【番外】NEW YEAR PANIC!

葵の自宅のある寺・山茶花さざんか寺では、年越しの除夜の鐘が突かれた。
葵が年越しそばを食べながらテレビを見ていると、携帯電話に友人たちから年賀メールが届いた。
「わっ、出遅れましたわ!私も送信しなくちゃ!」
こたつに入って背中を丸めて年越しそばを食べていたアナナス翁は、
「また今年も死ねなかったわい」
とつぶやいた。
「大叔父様、そんなこと言ってはダメ。あけましておめでとう大叔父様」
「あけましておめでとう葵ちゃんや。お前さんは優しい子だねえ。どれお年玉をあげようかね。よっこいせ」
葵の両親はそれぞれ寺と神社で力を振るっている。
「たまにはお父様やお母様と一緒に新年を迎えたいわ。でも、私も来年から働くのですわね……」

一方そのころ、漆沢神社と椚谷神社では、沢山の参拝客で溢れかえっていた。
新年のお祓いのため、秋海棠と津々治、木蓮と梯梧も、目の回るような忙しさだ。
勝敗は、木蓮と秋海棠が、集めた信仰心の高さでバトルをすることで決着をつけることになった。
両神社の中間に位置する丘の上で、木蓮と秋海棠が対峙した。
「秋海棠、お手並み拝見といたしましょうか」
「木蓮よ、勝てると思うなよ。私はただ寝ていた貴様とは違う」
木蓮がかまいたちを呼び起こして秋海棠を切り裂くと、秋海棠は稲妻を放って木蓮を灼いた。
木蓮が木の枝を切り裂き秋海棠めがけて木の枝や木の葉を浴びせかける。
秋海棠は作務衣の袖を使って礫をガードすると、両手から火柱を巻き起こし、木蓮めがけて放った。しかし、木蓮はひらりとかわす。実力は五分と五分だ。
次の一撃、先に決めたものが勝負を決する――!その時。
「くだらない戦いはその辺になさい!!」
ひなげしが二人の間に大爆発を起こして勝負に割って入った。
すると、周りにはこの地を管轄している仏の眷属、八百万の神々が集っていた。
「あなたたちのせいで、私たちは信仰心を根こそぎ奪われて迷惑してるんだ!」
「勝負なんかどっちだっていい!もう十分だろう!」
「この地のカルマがありえないぐらい膨らんでいる。このままでは危険だ。もうやめなさい!」
木蓮と秋海棠は、先輩の神々にこっぴどく叱られ、せっかく集めた信仰心は、根こそぎ奪われてしまった。さらに、一年間の神通力の使用を封じられてしまった。
「ああ、私の力が、抜けて、行く……」
「め、めまいが。もう、だめ、だ……」
両者はがくりと膝からくずおれた。
「少しは反省なさい。世界の均衡を乱した罰じゃ」
『申し訳ありません……』
木蓮と秋海棠は、土下座した。

とはいえ、漆沢神社、または椚谷神社に参拝した者達の購入したお守りは、少なからず祈願成就に貢献したそうだ。

END.
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