怪しい人とうまい話にご用心
「ありがとう。雑誌に採用されるように、編集長にプッシュしておくわね」
数枚スナップを撮影すると、高根は葵に礼を言った。
「うーん……でも、どうしようかな……。あなた、めちゃめちゃかわいいな」
高根は、さも迷っているような口ぶりで、葵の気を引き留めた。
「どうかなさいました?」
「あなた、可愛いから、きっと読モになってくれたら、ブレイクすると思う。赤木実樹子ちゃんとか、水鳥ちゃんとか、じぇりーちゃんみたいな」
「えっ……」
葵は憧れの読者モデルの名前と並べられて、驚いた。綺羅の編集者の言うことだから、信じてしまいそうになる。
「あなただったら上層部に掛け合えば行けると思う。と言っても、私の独断では決められないことだし、あなたがどうしたいか、無理強いすることはできないから、興味があったらその名刺の住所に、履歴書を送ってくれないかな?」
「綺羅の編集部にですか?」
「ううん、今編集部引っ越し作業中だから、新しい住所に送ってほしいの。その名刺が新しい住所」
葵は怪しいと思いながらも、しかし、憧れの綺羅の読者モデルという誘惑に、心が揺れていた。
「考えておいてくれる?」
「わかり……ました……」
すると、高根は333方面へ歩き出し、その場を立ち去った。
葵は喫茶店で参考書とノートを広げながら、何も手につかず、ぼうっと名刺を見つめて、物思いに耽っていた。
「私……実樹子ちゃんみたいになれるの……?」
誰か、家族や友人たちに相談しようという気にはなれなかった。
家族や召使たちに相談したら、絶対に反対されるに決まっているし、魔族とバレたら、危険が及んだら、など、過保護に心配をかけるに決まっている。
だからと言って真緋瑠や夕月に相談したら、彼女たちも綺羅の読者である。妬まれて友情に傷がつくかもしれない。
しかし、綺羅からのスカウトである…。自分から応募してもなかなかなれない読者モデルである。
葵はだれにも相談できずに、鬱々と悩む毎日を送った。
それから一週間、葛藤に揺れた末、ついに、ポストに応募書類を投函してしまったのである。
綺羅編集部御中と記された、スグリパブリケーション宛に。
数枚スナップを撮影すると、高根は葵に礼を言った。
「うーん……でも、どうしようかな……。あなた、めちゃめちゃかわいいな」
高根は、さも迷っているような口ぶりで、葵の気を引き留めた。
「どうかなさいました?」
「あなた、可愛いから、きっと読モになってくれたら、ブレイクすると思う。赤木実樹子ちゃんとか、水鳥ちゃんとか、じぇりーちゃんみたいな」
「えっ……」
葵は憧れの読者モデルの名前と並べられて、驚いた。綺羅の編集者の言うことだから、信じてしまいそうになる。
「あなただったら上層部に掛け合えば行けると思う。と言っても、私の独断では決められないことだし、あなたがどうしたいか、無理強いすることはできないから、興味があったらその名刺の住所に、履歴書を送ってくれないかな?」
「綺羅の編集部にですか?」
「ううん、今編集部引っ越し作業中だから、新しい住所に送ってほしいの。その名刺が新しい住所」
葵は怪しいと思いながらも、しかし、憧れの綺羅の読者モデルという誘惑に、心が揺れていた。
「考えておいてくれる?」
「わかり……ました……」
すると、高根は333方面へ歩き出し、その場を立ち去った。
葵は喫茶店で参考書とノートを広げながら、何も手につかず、ぼうっと名刺を見つめて、物思いに耽っていた。
「私……実樹子ちゃんみたいになれるの……?」
誰か、家族や友人たちに相談しようという気にはなれなかった。
家族や召使たちに相談したら、絶対に反対されるに決まっているし、魔族とバレたら、危険が及んだら、など、過保護に心配をかけるに決まっている。
だからと言って真緋瑠や夕月に相談したら、彼女たちも綺羅の読者である。妬まれて友情に傷がつくかもしれない。
しかし、綺羅からのスカウトである…。自分から応募してもなかなかなれない読者モデルである。
葵はだれにも相談できずに、鬱々と悩む毎日を送った。
それから一週間、葛藤に揺れた末、ついに、ポストに応募書類を投函してしまったのである。
綺羅編集部御中と記された、スグリパブリケーション宛に。