私の可愛いスノードロップちゃん

「でも、住所も名前も相手に握られてるんでしょ?相手が家に来るんじゃ危ないんじゃないですか?」
「そこだ。だから、葵が眠っている間、我々は奴らと戦わねばならない。悪魔族と、鬼族は、長らく停戦状態だったが、仕方あるまい」
こういうとき頭が回るのが真緋瑠である。
「お待ちになって。先ほど亡命してきたのは召使が数人と仰ってましたわね?多勢に無勢なのではなくて?鬼族の味方はいらっしゃるの?」
「櫻国には鬼族が結構いるのだよ。しかし、敵は人間に紛れて潜伏しているから、どちらの勢力も、潜在的な戦力は分からんな」
実のところ、真緋瑠はうずうずしていた。オカルト研究が趣味で、オカルト研究会に入り浸っては魔術を研究していたのである。悪魔と魔族の戦いなどという映画やゲームのような展開に、真緋瑠は興奮が止められない。
今こそ、研究してきた魔術、退魔術の力を振るうべき時なのではないか?
「私、学校の部活で、魔術を研究しておりますの。霊感もあります。お力になれませんこと?」
夕月は驚いた。何を言い出すのだろうこの子は。
「え?真緋瑠ちゃん、マジで言ってんのそれ?!」
「そうですわ、夕月ちゃんは剣道部で、剣術を会得してますし。きっと戦力になれますわ!ね、夕月ちゃん!」
「え?え?え?えーーーー?!!」
勝手に巻き込まれ、戸惑う夕月。しかし、葵の父・秋海棠は、
「それはならない。危険すぎる。霊感でどうにかなる問題ではない。実体があるのだよ、私たちは」
真緋瑠はしかし食い下がる。
「夕月ちゃんは関東地区優勝経験もある実力者ですし、私も魔術関係の本は一通り研究しましたわ。何より人手は多い方がいいですわ!」
「ほう、関東地区優勝かね。それは頼もしいな。だが、人間の魔術がやつらにどれほど効くか…。魔術は人間には危険すぎるぞ」
「危ないですわ、二人とも。危ないことはしないで」
真緋瑠は夕月の肩をガシッと掴み、三人の魔族に懇願した。
「お願いします。親友の力になりたいんですの」
うーん…と、秋海棠が黙り込んでいると、ひなげしが、「それならば」と、頭上に手を伸ばし、何もない空間から、一振りの剣を取り出した。
「夕月さん、この剣があなたに扱える?」
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