持つべきものは友達ですわ

ひなげしが空間から取り出したのは、一振りの魔剣だった。
RPGに出てくる呪いの魔剣さながらの、禍々しいデザインの剣。
「これは正当なる王族しか取り出せない空間に仕舞ってるの。あなたにこれが扱えるなら、是非とも戦ってほしいわ」
それは、100年もの間秋海棠も知らなかったものだ。
「見せて、貰えますか?」
夕月が剣を取ると、それはずしりと重かった。竹刀しか振ったことのない夕月にはいささか重すぎるが、持てないことはない。
ゆっくりと剣を鞘から引き抜くと、魔剣はギラリと輝きを放った。
夕月が立ち上がり、軽く剣を振ってみる。すると、夕月の脳裏に、膨大な情報が流れ込んできた。
(あれ?この風景、どこかで、見たことがある)
赤い髪を結い上げた貴婦人が中世の甲冑を着ている。葵の母によく似た男性がこの剣を振り、突撃してくる。――斬られる!
「うわあ!!!」
夕月は魔剣を取り落として逃げた。魔剣が鈍く輝きを放っている。
「夕月さん、何か、見えたかしら」
輝く魔剣を見下ろしたまま、夕月が呆然と呟いた。
「見たことある映画のワンシーン……みたいな……。あれ?いつ見た映画だっけ?」
ひなげしが魔剣を拾い上げて、夕月に切っ先を向けた。
「なぜかしら。魔剣はあなたを主と認めたわ。遠い昔に、何かあったのかもしれないわね。よろしいでしょう。あなたにこの剣を貸してあげましょう。来るべき時に備えて、鍛錬しておいて」
真緋瑠はワクワクしていた。まさか親友が、魔剣に選ばれるなんて。まるで映画のようなことが、立て続けに起きている。
「すごいですわ、夕月ちゃん!!わ、私には何かマジックアイテムはございませんの?」
「特に何もないな」
秋海棠の即答に、真緋瑠はテーブルに突っ伏した。
「ああ、しかし何もないじゃかわいそうだな。うちの神社で私が作ったお守りをあげよう。君の魂を守ってくれるはずだ」
真緋瑠に手渡されたのは、見たことのある、昔買った覚えのある、神社のお守りだった。あまり有難くない。
「あ…ありがとう…ございます……」
「協力をお願いしても、いいのかね?本当に?」
秋海棠が念を押したが、夕月も真緋瑠も、もう心は決まった。
「魔剣に選ばれたら、引き下がれません」
「私の悪魔祓いを甘く見ないでくださいまし」
「夕月ちゃん…真緋瑠ちゃん…」
葵は、申し訳ないやら、嬉しいやら。また、涙が滲んだ。
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