【番外】あなたが私に光をくれた

オカルトの話をしてる時だけ、私は人気者になれましたの。

「昨夜の怖いテレビ見たー?」
「見た見た!どうしよう、あれ見るとほんとに呪われるのかな?」
小学校のホームルーム前の僅かな時間。児童たちは昨夜の怖い映像を扱った番組の話で持ち切りだった。
内容はありきたりな、怪談、心霊写真、超常現象の検証番組。
椿 真緋瑠は、幼いころから幽霊や妖精を目撃したことがあり、こんな時に限ってはクラスの頼れる専門家だった。
「真緋瑠ちゃん、昨夜のテレビ、どうだった?ほんとに呪われる?」
クラスメートに囲まれて質問攻めにされる真緋瑠。真緋瑠はちょっとだけ誇らしくなって、自信満々に説明する。
「あれは霊能者がお払いをしてるから大丈夫ですわ。それよりも怖かったのは、運動会の心霊写真。あれは本物だと思う」
「きゃーーーー!!!やばーーーい!!どうしよう本物だって!」
しかし、クラスの人気者になるのは、そんな束の間の時だけ。
夏の心霊ブームが過ぎれば、真緋瑠は気味悪がられて誰からも相手にされなくなった。
「椿さんってキモイよね」
「デブだし不細工だし、霊感があるだけでほかは全然大したことないしね」
「お金持ちだからって上品ぶってるけど、ブスのくせに生意気」
時には派手に虐められたこともある。真緋瑠は人間不信になり、スクールカーストの最下層で、数人の友人と学校にいる間だけの浅い付き合いをしていた。
中学に進学しても、スクールカーストは変動しなかった。冴えない者達のグループに落ち着き、オカルトの話が好きな友達と、ノートに小説を書いて交換したりして過ごしていた。
勉強はいつもトップだった。しかし、学校の方針で成績が良好か不良かは、学校側は一切公表しなかったため、真緋瑠がクラストップの成績を収めても、それに気づくものはいなかった。

自宅に帰れば何不自由ない暮らしが待っている。両親は真緋瑠が欲しがるものは何でも買ってやりたがったが、スクールカーストを身に染みて感じている真緋瑠が、金に物を言わせて高価なものを買ったことがクラスに知れたら、なんと因縁をつけられて虐められることか。
真緋瑠は何も欲しがらなかった。
いつも地味な安物の服を着ていた。なるべく目立たないように。地味で不細工な自分に見合った、地味で不細工な服でいい。
真緋瑠が欲しかったのは、自分に対しての、自信だけだった。
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