アガサ編
アガサは街で身寄りのない貧しい子供を見つけると、楽団に入らないかと声を掛けて歩きました。しかし、すっかり人間不信になってしまった子供たちはなかなか私たちを信用しようとはせず、楽団員はなかなか増えませんでした。しかしアガサの明るさは人の心を動かします。何日か街にとどまって歌と踊りを披露すると、やがて一人、二人と、幼い子供、少年少女が、仲間にしてくれと声を掛けてくるようになりました。
そうして、徐々に仲間が増えてくると、自然と年長の子供は年下の子供の面倒を見てくれるようになり、だんだん楽団らしくなっていきました。
アガサは子供たちに踊りを教え、私は楽器や歌を教え、私たちの旅は楽しくなってきました。
ある日、小さな子供が、アガサのことを「お母さん」と呼び、私のことを「お父さん」と呼ぶようになりました。最初は否定していたのですが、子供たちが冷やかすので、私たちは疑似家族を楽しむようになりました。
そんなある日のことです。アガサは私に話がある、と、物陰に私を呼び出しました。
「どうしたんですか、アガサ?」
「アルヤ……あのね……。あたし、アルヤのことが好き。愛してる」
私は驚きました。まさかと思ったので、私は気づかないふりをしようとしました。
「私もアガサを大切に思ってますよ」
「ほんとに?」
「ええ」
「じゃあ、キスして」
私は額に手を当て、ため息をつきました。
「アガサ、あのですね……」
「アルヤもあたしのこと好きなんでしょう?じゃあキスしよう」
アガサはちょっと押しが強い性格だなとは思っていましたが……。私はアガサをそんな風には見れません。
「私は女ではありませんが、男でもないんです。皆からお父さんと呼ばれていますが、本物のお父さんに、貴女の夫にはなれないんです。私はあなたを愛す資格がありません」
アガサはイヤイヤとわがままを言い、食い下がりました。
「あたしはアルヤの体が目的なんじゃないの、アルヤという人が好きなの。だから、キスしてくれるだけでいいの。抱きしめてくれるだけで、あたしは幸せなの。抱きしめて。それだけで幸せ」
私は一つため息をつくと、複雑な気持ちのまま、アガサを抱きしめました。
「嬉しい……」
アガサは満足そうでしたが、私には、アガサがこんなことぐらいで本当に満足するはずがない、と思いました。いつか、触れ合うだけの愛し方では満足できなくなる日が来る。私には、過去に何度も私の体を求めてきた人に応えられなくて、苦い思いをした過去があります。無理やり貞操を奪われたことも一度や二度ではありません。アガサも、いずれきっと……。
私は、こんな優しいだけの時間が、いつまでも続くとは、到底思えませんでした。アガサのことが、人として好きだから。彼女を傷つけるようなことは、したくありませんでした。
そうして、徐々に仲間が増えてくると、自然と年長の子供は年下の子供の面倒を見てくれるようになり、だんだん楽団らしくなっていきました。
アガサは子供たちに踊りを教え、私は楽器や歌を教え、私たちの旅は楽しくなってきました。
ある日、小さな子供が、アガサのことを「お母さん」と呼び、私のことを「お父さん」と呼ぶようになりました。最初は否定していたのですが、子供たちが冷やかすので、私たちは疑似家族を楽しむようになりました。
そんなある日のことです。アガサは私に話がある、と、物陰に私を呼び出しました。
「どうしたんですか、アガサ?」
「アルヤ……あのね……。あたし、アルヤのことが好き。愛してる」
私は驚きました。まさかと思ったので、私は気づかないふりをしようとしました。
「私もアガサを大切に思ってますよ」
「ほんとに?」
「ええ」
「じゃあ、キスして」
私は額に手を当て、ため息をつきました。
「アガサ、あのですね……」
「アルヤもあたしのこと好きなんでしょう?じゃあキスしよう」
アガサはちょっと押しが強い性格だなとは思っていましたが……。私はアガサをそんな風には見れません。
「私は女ではありませんが、男でもないんです。皆からお父さんと呼ばれていますが、本物のお父さんに、貴女の夫にはなれないんです。私はあなたを愛す資格がありません」
アガサはイヤイヤとわがままを言い、食い下がりました。
「あたしはアルヤの体が目的なんじゃないの、アルヤという人が好きなの。だから、キスしてくれるだけでいいの。抱きしめてくれるだけで、あたしは幸せなの。抱きしめて。それだけで幸せ」
私は一つため息をつくと、複雑な気持ちのまま、アガサを抱きしめました。
「嬉しい……」
アガサは満足そうでしたが、私には、アガサがこんなことぐらいで本当に満足するはずがない、と思いました。いつか、触れ合うだけの愛し方では満足できなくなる日が来る。私には、過去に何度も私の体を求めてきた人に応えられなくて、苦い思いをした過去があります。無理やり貞操を奪われたことも一度や二度ではありません。アガサも、いずれきっと……。
私は、こんな優しいだけの時間が、いつまでも続くとは、到底思えませんでした。アガサのことが、人として好きだから。彼女を傷つけるようなことは、したくありませんでした。