【番外】ベル改造計画

「ベル!!あんたケフィとうまくやってるの?全然ラブラブしてないじゃない!」
 エラがベルの肩に腕を回して絡む。至近距離で睨まれて、ベルは委縮した。
「え……何かしなくちゃいけないですか?」
「あったりまえじゃん!!ラブラブしてるあんたたちから幸せオーラを分けてもらってさ、あたしたちも『あー彼氏欲しーい❤』とか言ってみたいわけよ。全然イチャイチャもしてないじゃない。そんなんじゃ私たちも彼氏欲しいとか思えないわけよ。むしろ『彼氏なんてこんなもんかー』とか、付き合ってもいないうちから諦めた気分になるわけ。もっとラブラブしてよ。あたしたちも幸せな気分になりたいの!」
 早口でまくし立てるエラに、ベルはその真意が汲み取れない。責められているのか、幸せを喜ばれているのか、叱られているのか、迫力とセリフが一致していなくて困惑してしまう。
「え……?つまりどうすればいいんですか?」
『もっとイチャイチャしろ!デートとか行け!』
 エラとニナは声を合わせてベルに命令した。
「デートって……具体的には何を……?」
 ベルの素朴な疑問に、エラとニナは考え込んだ。実はエラもニナも、学生時代に付き合った人が居ないわけではないが、大人の恋愛はどうすればいいかというのは未経験だ。雑誌からの受け売りでアイデアを出すしかない。
「ええー?遊園地に行ったり?公園に行ったり?ショッピングに行ったり?食事に行ったり?かなあ……」
「それって楽しいんですか?何のために遊園地なんて子供の遊び場に行くんですか?」
 ベルはデートの必要性が理解できないようだ。ケフィとそんなところに一緒に行って、楽しいイメージがわかない。
「うっさい!彼氏と一緒に行けばどこだって楽しいのよ!たぶん……」
 そこまで言うと、ニナは突然「あ、ダメだ」と会話を遮った。
「ベル、あんたその服とかメイクだめだ。今すっぴんじゃない?化粧品買いな?服も地味すぎ。もっとお洒落しな?だからケフィがなんもアクションしてこないんだよ」
 エラはまじまじとベルを見た。一重瞼の薄い顔立ち。目は切れ長で小さい。切りっぱなしのおかっぱ頭。切って縫っただけのような、さらっとした地味なワンピース。これでは特別心を動かされないだろう。
「うん。だね。よし、ベル改造計画やるか」
「か、改造?!」
「そうしよう!今度の給料日、トータルコーデしに行こう!」
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