【番外】ベル改造計画

 ミルドレッドの屋敷がリニューアルし、弟子たちがいつもの生活を取り戻した頃。ミルドレッドはガイと結婚し、新しい屋敷で夫婦そろって事務所の運営にいそしんでいた。
 ケフィとベルは恋人同士として付き合い始めたが、今までと変わりばえのしない距離感で日々を過ごしていた。
 それを面白く思わない者たちがいる。エラとニナだ。二人はダイニングルームで茶をすすりながらベルとケフィに対して不満を言い合っていた。
「ベルとケフィさあ、付き合ってんじゃん?」
「うん」
「あの二人いつも通りに過ごしてるよね」
「うん」
「あんなにガチバトルして屋敷吹っ飛ばすくらい戦って付き合い始めたのにさ」
「うん」
 ぶつくさ文句をいうニナに、エラが渋い顔で賛同する。たまりかねてニナは叫んだ。
「あの二人付き合ってる意味ある?!いつもと変わんないじゃん!!」
「わかる!!!!」
 エラとニナはガシッと握手した。
「別にイチャイチャいつも一緒にいるわけでなし、キスしてるところや抱き合ってるところも見たことないし、別々の部屋で寝てるし、規則正しく毎日いつもと変わらず過ごして、全然ラブラブしてないんだけど!!見ててイライラすんだけど!!」
「もっとイチャつけばいいじゃん!もっと幸せオーラちょうだい?!もっとちょうだいよ、そして幸せを分けてよこっちに!!もっと幸せ謳歌しなさいよ!!!もー見てらんないんだけど!!」
 二人の幸せを喜ぶエラとニナは、変わらない生活を続けるケフィとベルにイライラしていた。もっと幸せいっぱいになってほしいと心から願う。仲間内にカップル誕生というウキウキする毎日の中で、「私も彼氏欲しいなー!」と言ったりして、ベルをからかいたくて仕方がないのだが、からかい甲斐がない二人に瑞々しいエネルギーが全く感じられない。
 虐めたいというよりいじりたい。しかしこのままではいじる隙が無いのである。
「なんかベルに言ってやってよ、エラ」
「何て?」
「えー?デートとか行ったら?とか」
「あー、うん」
 そんな話をしていると、ちょうどご本人がダイニングに現れた。ベルは何も言わず冷蔵庫から牛乳を取り出し、食器棚からグラスを取り出した。
「ベル!」
「は、はい?!」
「ちょっと来な」
「はい……」
 ベルは何を言われるのかと思って恐る恐るテーブルに着いた。
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