外出禁止令ですわ…
「外出禁止?!が、学校は?」
「お父さんとお母さんが、休学届を出しに行く。葵は一歩も城から出てはいけない」
ひなげしが少し一考して、目を伏せながら頷いた。
「休学って、どのくらい?」
「来年の春、もう一回高校二年生をやりなさい」
「いやですわ!」
「仕方がないだろう?!誰のせいでこうなったのだ?!!」
秋海棠は机にこぶしを叩きつけて葵を黙らせた。
「お父さん、あれをやるしかないのよね?」
「うむ。それには一年近く必要になる」
「嫌…嫌よ……」
ひなげしが葵に言い聞かせた。
「葵、あなたはこれから、真名の変更の儀式をしなければならないわ。真名の変更というのは、魂の形を書き変える行為。とても危険なの。失敗すれば、葵、あなたの存在が消えてしまう。だから、じっくり時間をかけて名前を書き変えなくてはならないの。そのためには、一年くらいの時間をかけて、あなたを仮死状態にしなくてはならないのよ」
「もっと早くできないの?一か月とか、夏休み明けまでとか」
秋海棠が、ため息交じりに話した。
「できないことはない。だが、あまり急ぐと、お前がお前でなくなってしまう」
「つまり、どうなってしまうの?」
「最悪、お前の記憶も、性格も何もかもまっさらになって、今までのお前ではいられなくなる。失敗すれば、二度と目を覚まさないことも…。何より、めったにやらない儀式だから、何が起きるか知る者はほとんどいないのだ」
それを聞いて、葵は初めて自分がどんな危険を冒したのか、取り返しのつかない事態になってしまったのかを思い知った。
記憶も、人格も、何もかもが消える。ゴスロリのドレスも好きじゃなくなるかもしれない。勉強したことも忘れてしまう。何より、友達のことを忘れてしまう。大切な思い出が何もかも、消えてしまって、友達も、葵を葵と思わなくなってしまう……。
学校の勉強が遅れるとか、友達と遊べないとか、そんなことは些末なことである。何より仮死状態なのだから、遊ぶどころではない。
自分はなんて愚かな真似をしたのだろう。後悔と、これから待ち受ける試練への不安や恐怖に、葵は、泣いた。泣き喚いた。ひなげしは黙って葵を抱きしめた。
「お父様、お母様、最後に、最後に私の親友をお招きしては駄目?あの子たちには、本当のことを打ち明けて、解っていてほしいの」
葵は携帯電話で夕月と真緋瑠にメールを送った。
「学校をしばらく休学することになりました。その前に、二人に会っておきたいの。私の家に、来てくださる?」
「お父さんとお母さんが、休学届を出しに行く。葵は一歩も城から出てはいけない」
ひなげしが少し一考して、目を伏せながら頷いた。
「休学って、どのくらい?」
「来年の春、もう一回高校二年生をやりなさい」
「いやですわ!」
「仕方がないだろう?!誰のせいでこうなったのだ?!!」
秋海棠は机にこぶしを叩きつけて葵を黙らせた。
「お父さん、あれをやるしかないのよね?」
「うむ。それには一年近く必要になる」
「嫌…嫌よ……」
ひなげしが葵に言い聞かせた。
「葵、あなたはこれから、真名の変更の儀式をしなければならないわ。真名の変更というのは、魂の形を書き変える行為。とても危険なの。失敗すれば、葵、あなたの存在が消えてしまう。だから、じっくり時間をかけて名前を書き変えなくてはならないの。そのためには、一年くらいの時間をかけて、あなたを仮死状態にしなくてはならないのよ」
「もっと早くできないの?一か月とか、夏休み明けまでとか」
秋海棠が、ため息交じりに話した。
「できないことはない。だが、あまり急ぐと、お前がお前でなくなってしまう」
「つまり、どうなってしまうの?」
「最悪、お前の記憶も、性格も何もかもまっさらになって、今までのお前ではいられなくなる。失敗すれば、二度と目を覚まさないことも…。何より、めったにやらない儀式だから、何が起きるか知る者はほとんどいないのだ」
それを聞いて、葵は初めて自分がどんな危険を冒したのか、取り返しのつかない事態になってしまったのかを思い知った。
記憶も、人格も、何もかもが消える。ゴスロリのドレスも好きじゃなくなるかもしれない。勉強したことも忘れてしまう。何より、友達のことを忘れてしまう。大切な思い出が何もかも、消えてしまって、友達も、葵を葵と思わなくなってしまう……。
学校の勉強が遅れるとか、友達と遊べないとか、そんなことは些末なことである。何より仮死状態なのだから、遊ぶどころではない。
自分はなんて愚かな真似をしたのだろう。後悔と、これから待ち受ける試練への不安や恐怖に、葵は、泣いた。泣き喚いた。ひなげしは黙って葵を抱きしめた。
「お父様、お母様、最後に、最後に私の親友をお招きしては駄目?あの子たちには、本当のことを打ち明けて、解っていてほしいの」
葵は携帯電話で夕月と真緋瑠にメールを送った。
「学校をしばらく休学することになりました。その前に、二人に会っておきたいの。私の家に、来てくださる?」