アガサ編
あの事件の後、最初に立ち寄った街の中央広場で、「今日の演目は何にしようね」と話し合っていると、不意にアガサが私の楽器を弾きたがりました。
「ねえねえ、何か簡単な楽器教えてよ」
「このリュートを弾いてみますか?」
しかし、アガサは私のリュートを見るなり、
「弦がいっぱいあって難しそう。何本あるの?10本以上あるでしょう?めんどくさーい」
とわがままを言いました。私は、
「それならフルートを吹いてみますか?」
と、フルートを差し出しました。
「あ、あの綺麗な音するやつだー!やらせてやらせて!」
アガサはちょっと胸を張ってふーっと息を吹き込みました。ふーっと乾いた吐息の音しかしませんでした。
「あれ?これ壊れてるよ」
「ふふふ、壊れてませんよ。コツがいるのです」
私が吹いて見せると、ぽーっと優しい音色が響きました。
「ずるーい!なんで音が鳴るの?!むむむむ・・・・!」
それがアガサの心に火をつけたようで、その日は一日フルートの練習で潰れてしまいました。
「アルヤの詩吟に私の伴奏がつけられたら素敵だよね。あたしが踊るだけじゃなくてさあ」
アガサは色々な夢を語りました。
山の麓の町に立ち寄った日のことです。その町はそこかしこからもうもうと湯気が立ち上っていました。町の人に、「この煙は何なのですか?」と、問いかけると、「これは温泉の湯気さ」との答えが返ってきました。
「この町は火山の麓の街だ。湯を沸かさなくても地面から滾々とお湯が沸いてくるのさ」
恥ずかしながら私は温泉のことは知りませんでした。お風呂はお湯を沸かさなければ入れないもの、と思っていたので、驚きました。
「あたし温泉に何度か入ったことあるよ!すごく熱かったり、ちょうどいい温かさだったり、色々あるんだよ」
町の人が、町から出て少し行った河の側に天然浴場があると教えてくれたので、私たちはそこに行ってみることにしました。
「わ!温かい!ねえアルヤ、この温泉ちょうどいいよ!」
私が指先を差し入れてみると、なるほど、そこの水だけ不思議と温かいのです。
「ねえアルヤ、一緒に温泉入ろうよ!」
アガサがとんでもないことを言うので、私は慌てて断りました。
「い、いけませんアガサ!私はこれでも男なんですよ?!」
「でも今は女の子じゃん」
「女の子じゃありません。男でもないですけど、女の子じゃありません。だから一緒にお風呂に入るのはまずいでしょう?」
アガサは急に私の首を絞めてきました。
「ぐえっ!な、何するんですか!」
「喉仏無いじゃん!女の子!」
「あ、ありますよ少しぐらいは……」
私は急に首を絞められて咳き込みました。
「えー、いいじゃん少しぐらい……」
しかし……女性から全く男として見られていないというのも少し傷つくものですね。私はそんなつもりは無くても少し不機嫌になり、断固拒否してその場を立ち去りました。
「ダメなものはダメです。アガサが終わったら私を呼びに来てください。私、その辺で楽器の練習をしていますから」
「アルヤ……」
アガサは少し寂しそうに私を見送りました。
「ねえねえ、何か簡単な楽器教えてよ」
「このリュートを弾いてみますか?」
しかし、アガサは私のリュートを見るなり、
「弦がいっぱいあって難しそう。何本あるの?10本以上あるでしょう?めんどくさーい」
とわがままを言いました。私は、
「それならフルートを吹いてみますか?」
と、フルートを差し出しました。
「あ、あの綺麗な音するやつだー!やらせてやらせて!」
アガサはちょっと胸を張ってふーっと息を吹き込みました。ふーっと乾いた吐息の音しかしませんでした。
「あれ?これ壊れてるよ」
「ふふふ、壊れてませんよ。コツがいるのです」
私が吹いて見せると、ぽーっと優しい音色が響きました。
「ずるーい!なんで音が鳴るの?!むむむむ・・・・!」
それがアガサの心に火をつけたようで、その日は一日フルートの練習で潰れてしまいました。
「アルヤの詩吟に私の伴奏がつけられたら素敵だよね。あたしが踊るだけじゃなくてさあ」
アガサは色々な夢を語りました。
山の麓の町に立ち寄った日のことです。その町はそこかしこからもうもうと湯気が立ち上っていました。町の人に、「この煙は何なのですか?」と、問いかけると、「これは温泉の湯気さ」との答えが返ってきました。
「この町は火山の麓の街だ。湯を沸かさなくても地面から滾々とお湯が沸いてくるのさ」
恥ずかしながら私は温泉のことは知りませんでした。お風呂はお湯を沸かさなければ入れないもの、と思っていたので、驚きました。
「あたし温泉に何度か入ったことあるよ!すごく熱かったり、ちょうどいい温かさだったり、色々あるんだよ」
町の人が、町から出て少し行った河の側に天然浴場があると教えてくれたので、私たちはそこに行ってみることにしました。
「わ!温かい!ねえアルヤ、この温泉ちょうどいいよ!」
私が指先を差し入れてみると、なるほど、そこの水だけ不思議と温かいのです。
「ねえアルヤ、一緒に温泉入ろうよ!」
アガサがとんでもないことを言うので、私は慌てて断りました。
「い、いけませんアガサ!私はこれでも男なんですよ?!」
「でも今は女の子じゃん」
「女の子じゃありません。男でもないですけど、女の子じゃありません。だから一緒にお風呂に入るのはまずいでしょう?」
アガサは急に私の首を絞めてきました。
「ぐえっ!な、何するんですか!」
「喉仏無いじゃん!女の子!」
「あ、ありますよ少しぐらいは……」
私は急に首を絞められて咳き込みました。
「えー、いいじゃん少しぐらい……」
しかし……女性から全く男として見られていないというのも少し傷つくものですね。私はそんなつもりは無くても少し不機嫌になり、断固拒否してその場を立ち去りました。
「ダメなものはダメです。アガサが終わったら私を呼びに来てください。私、その辺で楽器の練習をしていますから」
「アルヤ……」
アガサは少し寂しそうに私を見送りました。