怪しい人とうまい話にご用心
「フフフ…葵ちゃん、ね。連絡先ゲット♪よくやったわ、高根さん。あなた、スナップ撮らせたほうが向いてるかもね」
編集部に届いた葵のプロフィールに目を通し、村主編集長は笑いが止まらなかった。
「春樹、あんた、もう明日からスナップ撮るのやめてテキストだけやって」
「ええーーーー??!!!そんなあ!!!」
スナップ撮影に行くのがちょうどいい気分転換になって、日々の楽しみになっていた柳は、編集長の気まぐれな決定に悲鳴を上げた。しかし、警察に注意を受けた身としては、確かにもう街に出ることは難しいだろう。
「さあ高根さん、連絡先も手に入れたことだし、ミッション2に入ってちょうだい。期待してるわよ」
「は……はい……」
高根は詐欺同然の業務に不安を感じながら、しかし、あこがれ続けてやっと入社できたスグリパブリケーションの仕事を辞めるわけにもゆかず、複雑な気分で葵の携帯電話に電話をかけた。
「倉地葵さんの携帯でよろしいでしょうか?私、ジュブナイルコーポレーションの花蘇芳です……」
数日後、333付近の喫茶店に呼び出された葵は、花蘇芳と名乗る高根を待った。数刻遅れて高根が現れると、簡単な面接をし、コーヒーを一杯飲んだ。
「ここの喫茶店、おいしいわね。葵ちゃんはよくここに来るの?」
「ええ、落ち着いた雰囲気もいいですし、勉強しても追い出されたりしませんし」
「あら?最近の喫茶店って追い出されるの?」
「勉強お断りのところがございますわね」
他愛のない話をしていると、指定された時間が近づいてきた。
「じゃあ、これから早速、スタジオに行きましょう」
「えっ、もう撮影を?」
「編集長がさっそく撮影したいお洋服があるって」
高根はそう微笑むと、葵を連れて喫茶店を後にした。
喫茶店のそばの路肩には車を用意していた。「乗って」葵にそう促すと、葵はおとなしく車に乗り込んだ。何の変哲もない普通の乗用車であったが、葵の第六感は警鐘を鳴らし始めた。
「あのっ、やっぱり私……!」
葵が慌てて降りようとすると、高根はそうはさせまいと車を急発進した。
「止めてくださいまし!私、やっぱり帰ります!」
「怖がらなくていいのよ葵ちゃん、お写真撮るだけだから」
高根は努めて冷静に微笑んで見せたが、こんな強引な手段に出るのは心が痛む。しかしやらねばならない。震える手を隠すようにハンドルを握りしめ、間もなくスグリパブリケーション本社にたどり着いた。一階の別棟がスタジオになっている。
高根に招き入れられておずおずと葵がスタジオに入ると、カメラを構えた柳と、村主編集長が待ち構えていた。
「お帰り、高根さん。ようこそ、倉地葵さん」
その姿を見て、葵にはすぐに分かった。
「あなたは……悪魔……?まさか……!ここは!」
編集部に届いた葵のプロフィールに目を通し、村主編集長は笑いが止まらなかった。
「春樹、あんた、もう明日からスナップ撮るのやめてテキストだけやって」
「ええーーーー??!!!そんなあ!!!」
スナップ撮影に行くのがちょうどいい気分転換になって、日々の楽しみになっていた柳は、編集長の気まぐれな決定に悲鳴を上げた。しかし、警察に注意を受けた身としては、確かにもう街に出ることは難しいだろう。
「さあ高根さん、連絡先も手に入れたことだし、ミッション2に入ってちょうだい。期待してるわよ」
「は……はい……」
高根は詐欺同然の業務に不安を感じながら、しかし、あこがれ続けてやっと入社できたスグリパブリケーションの仕事を辞めるわけにもゆかず、複雑な気分で葵の携帯電話に電話をかけた。
「倉地葵さんの携帯でよろしいでしょうか?私、ジュブナイルコーポレーションの花蘇芳です……」
数日後、333付近の喫茶店に呼び出された葵は、花蘇芳と名乗る高根を待った。数刻遅れて高根が現れると、簡単な面接をし、コーヒーを一杯飲んだ。
「ここの喫茶店、おいしいわね。葵ちゃんはよくここに来るの?」
「ええ、落ち着いた雰囲気もいいですし、勉強しても追い出されたりしませんし」
「あら?最近の喫茶店って追い出されるの?」
「勉強お断りのところがございますわね」
他愛のない話をしていると、指定された時間が近づいてきた。
「じゃあ、これから早速、スタジオに行きましょう」
「えっ、もう撮影を?」
「編集長がさっそく撮影したいお洋服があるって」
高根はそう微笑むと、葵を連れて喫茶店を後にした。
喫茶店のそばの路肩には車を用意していた。「乗って」葵にそう促すと、葵はおとなしく車に乗り込んだ。何の変哲もない普通の乗用車であったが、葵の第六感は警鐘を鳴らし始めた。
「あのっ、やっぱり私……!」
葵が慌てて降りようとすると、高根はそうはさせまいと車を急発進した。
「止めてくださいまし!私、やっぱり帰ります!」
「怖がらなくていいのよ葵ちゃん、お写真撮るだけだから」
高根は努めて冷静に微笑んで見せたが、こんな強引な手段に出るのは心が痛む。しかしやらねばならない。震える手を隠すようにハンドルを握りしめ、間もなくスグリパブリケーション本社にたどり着いた。一階の別棟がスタジオになっている。
高根に招き入れられておずおずと葵がスタジオに入ると、カメラを構えた柳と、村主編集長が待ち構えていた。
「お帰り、高根さん。ようこそ、倉地葵さん」
その姿を見て、葵にはすぐに分かった。
「あなたは……悪魔……?まさか……!ここは!」