第五章 奇跡使いと言霊使いの能力開発
「言霊ってこんなに音を歪めても古霊の耳に届くんですね」
古霊道の里出身のベルは、幼い頃から叩きこまれた言霊の常識を覆されて驚いた。しかし考えてみれば、世界各地で使われている言霊は、現地の言葉で問題なく発現するのだ。ミルドレッド達もブルギス国語で言霊を唱えているが、ベルの生まれ故郷では異国語である。古霊の耳に届けば音声が歪もうが異国語だろうが影響しないのかもしれない。
国の担当者はミルドレッドに勇気の言霊をテープに録音してほしいと依頼した。
「勇気の言霊?あんなものどうするの?大学受験の受験生にでも使うの?」
「まあ、そんなところだ」
ミルドレッドは言われるまま勇気の言霊を唱えた。
「勝利の古霊ヴィクトリアよ、恐れを蹴散らし我に勇気を与え給え!」
言霊のリボンは、カセットテープに刻み込まれた。
国の研究者はこのテープを元に軍歌を多重録音し、国営放送で積極的に放送した。地上波に流れた勇気の言霊は人心を乱し、国民は次第に首相の右翼発言を支持するようになった。
街にはブルギス国王を賛美する街頭演説が盛んになり、冷戦状態のスネイルボルグ共和国と再び戦争しようという世論が高まった。
犯罪の検挙件数が倍以上に膨れ上がり、街は犯罪組織が昼夜を問わず跳梁跋扈するようになった。
「これはいかん。これは戦争の前触れじゃ。あの国の担当者、言霊を利用して何か企んでおるな」
アレキサンドライトは宿泊しているホテルでテレビのニュースを食い入るように見つめ、過去の世界大戦の情勢を思い返していた。
翌日、アレキサンドライトは国の担当者に詰め寄った。
「おぬし、言霊のテープを何に使いよった?!」
担当者は白々しく答えた。
「国の発展のために有効活用する研究をしております」
「嘘を吐け!おぬし、この国を戦争させようとしておるじゃろう!」
集まった言霊使い一同は衝撃を受けた。戦争に使われるような言霊は一度も使っていないからだ。
「どういうこと、アレキサンドライト?」
ミルドレッドが問う。
「今までテープに封じた言霊に人心を乱すものがあったはずじゃ。何かは知らんが。冗談じゃないぞい、儂らは戦争に使われるのはご免じゃといったはずじゃ!」
国の担当者はこう煽った。
「言霊に戦争を起こす力があるというなら、人々が戦争を止める言霊もあるというのですか?」
「むう、それは……」
アレキサンドライトは口をつぐんだ。言霊はどちらかといえば、人を攻撃する力だ。止める言霊というのは聞いたことがない。
これにケフィが口を開いた。
「何らかの言霊が使われているなら、虚無の言霊を応用して、発動した言霊を打ち消すことはできませんかね?」
ミルドレッドがケフィのあの言霊の威力を思い出した。
「そうだわ!何らかの言霊が使われたなら、あの言霊をテープに録音して、無効化できるじゃない!」
「そんな力があるのですか?」
国の担当者の表情が変わった。
「やってみましょう。虚無の古霊ニヒリウムよ、発動した言霊の効果を虚無に帰せ!……っと。この言霊を使ってください!」
国の担当者は録音されたテープを持ち帰った。これにて一旦言霊使い達は解散させられることになった。
ケフィの虚無の言霊は国営放送の電波に乗って、国中にあふれていた戦争の気運を鎮めた。犯罪件数は徐々に減ってゆき、国民は夢から覚めたように、平和の声を上げ始めた。
言霊使いの能力研究は一定の結果を残し、機密事項として厳重に保管されることとなった。
古霊道の里出身のベルは、幼い頃から叩きこまれた言霊の常識を覆されて驚いた。しかし考えてみれば、世界各地で使われている言霊は、現地の言葉で問題なく発現するのだ。ミルドレッド達もブルギス国語で言霊を唱えているが、ベルの生まれ故郷では異国語である。古霊の耳に届けば音声が歪もうが異国語だろうが影響しないのかもしれない。
国の担当者はミルドレッドに勇気の言霊をテープに録音してほしいと依頼した。
「勇気の言霊?あんなものどうするの?大学受験の受験生にでも使うの?」
「まあ、そんなところだ」
ミルドレッドは言われるまま勇気の言霊を唱えた。
「勝利の古霊ヴィクトリアよ、恐れを蹴散らし我に勇気を与え給え!」
言霊のリボンは、カセットテープに刻み込まれた。
国の研究者はこのテープを元に軍歌を多重録音し、国営放送で積極的に放送した。地上波に流れた勇気の言霊は人心を乱し、国民は次第に首相の右翼発言を支持するようになった。
街にはブルギス国王を賛美する街頭演説が盛んになり、冷戦状態のスネイルボルグ共和国と再び戦争しようという世論が高まった。
犯罪の検挙件数が倍以上に膨れ上がり、街は犯罪組織が昼夜を問わず跳梁跋扈するようになった。
「これはいかん。これは戦争の前触れじゃ。あの国の担当者、言霊を利用して何か企んでおるな」
アレキサンドライトは宿泊しているホテルでテレビのニュースを食い入るように見つめ、過去の世界大戦の情勢を思い返していた。
翌日、アレキサンドライトは国の担当者に詰め寄った。
「おぬし、言霊のテープを何に使いよった?!」
担当者は白々しく答えた。
「国の発展のために有効活用する研究をしております」
「嘘を吐け!おぬし、この国を戦争させようとしておるじゃろう!」
集まった言霊使い一同は衝撃を受けた。戦争に使われるような言霊は一度も使っていないからだ。
「どういうこと、アレキサンドライト?」
ミルドレッドが問う。
「今までテープに封じた言霊に人心を乱すものがあったはずじゃ。何かは知らんが。冗談じゃないぞい、儂らは戦争に使われるのはご免じゃといったはずじゃ!」
国の担当者はこう煽った。
「言霊に戦争を起こす力があるというなら、人々が戦争を止める言霊もあるというのですか?」
「むう、それは……」
アレキサンドライトは口をつぐんだ。言霊はどちらかといえば、人を攻撃する力だ。止める言霊というのは聞いたことがない。
これにケフィが口を開いた。
「何らかの言霊が使われているなら、虚無の言霊を応用して、発動した言霊を打ち消すことはできませんかね?」
ミルドレッドがケフィのあの言霊の威力を思い出した。
「そうだわ!何らかの言霊が使われたなら、あの言霊をテープに録音して、無効化できるじゃない!」
「そんな力があるのですか?」
国の担当者の表情が変わった。
「やってみましょう。虚無の古霊ニヒリウムよ、発動した言霊の効果を虚無に帰せ!……っと。この言霊を使ってください!」
国の担当者は録音されたテープを持ち帰った。これにて一旦言霊使い達は解散させられることになった。
ケフィの虚無の言霊は国営放送の電波に乗って、国中にあふれていた戦争の気運を鎮めた。犯罪件数は徐々に減ってゆき、国民は夢から覚めたように、平和の声を上げ始めた。
言霊使いの能力研究は一定の結果を残し、機密事項として厳重に保管されることとなった。