外出禁止令ですわ…

葵のメールを受け取ったのは、葵が休んだ日の昼休みのことだった。
夕月は真緋瑠のクラスに行って、真緋瑠とメールについて話した。
「葵さんは今日も休んでますの?」
「うん。風邪ひいたってことになってるけど、心配だよね」
「そういえば、最近の葵さん、どこかおかしくありませんでした?心ここにあらずというか……何か隠してるような」
「ちょっと具合悪そうだったよね。何か大きな病気を隠してるのかな」
真緋瑠は葵のメールに返信した。
「何か大きな病気でもなさったの?最近の葵さん元気がありませんでしたわ……っと」
すると間もなくメールが返ってきた。
『二人に謝らなくてはならないことと、話さなくてはならない大事なことがありますの。何が起きても、私のことを忘れないで』
まるで今際の際のようなメールだ。真緋瑠は泣き出してしまった。
「やっぱり大きな病気をなさったんですわ!葵さん~~~~!!!葵さんが死んでしまったら、私~~~!!!」
「ま、まだ死ぬとは限らないよ!葵の家に行ったら、何かわかるかもしれないじゃん」

その週の日曜日、二人は学校から二キロほど歩いたところにある、大きな霊園に呼び出された。
呼び出されたところが霊園である。葵はもう死んでしまったのかと、最悪のケースを覚悟して半泣きの二人の前に、漆黒のドレスを着た葵が出迎えた。
「ようこそおいでくださいましたわ。ここが私の家ですの。驚かないでくださいまし…」
『葵~~~~!!!!』
二人は葵に泣きながら駆け寄った。
「泣かないでくださいまし!私は別に死んでませんわ!家が墓地にあるだけですの!落ち着いて!」
墓の間の小道を縫うように進んで、小さな空き地にたどり着くと、葵は草の生えた板をどかした。四角く切り取られた穴の中に、螺旋階段が見える。
「入りにくいでしょうけれど……ここが私の家ですわ。変な家ですから、今までお招きできなかったの。さあ、お入りになって」
夕月と真緋瑠は顔を見合わせ、小首をかしげると、螺旋階段を下りていった。
そこは、墓地の下とは思えないほど豪奢な、映画のセットのような西洋風の宮殿であった。ところどころに櫻国らしい和風のモチーフもちりばめられている。室内だというのに、通路の両端には小川が流れ、初夏だというのに、ひんやりと涼しい。
と、玄関を一段上がったところに、侍従たちがずらりと並んで一礼した。
『お帰りなさいませ、姫。いらっしゃいませお嬢様』
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