝日がある。毎年十一月二十九日に訪れる「収穫祭」である。宗教は違えど、大地の恵みは等しく全生命にもたらされる。それを一緒に感謝する特別な日のため、接客業以外は仕事を休み、各々パーティーを催して過ごすのだ。
世界で唯一の女性奇跡使いテンパランスは、今年も言霊使いミルドレッドの事務所の一同を招いて収穫祭を過ごさないかと声をかけた。
ところが、今年はミルドレッド側がテンパランス達を招きたいと返答してきた。曰く、「新しくなった広くて綺麗な事務所にみんなを招きたい」とのことだった。
テンパランスたちは「去年はこちらが招いたから、今年はお世話になろうかしら」と、その招待を受け入れることにした。
奇跡使いテンパランスは、かつて言霊使いとして修業していたころにミルドレッドからひどいいじめを受け、奇跡使いとして覚醒したときにコテンパンに報復した過去がある。その恨みからお互いライバルとして火花を散らしてきた犬猿の仲だったのだが、数々の苦難を共に乗り越え、今ではすっかり親友である。事務所同士も仲が良く、お互い困ったときは支え合って生活している。収穫祭当日、テンパランスは配達用ワゴン車に食材や脚立、飾りつけの細工などを積み込み、四人そろってワゴン車に乗り込んだ。
「今年もガイさんの料理が食べられるなんて楽しみですね」
テンパランスの弟子で夫のアルシャインは、ミルドレッドの夫・ガイの料理を思い出し、生唾を飲み込んだ。
「ガイさんの料理美味しかったですよねー!やっぱり男の人の料理って力があるしセンスがあるから真似できないな」
住み込みメイドのイオナは毎日テンパランスたちの食事や家事の面倒の一切をこなしているが、それでもガイの料理センスには敵わないと痛感してしまう。
「しゅーかくさーい!しゅーかくさーい!」