絶体絶命のピンチですの

葵の放った魔力弾は、天井の方へグッと軌道を変えると、ドカンと爆裂して消えた。
みれば、編集長は右手を高々と掲げ、高笑いをしている。
「あはははは!!ただ名前を訊いてるだけなのに、自分から正体を現しちゃったわね!熱くならないでよ、ヒガンバナちゃん!」
「ヒガンバナではありません!」
葵はサシで戦うのは分が悪いと感じ、右手を頭上に掲げて時空の歪みを掴み、下に振り下ろして時空の扉を開いた。
「御出でなさい、ギンモクセイ、ベゴニア、サフラン!有事です!」
すると、葵と反対側に開いた時空の隙間から、三人の下僕たちが躍り出た。執事のギンモクセイと、ボディーガードのベゴニアとサフランだ。
「お呼びですか、姫!」
「何事ですか、姫!」
「姫、お怪我は?!」
それを見て、編集部一同は驚愕した。
先ほどの爆裂にも驚いたが、何もない空間から三人の人間が躍り出たのである。人間たちはマジックを見たような気分になったが、編集長のほうこそたまったものではない。
「時空の歪み?!ちょっと待ってよ!アークデーモン?デーモンロード?あなたそんな大物だったの?!」
葵はすばやく下僕たちに指示した。
「あの眼鏡をかけた女性が悪魔です。私は悪魔に誘拐されましたの」
「御意。姫はお逃げください!」
すると、魔族たちは編集長に魔力弾を次々浴びせかけた。
「ちょっとちょっと待ってちょうだい!」
魔力弾は編集長に触れる前に次々爆裂して、たちまち掻き消えてしまう。編集長は魔力弾に魔力をぶつけて相殺しているのだ。人間たちは突如爆発が巻き起こるスタジオで、事態を飲み込むこともなすすべもなく頭を覆って爆発を避けるのみだ。
「ちっ、仕方ないわね、お前たち!」
編集長もやられっぱなしではいられない。彼女の背後に十数人の、スーツ姿に羽と細い触角を生やした人物たちが現れた。それはその場に、音もなく実体化した。
羽を生やした人物たちは、普段人間たちに紛れて生活している、レッサーデビルたちである。彼らはすっと身構えると、ある者は魔力の盾を張り巡らし、ある者は魔力弾を放った。
葵たちも負けてはいられない。サフランが魔力弾を相殺して爆裂させガードし、ベゴニアとギンモクセイは攻撃魔法を放つ。人数差は大きいが、実力は五分と五分だ。
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