【番外】あなたが私に光をくれた

その日を境に、真緋瑠は葵とオカルトトークに花を咲かせた。
打てば響くような反応を返す葵は、真緋瑠にとって最高の友人になった。
話はいつの間にかオカルトにとどまらず、伝奇小説、ゴシックカルチャー、耽美、西洋絵画、その他さまざまな「大好きな物」の話に発展した。
何を話しても、葵はそれ以上の知識を披露してくれる。
いつまでも話が尽きない二人は、休日に一緒に遊ぶことになった。

真緋瑠は、たった一着しかない、お金持ち同士の付き合いでしか着ないパーティードレスを着て待ち合わせた。
すると、葵は黒のフルボンネット、フリフリとリボンだらけの黒いジャンパースカート、黒の姫袖のブラウスを着て現れた。
真緋瑠は、本物のお姫様が来たと思った。
「そのお洋服、どちらで買われましたの?」
「333の5階ですわ。ご存じない?ゴシック・アンド・ロリータっていうジャンルのお洋服なんですの」
初めて耳にしたジャンルだ。こんなお姫様のような服が、お店で買えるなんて。
「真緋瑠ちゃんは可愛いから、ピンクのスウィートロリータとか、お似合いだと思いますわ。一緒に333に参りましょう?」
初めて試着室で袖を通してみたロリータ服は、真緋瑠にとってとても残念な仕上がりだった。
やっぱり、私みたいな不細工に、こんな服は似合わない…。
すると、店員と葵が、これもつけて、あれもつけて、と、付属品をいっぱい押し付けてきた。
こんなにゴテゴテ着飾って、派手過ぎではないだろうか。
「わあーーー!!やっぱり真緋瑠ちゃん可愛いですわ!」
「やっぱりお似合いですね!顔がピンク系なので、甘いお洋服のほうがお似合いですよ!」
試着室の鏡に映っていたのは、真緋瑠とは似ても似つかない、絵本のお姫様そのものだった。
「わあ…。これ、私、本当に似合ってますの?」
満面の笑みでうなずく店員たちと、葵。
世界が広がった気がした。

それからというもの、GLP聖典、綺羅などのファッション誌を研究し、毎月のお小遣いからドレスを増やし、小物を増やし、人生初の化粧にチャレンジし、一年生の冬、いつの間にか葵繋がりで親しくなった夕月と、三人でゴシック・ロリータ・パンクお茶会を開催した。真緋瑠のロリータデビューである。
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